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無味無臭の愛を探すこと



〝あなたじゃなければ愛したりしなかった〟
そんな一言を求めて愛を探す。
本当は知ってた。〝それは愛じゃない〟。
じゃあ何が愛なの?って、あなたは全身で問いかけてくる。
理想の愛の形。解らないのに求めたのはどうして?

生温かい。
微温湯のような関係は望んでなかった。
冷めたら温め直すことができる愛。
欲したのはいつだって、少し熱いくらいの愛。
涙が出そうだ。
そんな愛を求めて身体を重ねて、勝手に失望する。自己愛にも程があるじゃないか。

望んだものと違うって、勝手に返却された愛をどう処理したらいいの。
いつだって大切なのは自分だって人は言う。
じゃあ〝そうじゃない〟自分はどうしたらいいの。
普通を求めているのは私じゃない、いつだって他人のどこかの誰か。
愛のかたちに正解があるなら、じゃあそれを示してよって、何千回叫んでも誰も見せてくれない。
じゃあ〝普通〟って何?
あなたからの愛なら歪だって構わなかった。
その愛が全て私に宛てたものであるのなら。

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「人が好きならこの仕事はしない方がいい」。
私はそう言葉を続けた。経験則と客観的なレビュー。
いつだって誰かの裏を求める。綺麗に作られた表面より、残酷なほど無惨な裏面。
誰かの裏側。隠す傷と治らない痕。
不格好に巻かれた、隠すためだけの包帯を解いた傷だらけの心。もう何年見てきただろう。
忘れられない恐怖や不安。大人の身体と幼い心。
病名なら幾らでも付けられる。付けられた病名で安心できるならそれでいい。でもそこから動かなくなってしまうのは〝安心〟じゃない。
それを知ってどうするか。それがいつだって目の前の壁を厚くしていた。

身体でも心でも〝病気だから〟なんだと言うのだろう。
異常性が無い人間が〝善〟であるなら、私は一生そんな人間にはなれない。なりたくない。
私が知りたいのは〝病気だから〟なんていう、傷つかない為の理由なんかじゃない。
〝病気だからどうしたいのか〟。ただそれだけ。
なにをゴールとするかを自分で決めて、異常性すら受け入れた上で〝どう生きていたいのか〟。
なにが欲しいの。どうなりたいの。
求めなければ扉は見つからない。求め続けなければ扉は開かない。
もう人間は何百年も前にそのことを身に染みて知っているはずなのに。あなただってわかっているはずなのに。
どうしてそこで止まってしまうの。

私たちが人間でなかった頃の話を繰り返しても、得られるのは浪漫だけ。
真相究明はあなたの役目じゃない。
解っているから繰り返す。永遠に解けない謎は、私たちの避難場所だ。
だから私は繰り返す。
自分が存在する未来すら無い、遠い昔の話。私たちは何であったのだろうか、と。
その謎を考えている間が、とてもとても気持ちがいいから。まさに微温湯だ。

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〝愛とはなんですか〟。
正解も不正解も持ち合わせていない、誰も私も人も動物も学者すら。
それでも問い続けてよ。そんな所で満足しないで、異常だからって諦めないでよ。
考えることは止めてもいいよ。でも探し続けてよ。あなたの手になにが残ってるって言うの。
〝普通の人〟になんてならないで。自分の中の、ほんの少しの〝狂気〟を嫌わないで。
ロビン・ウィリアムズも言ってるわ。
〝あなたは少し狂っている。それを失ってはいけない〟と。

タイムラインに嫉妬しないで。
本当のことは少しだけ見せてあとは大事に隠しておくのが人間だよ。
可愛いとはお世辞にも言えない、とても微妙なスタンプで口を鼻を目を隠して、本当の貌(かお)は見せない。
ぼやけたフィルターを愛しているの。何故かって、それは戯れだから。
戯れに付き合ってくれる、一瞬の愛が欲しいの。例えそれが嘘であっても。
〝誰でもいいから〟って言うくせに、〝たった一人だけ〟求めてる。
そんな人が、私は狂おしいほど大好きなんだよ。

求められることで受け入れられることで得られる幸福感。
不特定多数の〝すきなひと〟。愛してくれない〝どこかのだれか〟。
一時の幸福感と満足感を繰り返し繰り返し求めてしまえば、どろどろとした劣情と嫌悪で心が麻痺していく。
作り上げなければいけない幸せとは違う、一時の麻薬。中毒症状と自己嫌悪の狭間。
蝕まれていくのは、いつだって求め続けていた幸せへの希望。心の奥の深いところ、柔らかいところが腐食していく。
愛を求めていたはずなのに、気がつけば何処にも辿り着けない荒原の真ん中。落ちた雫は誰にも理解して貰えないまま、冷えた風にかき消される。
手の中のぬくもりさえ、冷えて溶けて消えていった。

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無味無臭の水の味。飲み干したら次を求めて乾いていく。幸せはどこ。
だからその手を離せない。これは優しさではないよ、私の手には少量の毒がある。
その毒が口に合うなら、あなたの毒は私が全部飲んであげる。私が全部噛み砕いてあげる。
だから際限なく求め続けて。
表面上の快楽より、麻痺させる薬より、なによりあなたを導いてあげたい。
遠い遠い、幸せの道筋。北極星を辿って帰ろうか。
辿り着いたら一緒に美味しい紅茶を飲もう。
暖かな部屋の中で。たった2人、絡み合って。


ロビン・ウィリアムズも言ってるわ。

〝僕は愛を信じてる。素晴らしいものだよ。とくに三度目に恋に落ちた瞬間なんてたまらない。最高だよ〟って。






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