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詩作、過去作品 公開保存用

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#記憶

姪と少尉

川の淵の時計のように揺れるところだけ柔らかく触れ、姪は少尉のことを筆記体で綴ろうとした。荷物を持たない姪の手は倫理の外にあり、液体の郵便を待っている。日光を透過させる耳。ホウセンカの種子を指でこすったことがあっただろうか。毛糸の小鳥が飛び出す仕掛け絵本に触れたとき姪は、犯罪をそっと皮膚でおこなう青年に懸想して、夏野菜を皿のすみに残した。シメスヘンという部首を何度も練習する直後になると思うから、潤沢

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