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夜明けの梟(ふくろう)を恋のキューピッドに

魂を奪われた少年なんだ、と、夜明けにやってきた梟が、わたしに囁きかけます。
瞳は美しいガラスでできている代償に、少年のみる色彩には音楽も、感情すらもない。
でも凍てついた氷の宮殿での生活に、ほかならぬ彼自身が傷ついているのでした。

五歳で亡くなった弟が少年の魂を奪いさったのだ、と告げる梟。
旅立ちの日にさみしすぎるから、兄の希望のすべてを根こそぎ奪って行ったのだ、と。
魂の奪還をしなくては、と力説する梟に、わたし、困惑してしまいます。

ふと気づいて、わたし、いいます。だけど梟さん、ほんとはあなたが弟さんなのね?
不しあわせな兄を見るに見かねて、弟の良き心が梟となり、どうやら救いを求めにやってきたらしい。
それにしても、どうしてわたしなの? と途方に暮れてしまいます。

なぜなら、あなたは兄に片想いしてるから、と弟はかたり、恥ずかしくなるわたし。
梟を恋のキューピッドに仕立て上げ、少年にとびきりの色と、すてきな音楽をそそぎこみましょう。
いつか彼の魂が、骨と肉と血によって、みずみずしく潤う地球に芽吹き、うるわしい花を咲かせるその日まで。

VOICEROID2の紲星あかりによる朗読です。ぜひ、お聴きになってくださいね。

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