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聴こえてくるその叫ぶような声

会議中に上席から指摘された、四半期も過ぎても予算到達していないことの説明。 自発的でなかったから後回しにしていた、問題解決がなされてないことへの説明。 退職した担当者がずいぶん前からおざなりにしてたことが原因の、トラブルについての説明。 とうとうと語るその声から、コーラスのように聴こえてくるその叫ぶような声。 「わたしは、わるくない!」 うん、わかってるよ。わかってる。 取りつくろわなくていいよ。いまはここが限界とわかってる。 次はこの状況から脱する次の手を考えようよ。

    • 恋愛茶屋 1月2日午後3時

      そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 ―あ!カレーがある!! 店主がドアの方を見ると、ヘルメットをかぶったままのスギタくんが立っていました。 ―。。。本日はお休みですよ。 ―けど、ドアに鍵かかってなかったっすよ。 入り口前の掃き掃除をしてから閉めてなかったことを、店主は思い出しました。 ―これ今日食えるんすか? ―お試しで作ったものです。 ―じゃあ、マスターしか食わないんでしょ?俺にも食わ

      • 恋愛茶屋 7月16日午後11時

        そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 店内の明かりを消して、店主は階段を上って行きました。連休の末日で後片付けや終わっていない事務作業で、ずいぶん遅い時間に終わりました。 階段を上がりきったところには、引き戸があります。その引き戸を開けると、ベランダスペースに出ます。 その向かいに別の入口があります。山の旧道沿いに建つ平屋で、店主はここを住まいにしています。 ドアを開けると左手に台所と食堂

        • 恋愛茶屋 7月6日午後3時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 ―おっ、けっこう中きれいじゃね? 金髪メッシュのひょろりとした男の子は、きれいな黒髪を短くした女の子を伴ってこの店に訪れました。 ドカドカと足音を鳴らして奥のテーブルに向かい、女の子を座らせてからやはり大きな音を立てて椅子に座りました。 ―ここは俺がおごるからさ。何でも好きなもの頼めよ。って、メニューこんだけかよ? 声も大きくてやかましいくらいです。

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          恋愛茶屋 6月25日午後3時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 ―ここのケーキはうまいよな。ごちそうさん。 タニグチさんは近所に住んでいて、自営業です。休憩がてら決まった時間にこの店にくるようになりました。 ―なあ、ここって煙草だめなんだよな? ―店内禁煙です。 ―めんどくせえなあ。どこも禁煙、禁煙で。 そう言ってカウンターの椅子を持って、ドアを開けはなして椅子を置きました。座って吸って、話しもしたいようです。

          恋愛茶屋 6月25日午後3時

          恋愛茶屋 6月13日午後7時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 今日も雨が霧のように降っています。 ―毎日じめじめ、嫌になるなあ。 ―ええ。メニューに困ります。 ―メニューときたか。商売あがったりは同じか。 そう言って笑うのは、近所に住むタニグチさんです。笑いじわが印象的な40代の男のひとです。下戸なこともあり、車でも来やすいので店によく顔を出すようになりました。 ―もう連絡取らなくなって、2週間経ったよ。 ―向

          恋愛茶屋 6月13日午後7時

          恋愛茶屋 6月11日午後1時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 朝から雨降りでしたが、店内は明るい声が響いていました。 ―ねえ知ってる?サイトウくん、地元に戻ってきてたんだって。 ―知らない。いつ戻ってきたの? ―3月。やだ知らなかったの?連絡がいってると思ったのに。 ―やーだ、なんでよ。 ―だって、高校の頃につきあってたじゃない。あの頃のサイトウくん、かっこよかった。 ―悪かったしね。 ―ほら、車乗ってたじゃな

          恋愛茶屋 6月11日午後1時

          恋愛茶屋 6月4日午後3時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 すっかり初夏になった頃、その女のひとは店に訪れました。 山歩きが趣味で、いつも充分な服装と装備です。入口で靴についた土をしっかり落としてから入るので、はじめて訪れた時にしばらく外で屈んでいた姿を見た店主が、具合でもわるいのかとドアを開けに行ったほどでした。 ―今日はパンケーキですか。じゃあパンケーキとアイスティーで。 ―かしこまりました。 ―お店のう

          恋愛茶屋 6月4日午後3時

          恋愛茶屋 4月29日午後8時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 —遅くなった。。。 店主は外に出て、看板の電源を落としました。 連休中のため遅い時間にお客様が多かったこと、さらに遅い時間にやってきたスギタくんが、カレーがあったことに大喜びして長居をしていたからでした。 —すみません!充電させてもらえませんか。 そのまま国道を通り過ぎるかに見えた車が止まり、ラフな格好の男のひとがドアを開けて出てきました。 —すみませ

          恋愛茶屋 4月29日午後8時

          恋愛茶屋 3月19日午前7時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 まだ肌寒い早朝、その店の店主が夜のうちに入り口に吹き込んだ枯葉を、ほうきで履いていました。時折あくびをしながら、次にすることが待っているふうでもなく、のんびりと手を動かしています。 この店には「茶屋」と言う看板がかけられています。国道沿いに立っていて、国道の向かいは渓谷です。この店の場所からは下りられませんが、釣りやカヌーをたのしめます。 店の裏手は山

          恋愛茶屋 3月19日午前7時

          恋愛茶屋 3月9日午後4時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。 国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 ーあーあ、春休みだってのに、彼女もいないし、友達は実家戻ってるし、することねーし。。。 ー勉強されたらどうですか。 ーバイト先はまたこっから山奥だし、もっと街中にすりゃーよかったし。。。 スギタは今日もカウンターで、店主にぼやき続けていた。 ーマスター、ここって何か食うものないんですかあ。 ー今日はアップルパイです。 ーこの間と同じじゃないですかあ~そ

          恋愛茶屋 3月9日午後4時

          窓から見える遠くの

          幼稚園生の頃、寝室の窓から見える家々のすき間に、中野駅前の電電公社ビルのアンテナが赤く点滅しているのが見えた。いつも「あの明かりのあるところには、何があるんだろう」と憧れをもって眺めていた。 そういった憧れはいまでも変わらない。見るたびに想像する。何とも言えず胸が高鳴る。平らに続く住宅街の向こうに、ぽつんと見える高層マンションや区役所、清掃工場の煙突。歩道橋から見える、高層ビルの群れ。 あの建物の下では、どんな人が歩き、どんな家が建ち、どんな明かりが灯っているのだろう。

          窓から見える遠くの

          恋愛茶屋 3月2日午後3時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 ー店長さん、スイーツはこれしかないんですか。 ーそのオレンジパイだけになります。あと今日はカレーがあります。 ーカレーじゃ違います。。。オレンジパイのセットください。 カウンターに座る看護師のカヤノは大きくため息をついた。 ー「好きな子ができたから別れてほしい」って、もう冗談じゃないですよ。やっとの休みで久しぶりに会えたのに別れ話ですよ。聞きたくない別れ

          恋愛茶屋 3月2日午後3時

          恋愛茶屋 3月1日午後4時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 ーあーあ、ほんとにやんなっちゃうよなあ~ カウンターに座る大学生のスギタは、また大きくため息をついた。 ーマスター、ここってビールとかないんすか? ーあったとしてもお出ししませんよ。スクーターでいらしたじゃないですか。 ー酒呑めるところに行けばよかった。。。 そう言いながらも、大きめにカットされたアップルパイをワシワシと食べている。 ー「ほかに好

          恋愛茶屋 3月1日午後4時

          恋愛茶屋 2月21日午前11時

          そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。 ―わたしね、頭の後ろに目が付いているんですよ。 寒そうにやって来て、注文したジャスミン茶を飲んで落ち着いた様子になったその彼女は、ほがらかな声でそう話し始めた。 ―ちょうど頭の真後ろにあります。髪の毛をかぶせているとまずわからないですけどね。満員電車とか間近で見られるところでは閉じてますけど、普段は開けててもわかりませんね。いまも開けてます。 ―わた

          恋愛茶屋 2月21日午前11時

          最小幸福論

          清潔で乾いた服を着ていて、 足を延ばして眠れる、暖かくて安全な場所があって、 明日の分の食べものを持っていれば。 朝起きたらやることがあって、 それは給金があるないは関係なく、自分とみんなの生活を成り立たせるためのこと。 掃除や片付けがそのなかにあれば最高。 紙とペンがあったら言うことない。 鉛筆と消しゴムでもいい、書くものと書かれるもの。 記録して、感想を書いて、編集もして、創作だってできる。 そして自分が大切にしてきたひと達が、どこかで生きていてくれる。 自分は、い

          最小幸福論