筋トレのコツ44:運動前に行う「ウォーミングアップ」の重要性
この記事では、筋トレを効率化していく上で重要になる『運動前のウォーミングアップ』について簡単にまとめています。前回の『筋トレのコツ43:「オーバートレーニング」を防ぐには?』の続きになっているので、そちらも合わせてご覧下さい。
尚、事細かな「ウォーミングアップの方法」については省略しています。あくまで「ウォーミングアップをする上で重要な考え方」の紹介だけに留めます。
ウォーミングアップは単なる準備運動ではない
人間の体には「運動時に適した体の状態」と「休養時に適した体の状態」というものがあります。特にこれから激しい運動を行うという場合、「休養時に適した状態」のままでは、自分の持っているパフォーマンスを発揮する事ができません。
つまり「何故、運動前にウォーミングアップをしなければならないのか?」というと、これは体を「運動を行うために適した状態に変化させるため」なのです。特に重要になるのは、運動に関わる組織や細胞への「血流を促す事」です。
筋肉を収縮させると熱が作られます。また収縮を繰り返す事で、筋肉はポンプのように機能し、温めた血液を全身へ循環させる事ができます。それをウォーミングアップとして運動前に行っておく事で、運動に関わる各組織・各細胞が活動しやすい状態になり、パフォーマンスの向上に繋がります。
またそうして血流を促す事によっては、運動時に生成される様々な物質(乳酸、活性酸素、アンモニアなど)を、その場所に滞らせないようにする事ができます。これによってウォーミングアップでは、それらの蓄積が原因で起こる様々な怪我も、最低限予防する事ができます。
一方、そうして血流が促されても、咄嗟に行う動作で、体が言うことを聞くとは限りません。そこでウォーミングアップでは少し強めに電気信号を送っておき、「あらかじめ脳や筋肉を、ある程度刺激」しておきます。それによって本番の運動でも体をコントロールできるようになり、突発的に起こる様々な怪我も、最低限予防する事ができます。
更に、その日によって、技術的な調子、及び心身の調子は大きく異なる場合があります。ウォーミングアップでは、それらを「本格的な運動を行う前に確認しておく」という事ができます。
それによっては、例えば「今日はちょっと体が重いから、軽めの調整にしよう」とか、「今日は調子が良いから、この運動を集中的に行おう」などというように、その日に行う運動のプランを変更する事もできます(後述)。
このようにウォーミングアップは「単なる準備には留まらない」のです。
「体から得られる情報」を大切にしよう
ウォーミングアップはそのようにあくまで「準備」なのですが、その日の「最初の練習メニュー」とも言える訳で、決して一つ一つの過程が雑になってはいけません。
特に前述したように、体のキレや足の運びなどの「調子」は、その日によって異なる事があるため、ウォーミングアップには「その日の心身の状態の確認」という重要な役割があります。
例えばジョギングやストレッチでは、体を揺すったり、上に飛んで走ったりなど、敢えて意識的に体を大きく動かしながら行う事で、今日は足の筋肉に張りがあるとか、肩が凝っているなどという事を調べる事ができます。
ただ、そのような「確認」を行うためには、「どのような動作を行うと、どこの筋肉が、どのように使われるか」という事を、ある程度知っておく必要があります。しかし毎回そうして集中してウォーミングアップを続けていけば、意識せずとも、そのような事は自然と分かってきます。
例えばストレッチであれば、「今の自分の柔軟性を考え、この程度の力加減で、この方向に筋肉を伸ばした方が効果的」という事が、行っている内に段々と分かってくるのです。
何故それが分かってくるのかというと、「自分の体から得られた情報を元にして、実際の体の動かし方を工夫した」からです。
ウォーミングアップでは、そうしてまず自分の体を使い、実践してみて、それを元に頭で考え、効率の良い方法に修正し、再び実践、再び修正・・・それを繰り返し、自分の感性を高めながら、少しずつ改良していく事が重要になります。
それによって「同じウォーミングアップ」を行っていても「中身」が大きく変わってきます。そうしてウォーミングアップで行う内容を変えていく事も、トレーニング効率、及び練習効率の向上に大きく貢献するはずです。
ウォーミングアップは「少しずつ上げていく」
ウォーミングアップでは、最終的に「運動を行うために適した状態に持っていく」訳です。よっていきなり激しく体を動かすのではなく、体の動きや自分の状態を確認しながら(前述)、少しずつ運動の強度を上げていくようにしましょう。
一方、前述のように「一旦は心身を刺激したい」ので、ウォーミングアップでは、一時的に強度の高い運動を行う必要があります。ただ、ウォーミングアップだけで疲れてしまっては意味がないので、なるべく短時間で済ましましょう。
特に全力に近い強度で行う運動は「7~8秒以内」に済ましておくと、疲労感を感じにくいです。つまりグリコーゲンを消費させないという事です。数十秒間、全力で行うようなウォーミングアップは、グリコーゲンを大量に消費してしまって疲れるので、そういう運動はなるべく避けましょう。
尚、これはあくまで一例で、ウォーミングアップに決まった方法はないのですが、
・軽いジョギング(上に飛んだり体を揺すったりして筋肉を振動させる)
・準備体操(ごく簡単なもの。「伸脚」など形式的なもので構わない)
・静的なストレッチ(筋肉を伸ばした状態で反動をつけずに30秒キープ。長時間行うとデメリットが大きい。ストレッチについては後日記事にする)
・動的なストレッチ(リズミカルに体を動かし、筋肉を振動させながら解す。例えばサッカーなどでよく見るステップ踏みながら足を回して前へ移動するようなもの)
・それに繋げて、徐々に運動の強度を上げていく。
・やや強度の高い運動を行う(心身に一旦強い刺激を与える。全力での短距離ダッシュ数本、切り返しのあるダッシュ、全力に近い連続ジャンプなど。ただし短時間のみに留める。1回の運動は7~8秒以内)
・少し休憩
・動作確認のための技術的な体慣らし運動(ボールを使ったキャッチボールなど。筋トレの場合、一度軽めの負荷で1セット行ってみるなど)
・実際の本格的なトレーニングあるいは練習に入る(ここまでで20分)
というような流れになります。
ウォーミングアップでは、このように「段階的に体を温めていく」「その途中で、一旦は心身を刺激する」という事が重要になります。また全体の時間は「長くて20分程度」です。つまりこの20分という時間の中で効率良く体を温める事ができるよう「上手く時間配分を調節する」必要があります。
尚、繰り返しになりますが、これを本格的な運動を行う前に、毎回行う事になります。毎回行っていると、どこか「作業」のようになってしまいますが、前述したように「自分の体から得られた情報をフィードバックし、改良していく」という事が重要なので、毎回集中して行うようにしましょう。
効率良く体を温める事ができるよう最適化しよう
気温の低い日が続く冬や、そのような環境(緯度の高い場所)では、体温が下がりやすく、血管が収縮し、血流が悪くなりやすいです。
その状態では、筋肉がその機能を活かせず、自分が持つ本来の能力を発揮する事ができないばかりか、その状態のまま激しい運動を行うと、やはり突発的な怪我だったり、疲労の蓄積による慢性的な怪我に繋がるリスクが高まります。しっかりとしたウォーミングアップを行い、体を温めてから運動を行うようにしましょう。
当然それは「ウォーミングアップ後に行う運動強度」には関係がありません。どんなに慣れている運動であっても、どんなに軽い運動であっても、少なくとも「準備」は必要です。前述のように「準備」だからといって軽視すべきではありません。
一方、環境によっては、十分にウォーミングアップの時間が取れなかったり、あるいはそういったスペースが確保できない・・・という場合もあると思います。
まぁダンベルやバーベルを使うような筋トレではあまりありませんが、例えば学生の部活動で、他所の学校で練習試合をするような場合、結構そういった事も多いです。私も学生時代そういう経験があります。
特に気温が低い時期では、ウォーミングアップを行って体を動かしているその時には体が温かくても、動かないまま休んでいると、すぐに体温が下がってしまい、再びウォーミングアップを行う必要がある・・・という場合も出て来ると思います。
やはり「どのような環境でも、効率的に体を温める事ができような内容、日々改良していく」べきだと思います。そこで、例えば「重要なもの」と「そこまで重要ではないもの」を分け、時には「今必要なものだけを行う」という事も大事になってきます。「寒い季節専用の短時間ウォーミングアップ」の方法を考えておくのも良いかもしれません。
特に気温が低い時期の「休憩時間」は要注意です。どこかに座っている間、例えば指先だけならホッカイロ、肩なら温熱シップ、全身ならストーブなどを用意できると良いでしょう。コストはかかりますが怪我をするよりマシです。そのような中でウォーミングアップができると尚良いですね。
向上心を持とう
例えば学生の部活動なんかでは、どこか保守的な所があって、昔ながらの環境をそのまま使い続けている、あるいは経済的に使わざるを得ないという事も多いです。
しかし何もせずに諦めてしまう前に、まずは何か行動をして、思いついた事を試してみましょう。直接的には何も起こらなくても、別の何かを改善するためのヒントになるかもしれません。
またウォーミングアップの方法も、大抵が、先輩から引き継いだ方法をそのまま実践しています。私も学生時代はそうでした。しかし決められた方法を、そのまま引き継いで続けるだけでは、そこに成長はありません。向上心を持ちましょう。
もし指導者の方針で、その向上心すら持てないような閉鎖的な環境なら、いっその事、自分で新しく環境を作って、皆でそこに移動してしまうというのも一つの手です。今はネットの時代であり、優秀な指導者はいくらでも見つかります。「選手が指導者を選べない時代」は既に終わっているのです。
以上です。お役に立てれば幸いです。よろしければ「スキ」「フォロー」をお願いします。尚、次回は「運動後に行うクールダウン」について解説していきます→『筋トレのコツ45:運動後に行う「クールダウン」の重要性』
「サポート」とはチップのようなものみたいです。頂いたチップは食品やサプリメントなどの検証に活用させていただき、後日記事にしたいと思います。