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掌編小説

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140字から始まる超短編小説です
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#童話

石を食べるのは【掌編小説】

石を食べるのは【掌編小説】

「石を食べるサイがいる。群れを作って町に現れ、石や岩を食べていく。そして数日すると、別の町へと移動していく」

そんな話を、子供のころ作ったことがある。
童話のつもりだった。不思議な世界の。

今は思う。あれはどこにも居場所がなかった自分の、振り下ろせなかった拳だったのではないかと。

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こちらはTwitterの 140字小説( https

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春のつくし【掌編小説】

春のつくし【掌編小説】

暖かくなって、つくしは起きました。

まわりはきれいな花がたくさん咲いています。赤、白、黄色。

子供たちが、花を思い思いにつんでいます。花束にしたり、髪にさしたりて遊びます。
でも、花の咲かないつくしは見向きもされません。

つくしは道端に小さくなっていました。

「これ、なあに」
お母さんと歩いていた子供が、足を止めました。

「つくし」
ママは笑顔になりました。
「小さかったころに、よく集め

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