#83 「ひきよせの法則」と TEDxRikkyoU
「ひきよせの法則」を聞いたことがある人も多いと思う。疑似科学ではあるが、様々なところに昔から登場してきた。僕が知っている限りで一番古いのは、ルーシー・モード・モンゴメリが『赤毛のアン』シリーズの第3巻として著し、1915年に出版された、『アンの愛情』でのエピソードだ。
アンと友人2人は「パティの家」と呼ばれる素晴らしい一軒家を借りるが、それはアンの「ひきよせ」によるものだった。ひきよせる瞬間を、アンは「親指がピリリとうずく」(村岡花子訳)と表現している。
大学院合格
2020年9月25日、社会人として受験した立教大学大学院の合格発表があった。47歳で文系から理系に移り、小学5年生の計算ドリルからやり直した僕にとって、大きな意味のある発表だった。結果は合格、努力が報われた。
そして、実は忘れていたのだが、その4日後の9月29日に、パソコンのメモアプリでちょっとした「将来の目標」を書きつけた。三つあり、一つ目が「ひきよせ」の内容だった。二つ目は今読むと意味不明、三つ目は好きな曲を駅のストリートピアノで弾きたいという内容だった。
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人生で一番緊張した日
「人生で一番緊張した日」をはっきりと覚えている。それは、2021年12月18日、立教大学のトークイベントに登壇した日だ。NHKの番組「スーパープレゼンテーション」で取り上げられた TED をご存知の人も多いと思うが、立教大学でも学生団体 TEDxRikkyoU が活動している。
TEDx(テデックス)は TED 本部から正式にライセンスを受け、世界各地の都市や大学が独立して運営している団体で、現在世界に 3,000以上の TEDx 組織がある。2021年、僕は幸運にもスピーカーの一人に選んでもらい、「AI と未来の教育」について話した。
約15分の英語トークを完成させるのに、約3ヶ月半の準備をした。本番用のジャケットとシャツは、銀座のテーラーでオーダーした。髪は長年お世話になっていた美容院の店長に、当日朝仕上げてもらった。準備が進めば進むほど、緊張感が高まっていくのが分かった。
本番では、一箇所原稿を忘れて止まってしまったものの、アドリブで次の部分へ移ってどうにか切り抜け、無事拍手の中トークを終えた。録画を見ると、飛ばしてしまったのは二文だけで、不自然な箇所は TEDxRikkyoU の学生たちがうまく編集してくれたので、YouTube に残っている僕のトークには失敗はない(笑)トークを公開してしまおう!
無事本番を終えた翌日は、幕張にあるアウトレットへ買い物に行った。電車の中では久しぶりに、好きな音楽を聞いた。それまでの3ヶ月半、会社員としてフルタイムで働いていた僕は、全てのスキマ時間を TEDx トークのために使っていたので、自由時間にトーク原稿を見ないのは不思議な感覚だった。
大学の先生方には内緒だったが、実は本番直前のリハーサルには、大学院の授業をすっ飛ばして参加した。50歳を手前にして「無我夢中になった」経験は、何物にも変え難い財産となった。
そんな TEDxRikkyoU は今年も開催される。様々な分野のスピーカーが練りに練ったトークを披露し、聴衆参加型のコーナーもある。無料だが、参加登録が必要なので、興味がある方は是非、下のサイトから申し込んで欲しい。
未来のチケット
TEDx トークを作った3ヶ月半、3人の学生がサポートについてくれた。オンラインで、大学で、アイディアを交換した。ケンカしそうになったことも数度あったが、親子ほど年齢が離れた相手とケンカできるのも、すばらしい経験だった。
そんな宝物な3人の学生を、本番後しばらくして自宅に招き、妻と僕で料理をしてホームパーティーを開いた。用意したワイン2本では足りないほど話をした。
別れ際、3人に「ヘンな物」をプレゼントした。それは、「未来のチケット」。中身を公開してしまおう!トークが英語だったので、これも英語で書いた。というか、内容的に日本語で書くのが恥ずかしかった……
TEDx に登壇した人なら誰でも夢に見ること、それはいつか、TED 本家のステージに立つことだ。実際には TEDx と TED は、富士塚と富士山くらいの差がある。どんなにトークが上手くても、それが本物の経験と「広める価値のあるアイディア」を伴わなければ登壇は叶わない。逆説的だが、TED 登壇は、「チャレンジして叶う夢」ではない。
TED登壇のずっと先にある大きな目的に向かって成果を上げながら進む人が、進む過程で得たかけがえのない気付きや体験を聴衆と共有するのが TED だ。それは自分の夢にぴったりだ、と思ったので、いつかあのステージ前の客席に、あの3人を呼ぶと決めた。「呼びたい」ではなく「呼ぶ」だ。必ず叶う。
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僕がひきよせたもの
大学院に合格した4日後のメモに書かれていた、僕の「将来の目標」のスクリーンショットをお見せする。全部叶うと信じるが、二番目の意味は不明だ😅
TED と TEDx の違いはあったものの、これを書いた翌年冬に、僕は本当に TEDx に出た。ひきよせたとしか思えない一致だった。このメモを見つけたのは、TEDx 本番が終わったずっと後のことだった。
今日もお読みくださって、ありがとうございました☀️
(2023年11月8日)