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The Lost Universe 巨大翼竜⑤巨大翼竜型UMA

雄大で超かっこいい翼竜たちが飛ぶ姿を見てみたい! 古生物ファンならば、一度はそんな願いを抱いたことがおありではないでしょうか。
無限なる太古の空を待っていたドラゴンたち。絶滅動物であるからこそ、翼竜は我々人類の関心と憧憬を集めているのかもしれません。それほどまでに魅力的でかっこいい天空の王者が、もし現代に存在していると言われたら、全人類の探究心が激しく燃え上がることでしょう。


翼竜の絶滅と鳥類の大繁栄

空の生存競争の明暗を分けたものとは?

永きに渡って大空を制した翼竜たち。しかし、白亜紀後期(約6600万年前)の環境激変により、彼らは地球上から姿を消しました。
それほどの大災害を誘発したのは、地球上に落下した巨大隕石です。中生代の末期の地層を調査すると、イリジウム(隕石に多く含まれる元素)の濃集や、衝撃によって起こる鉱物の変化が確認されました。隕石が地球に衝突した際、超巨大な津波・世界的な森林火災・急激な気温の低下などが起こり、多くの生命が滅んでいきました。

飛行ポーズを再現したプテラノドンの骨格(豊橋市自然史博物館にて撮影)。約6600万年前の隕石落下による環境激変にさらされて、翼竜たちは地球上から滅んでいったと考えられています。

一部の恐竜(鳥類)が生き残ったのにも関わらず、翼竜は環境激変を乗り越えることができませんでした。翼竜と鳥の運命を決定づけたものは何なのでしょうか。
おそらく、それは多様性と環境適応力の差だと思われます。中生代の後半あたりから鳥類は爆発的な繁栄を見せるようになり、翼竜に対して大きな圧力をかけるようになりました。恐竜の特性を有する鳥たちは地上での活動能力が高く、森林や水辺では翼竜たちよりも優位に立ち回ることができたと考えられます。結果的に、鳥類な小型翼竜の生態的地位をじわじわと奪っていったのです。

プテロダクティルスの化石レプリカ(北九州市立いのちのたび博物館にて撮影)。多様な小型の翼竜たちは大繁栄しましたが、白亜紀末期になると彼らの生態的地位は徐々に鳥類に奪われていきます。
大型の水鳥アオサギ。化石の研究によって、サギの仲間は白亜紀には誕生していたことが判明しており、当時の鳥類は翼竜に負けないほど多様性が高かったと思われます。
イソヒヨドリ。現生の鳥類はほとんどが小型種であり、飛行生物として理にかなっています。多様な小型鳥類の生態的地位に、翼竜たちが返り咲くことはありませんでした。

鳥類との生存競争を避けるためには、別の生態的地位へシフトするしかありません。そうして、翼竜たちは大型化の道を選びました。プテラノドン類やアズダルコ類などの巨大翼竜は大きさでこそ鳥類を圧倒していますが、かなり特殊化していたため、柔軟な環境適応力が失われていたと考えられます。
隕石落下によって生じた大災害。地球規模で気温が急激に低下に加え、苦しい食糧難が起こったはずです。巨大翼竜は激しい環境の変化に対応できず、他の多くの大型生物と運命を共にしたものと思われます。一方、小柄で活動的な鳥たちは、この苦難を命からがら乗り切りました。複数の個体が身を寄せ合い、羽毛で互いを温めることで、彼らは気温の低下にも対応できます。

大型翼竜プテラノドン(ミュージアムパーク茨城県立自然博物館にて撮影)。白亜紀後期において翼竜は大型化・特殊化を進め、その代わりに前時代に比べて多様性は減少していたと思われます。
親鳥を待つツバメのヒナたち。繁殖スタイルや子育て戦略の違いも、翼竜と鳥の明暗を分けた要因の1つなのかもしれません。また、当時の鳥類は小型種が多かったので、環境変化に柔軟に適応できた可能性もあります。

1億6000万年間ーーあるいはそれ以上の長期間に渡って空を支配してきた翼竜の栄華も、ついに終わりの時を迎えます。ただ、世界中で発見される化石が彼らの大繁栄を強く語っています。この地球上には、他の飛行生物では決して及ぶことのない天空のドラゴンが存在していたのです。

新たな天空の支配者の誕生

翼竜の絶滅によって、鳥たちは完全なる空の王者となりました。中生代の時点でも鳥類はかなりの多様性を誇っていましたが、新生代になると輪にかけて爆発的にバリエーションが増し、現生種に通じる種類がたくさん出現しました。
飛行能力というアドバンテージを活かし、鳥類は哺乳類を凌駕する勢いで繁栄していきました。結果的に、現代の地球において、鳥類は最も種数の多い陸上脊椎動物となっています。

始新世のドイツに生きていた小型鳥類メッセロルニス(徳島県立博物館にて撮影)。新生代になると、鳥たちの繁栄はさらに勢いを増していきます。
力強く天空を舞うトビ。猛禽類(ワシやタカなど強力な捕食性の鳥)という最強の空中ハンターが生まれ、鳥類は空では無敵の存在となったのです。

新生代に入ってまもなく、哺乳類も空への進出を始めました。そう、我々のよく知るコウモリの誕生です。
骨格の構造的に、初期のコウモリ類は現生種よりも飛行能力は劣っていたと思われます。ただ、少なくとも始新世前期(約5500万年前)には超音波による探索能力をすでに獲得していたと見られており、彼らは進化の早い段階で昆虫食の空中ハンターとしての生態的地位を確立していたと考えられます。

古代のコウモリ類・イカロニクテリスの複製骨格(ミュージアムパーク茨城県立自然博物館 第89回企画展「恐竜vs哺乳類 -化石から読み解く進化の物語-」にて撮影)。新生代に入って、ついに哺乳類も飛行能力を獲得したのです。

現在、最も空で繁栄している種族は鳥類です。鳥たちは恐竜から受け継いだタフネスと呼吸器系を活かし、世界中の空を力強く舞っています。
地球規模の壮大な旅をやってのける渡り鳥、標高8000 mクラスのエベレストを飛び越えてしまう超高山適応型の種類、はるかな洋上まで飛んで獲物を探す海鳥たち。激動の中生代と新生代を乗り越えてきた彼らは、さらに高度に飛行能力を磨いてきました。総合的な空中での活動能力において、鳥は翼竜を大きく上回っているのかもしれません。

魚獲りのプロであるカツオドリ。鳥たちは水辺・高山・極地などあらゆる環境に適応しており、まさに現代の空の王者です。
群れを成すウミネコたち。鳥類は陸上脊椎動物の中では最も繁栄していると言われており、そのしたたかさで地球史上の環境激変を乗り越えてきたのかもしれません。

空のドラゴンたちの時代は終わり、今は鳥たちの時代です。しかし、現代においても、各地でドラゴン型UMA(未確認生物)の目撃報告が度々あがっています。
太古の空の支配者は、この時代の地球でも健在なのでしょうか。

巨大翼竜型UMA

ローペン ~超凶暴! 人にも獣にも襲いかかる空の悪魔~

翼竜の中には、地上の脊椎動物を捕食していた種類がいたと言われています。もし彼らが生存していれば、現代の動物たちは震え上がることでしょう。実は、翼竜型UMAにも、大きな動物に襲いかかるほど攻撃的なモンスターが存在しています。
その名はローペン。パプアニューギニアに棲むと言われる飛行型未確認生物です。数々の目撃証言を総括すると、その姿はジュラ紀の翼竜ランフォリンクスにそっくりなのです。筆者は翼竜の中ではダントツでランフォリンクスが大好きなので、個人的にとても興味深いUMAです。

ジュラ紀の翼竜ランフォリンクスの復元模型(栃木県立博物館にて撮影)。ローペンは本種にそっくりだと言われています。

1944年にパプアニューギニアのウンボイ島に派遣されていたアメリカ兵の目撃証言によると、ローペンはかなり攻撃的な性質を有しているとのことです。彼が島の小道を歩いていたとき、翼竜そっくりの巨大飛行生物が野生のブタを襲う場面に遭遇しました。兵士が言うには、ローペンの翼開長は9 mほどあったそうです。

超巨大翼竜ケツァルコアトルスは地上の動物を狩っていたと言われていますので、彼らに迫る大きさがあるローペンならば、現代の大型哺乳類を捕食できると思われます(実在していればの話ですが)。
ローペンの特徴として、ワニのような顎、尾は鞭のように細長い尾があげられ、ケツァルコアトルスというよりも前述の通りランフォリンクスに近い姿です。ただ、今のところランフォリンクス類には巨大翼竜は知られていません。ケツァルコアトルスに負けない翼開長10 mクラスのランフォリンクス類も存在していたかもしれませんが、未知の巨大翼竜がローペンの正体なのかどうかは甚だ疑問です。

ランフォリンクスの化石(いわき市石炭・化石館ほるるにて撮影)。姿こそ似ているものの、ローペンはランフォリンクスの数倍の大きさがあり、翼開長は約10 mに達するとも言われています。

ローペンの恐ろしさは、これだけに留まりません。なんと、ローペンは人間までも襲うのです。翼開長10 mもある翼竜型飛行生物が上空から襲来してくるなんていう言い伝えを聞くと、現地の人々がローペンを怖がるのも納得できます。また、彼らは鋭い爪で墓場を荒らして、死者の肉を貪る習性があると言われており、そういった禍々しさがさらにローペンを恐ろしい存在にしています。

オガサワラオオコウモリの剥製(小笠原ビジターセンターにて撮影)。ローペンの正体はオオコウモリ類の誤認だとする説もありますが、オオコウモリ類はもっぱら果実食なので、恐ろしいローペンの性質とはかけ離れています。

荒々しい性質上、ローペンの存在は現地ではかなり恐れられています。正体についてはオオコウモリ類の誤認説が唱えられていますが、現地の人々はオオコウモリをまったく怖がっておらず、それどころかオオコウモリを捕まえて肉料理にしてしまいます。そもそもオオコウモリの翼開長は大きくてもイヌワシと同程度であり、現地の生き物を知り尽くしたニューギニアの方々が超巨大なローペンだと誤認するとは考えづらいです。
実在の真偽は不明ですが、ローペンの正体については「既知の生物の見間違い説」で片づけるには難しいところがあります。筆者の大好きな翼竜ランフォリンクスの仲間が今も生き残っていてほしい……と思うのはメルヘンが過ぎるでしょうか。

牛久プテラノドン ~牛久大仏の上空を舞う正体不明の飛行生物~

翼竜型UMAの出現報告は世界で数多くの例が知られていますが、その中には我が国・日本での目撃もあります。しかも、亜熱帯の森と海を擁する沖縄県でも、超広大な自然林が広がる北海道でもなく、なんと関東の茨城県に翼竜が現れたというのです。それこそが、都市伝説として存在がまことしやかに囁かれている牛久プテラノドンなのです。

2017年。恐ろしく衝撃的な写真が撮影されました。鉄塔が立つ牧歌的な田園地帯の上空を、太古の翼竜プテラノドンが悠々と飛んでいるのです。翼の形といい長大なトサカといい、その姿はまさしく白亜紀後期の大型翼竜プテラノドンです。
このスクープはUMA界隈に大きな影響を与え、「牛久にはプテラノドンが棲んでいる」とサブカルチャー雑誌などで大々的に報じられました。前人未到の大地を擁するアマゾンやコンゴのジャングルならばともかく、日本の茨城県にプテラノドンの生き残りが本当に存在しているのでしょうか。

プテラノドンの全身骨格(大阪市立自然史博物館にて撮影)。彼らの姿が牛久で目撃されたという事実は、超常現象ファンの間に大きな衝撃をもたらしました。

結論から言うと、可能性はものすごく低いと言わざるをえません。飛行生物である翼竜は、活動時間の大半を空中で過ごしていると思われます。よって、もし本当に茨城県に棲んでいるのであれば、もっと頻繁に飛行中の姿が目撃されているはずです。
「しかし、この写真が何よりの証拠だ。頭の大きなトサカはプテラノドンの証だろ」という主張もあるかもしれません。確かに、現代の鳥類において後頭部にプテラノドンほど大きな突起を有する種類はおらず、鳥類の誤認説は否定されてしまいます。ですが、世間には一般層でも購入できるプテラノドンそっくりの飛行マシンがあります。それらの翼竜型の飛行製品こそが、牛久プテラノドンの正体である可能性が浮上してきました。

プテラノドン型の凧。かなりリアルな造形になっており、もしこれが不意に頭上に現れたら「本物のプテラノドンだ!」と驚いてしまうのも無理はありません。また、この凧が飛んでいる姿を電車の窓から一瞬見ただけだと、まさか凧だとは気づかず、必然的に未知の飛行生物だと思うことでしょう。

プテラノドン型のドローン。素晴らしい商品ですが、プテラノドンは恐竜ではありませんので、「翼竜型ドローン」に改名していただきたいと思います。
間近で見ればメカニカルな外観であり、とても生物とは思えません。ただし、本機が上空の彼方まで舞い上がったのならば、そのシルエットが飛行生物らしく見えてしまうときもあるでしょう。何より、遠くからでも頭のトサカの部分が目立つので、状況次第では本機をプテラノドンだと勘違いしてしまう可能性があります。

プテラノドン自体が非常に人気の高い古生物なので、牛久での目撃報告は超常現象の界隈にとって大事件となりました。茨城県のつくば市には学園都市があることから、「つくば市では禁断の実験が行われていて、それが牛久プテラノドンの出現原因になったのではないか」との都市伝説まで生まれています。
わずかな目撃例でも、人々に強烈なインパクトを与える牛久プテラノドン。その存在は疑問視されていますが、できることなら筆者も彼らの飛翔する姿をこの目で見てみたいと思っております。それほどまでに、翼竜の魅力とは大きく強いものなのです。

かつて地球の全ての空を支配した翼竜。生命史上初めて飛行能力を獲得した脊椎動物である彼らは、激動の中生代を力強く翔け抜けました。天空の竜として、彼らはこれからも人類を魅了し続けていくことでしょう。

【前回の記事】

【参考文献】
冨田幸光(2002)『絶滅哺乳類図鑑』丸善
監修:ヘーゼル・リチャードソン, デイビッド・ノーマン 訳:出田興生(2005)『恐竜博物図鑑』新樹社
南部靖幸(2022)『熊本博物館特別展「世界の大翼竜展」展示ガイドブック』熊本市立熊本博物館
東スポWEB(2022)茨城県牛久市でプテラノドン目撃!? ゲイラカイトかタイムトラベラーか https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/155200
ミュージアムパーク茨城県立自然博物館(2024)『第89回企画展「恐竜vs哺乳類 -化石から読み解く進化の物語-」公式ガイドブック』
羽仁礼(2024)翼竜の生き残りか空飛ぶ悪魔か? パプアニューギニアの怪鳥UMA「ローペン」の謎, ムーweb https://web-mu.jp/paranormal/30294/


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