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ちいさな詩ものがたり【VOICEROID紲星あかりの朗読も】

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ちっこい詩のような、ちょっぴりスピが混じった物語のかけらを、佐藤耳オリジナルのスクリプトとして紡いでゆきます。これを読んでくださった方が元気になったり、わずかでも慰められたらいい…
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#朗読

木星と金魚鉢

木星と金魚鉢

金魚鉢にお水を満たし、ふうわり、ゆうらり、鰭をうごかす彼女を放ちます。
紅いおべべを着た彼女は、銀色にひかるお水のなかで、とっても気持ちがいいみたい。
わたしも金魚鉢に飛びこんで、彼女と一緒に泳ぎたい、って思います。

金魚はよくても、人は金魚鉢では暮らせないと、きみはいいます。でも、そうかしら?
ジュピター、すなわち木星は太陽系内でも最大の惑星だけど、あら不思議。水に浮かびます。
主成分はガス

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夜明けの梟(ふくろう)を恋のキューピッドに

夜明けの梟(ふくろう)を恋のキューピッドに

魂を奪われた少年なんだ、と、夜明けにやってきた梟が、わたしに囁きかけます。
瞳は美しいガラスでできている代償に、少年のみる色彩には音楽も、感情すらもない。
でも凍てついた氷の宮殿での生活に、ほかならぬ彼自身が傷ついているのでした。

五歳で亡くなった弟が少年の魂を奪いさったのだ、と告げる梟。
旅立ちの日にさみしすぎるから、兄の希望のすべてを根こそぎ奪って行ったのだ、と。
魂の奪還をしなくては、と

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