この国に居続けるのはなぜ
台風が日本列島を飲み込もうとしている。
日本から遠く離れた海上で、台風は形成されているはずなのに。必ずと言っていいほど、日本に向かって突進してくるではないか。もしかすると、台風は日本に恨みがあるのかもしれない。
東京と大阪を結ぶ新幹線は、名古屋止まりになる。飛行機が欠航してしまえば、東日本の人間が名古屋より西へ行くことは不可能。その逆も然り。台風のせいで、日本列島は東西で寸断されてしまうのだろうか。
日本は、災害大国だ。
近年は大雨による災害が増えているけれど、もともとは地震による災害が多い国。それが日本。台風はともかく、頻繁に地震が起こる国は日本以外に存在するのだろうか。少なくとも私は、聞いたことがない。
そんな日本に住む私たちは、災害と背中合わせで生きている。災害が起こっては生活を立て直し、また災害が起こっては生活を元に戻して。幾度となく災害と遭遇しては、乗り越えてきた。
それぞれの国で、その国ならではの苦労があるだろうけれど。数多の地震から力強く立ち上がってきた日本人は、欧米人と負けず劣らずの強さを持っている。私はそう思っているけれど、あなたはどう思うだろうか。
そんな災害大国である日本に居続ける理由って、何だろう。多くの災害にうんざりしている人だって多いだろうに。
日本人がゆえに、日本がいちばん住みやすいから。海外で生活する余裕がないから。今さら海外で生活しようという気になれないから。
人それぞれ、いろんな理由があると思う。災害にうんざりするなら、日本語の「に」の字も出てこないような外国に逃げたっていい。それでも日本から離れない理由が、人々の心に張り付いて離れないのだと思う。
災害はたくさん起こるけれど、日本には多くの魅力で溢れている。外国人観光客だけでなく、私たち日本人をも魅了するような魅力が。
私が真っ先に思い浮かぶ日本の魅力は、人々の優しさだ。
財布やスマホといった貴重品を落としても、持ち主の元へ戻ってくる。困っていたら、誰かしらが助け船を出してくれる。田舎へ行けば、初対面なのに野菜や果物といったものを分けてくれることもある。
こういったことは、他の国でめったにないことだと私は思っている。海外旅行で物をなくすと、自分の手元に戻ってくるなんて稀なことだし。日本に比べて、スリに遭う確率は格段に高いし。
サービス精神が旺盛な人は世界中にありふれているだろうけれど、ほっとするような心の温もりを感じられる優しさは、日本人特有のもの。外国人観光客が日本人の優しさに思わず感動するのも、なんとなく分かるかもしれない。
自然豊かな土地やおもてなし精神、治安の良さ。日本人特有の優しさだけではない数多くの魅力が、日本には溢れている。きっと、私がまだ知らない魅力もたくさんあるはず。
私が生きている間に、どれだけ多くの魅力に気づけるのだろうか。老いた私に死期が迫ってきた時、私は「日本人でよかった」と思えるだろうか。
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