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恋愛茶屋 3月19日午前7時

そのお店は、山深く水のきれいな川のそば、けれど東京都内にある。
国道沿いにあるけれど、行くにはどこからも遠い場所にある。

まだ肌寒い早朝、その店の店主が夜のうちに入り口に吹き込んだ枯葉を、ほうきで履いていました。時折あくびをしながら、次にすることが待っているふうでもなく、のんびりと手を動かしています。

この店には「茶屋」と言う看板がかけられています。国道沿いに立っていて、国道の向かいは渓谷です。この店の場所からは下りられませんが、釣りやカヌーをたのしめます。
店の裏手は山です。店の脇に階段が付いていて、その階段を上ると山道にたどり着きます。この旧道ではハイキングがたのしめます。
この店は旧道と新道に挟まれた場所に立っています。その旧道沿いからも入れるよう、上の階にも玄関があります。

山深い場所ではありますが、ここから国道を下りていくとベッドタウンが広がっています。反対に上っていくと、登山やキャンプ、アウトドアがたのしめる観光地があります。また大きな病院があったり大学や専門学校があったり、山の上にはダム、さらに山の奥には心霊スポットと言われるような場所まであり、生活拠点もあるようで人の出入りは事欠かないみたいです。

ここは以前も喫茶店でしたが、店じまいをしてからしばらく空家の状態でした。ある日この店主がやってきて、お店もリニューアルして営業を始めました。喫茶店ではありますが、茶類はあってもコーヒーはない、フードメニューも少ない、訪れるお客様みんなにこれでやっていけるのかと思われています。

近頃店主が困っているのは、ここに来ると恋や愛の問題が解決するといううわさが立ったことです。相談を目的に来るお客様が増えて、無下にする訳にもいかずに答えているようです。

ちり取りに集めた枯葉や枝を外のごみ箱に入れて、また店主はお店に入っていきました。
今日はどんなお客様が来るのでしょうか。

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