コイン・チョコレート・トス/あとがき
まだ読んでない方は、まえがきからどうぞ。
あとがきはネタバレあります。
それは、水曜日の午後7時のことだった。
私はインターホンを連打した。
母が扉を開ける。
部屋の奥では、弟と妹が人気アニメ「ドラゴンボール」を見ている最中だった。
私は息を切らしながら部屋に入る。
そして、エレベーターでの出来事を母に話した。
刃渡10cm程の果物ナイフ。
筆記体でenjoyと書かれた趣味の悪い紫色のスカジャン。
いつの時代かよとツッコミたくなるような、パンチパーマ。
コイン・チョコレート・トスに描かれた内容のうち、このエレベーターの事件だけが、私の経験に基づく内容で書かれている。
その後も、ヤンキー数人組に、ナンパなのか絡まれてるのかわからないようなこともあり、当時中学生だった私は世の中は危険でいっぱいなのだと実感していくようになった。
このエレベーター事件の話をすると、もっと悲惨な被害にあった人の話を聞いたりもする。
私は実害がなかった自分のことを、幸運な方だと思った。
幸いにも私は悲観的なタイプの人間ではなく、エレベーター事件をキッカケに変わったことと言えば、慎重に行動するようになったぐらいで、それ以降特に何の嫌なこともなく過ごしてきたので、むしろいい経験だったと思うまでになった。
おかげさまで、43歳まで特に何か危険なことに巻き込まれたことはないし、痴漢にもあったことはない。
私は可能な限り夜道は歩かずにタクシーで帰るし、エレベーターでは二人きりにならないようにするし、息子たちが小さい頃はショッピングモールなどの場所では、一人でトイレに入らせたりもしなかった。男の子だって被害に遭う時代だ。
大袈裟かと思われるかもしれないが、そのぐらいしておいて損はないと思っている。
そして、私のカバンの中には、常にお手製のブラックジャックが入っている。
コイン・チョコレート・トスにお手製のブラックジャックを作るシーンがあるが、あれは完全な創作だ。
実際の私はTwitterで流れてきたブラックジャックの作り方を見て、すぐさま、まだ開封されていない自分の120デニールのタイツを長めに切り、家にあった小銭という小銭を詰め込んだ。
放置された通販サイトから送られてくる大量の段ボールを敵に見立て、自家製ブラックジャックを作るなり早速攻撃の練習をした。
威力を確かめた後で夫や息子たちに私の新しい武器を自慢したというのがリアルなところだ。
当時はまだ息子たちも小さく、私はいつも大きなカバンを抱えていた。
息子たちは私のカバンが大きいと、すぐになんでも人のカバンに入れたがる。
自分の荷物くらい自分で持って欲しい私は、徐々にカバンを小さくしていった。
とにかく、大きいカバンは肩が凝るのだ。
カバンは小さくなっていき、荷物も減らしているはずなのに、なぜか私のカバンはいつも重たい。
それは自家製ブラックジャックのせいだった。
今年の夏にも小さめのカバンを買った。
もう、自家製ブラックジャックはいらないかな、と思った。正直、重いし。
夫に「もう、これ持ち歩かんでもいいよね」と言ったが、
「持ち歩いとった方が安全やろ。入れときー」と言われてしまった。
まだ、何か危険があるということだろうか。
全くもって面倒臭い。
もうそろそろ、生理も終わる準備を体がし始めているというのに、女として何か犯罪に巻き込まれるリスクがあるかもしれないと考えなければならないのかと思うと、ほとほと面倒臭い。
女でいることのリスクがなくても、世の中は危険がいっぱいなので持っておいた方がいいことはわかっているが、肩が凝る。
私の危機回避に対する意識のスタートが、エレベーター事件だったものだから、私の危険の認識に女性の性がこびりついているのも鬱陶しいなあとも思った。
なので、小説にして幸子に諸悪の根源を一発殴ってもらおうと考えた。
ただ、性格的にあまり報復的なものは好きでなく、ちょっとぐらいのイタズラ程度で収めてしまった。
痛いのは見るのも書くのも苦手なのだ。
何か消化したかったような気もするが、色々長く書きすぎたせいで、何が書きたかったは自分でもよくわからない。
書いていることが全て本音とも思えないし、適当に書いたわけでもないような気がする。
けれど、どうしても伝えたいことがあることはわかっている。
自家製ブラックジャック、オススメ!!!!
ってこと。
これに関しては、日頃から色んな人におすすめしているが、私に勧められて自家製ブラックジャックを作ったという人は誰もいない。
残念だ。
営業能力皆無である。
正直、使い道は小銭入れくらいにしかならないので、意味がないとはいえ、おまもりにはなると思う。
ただ、小銭を靴下の中から出す時はちょっとだけ恥ずかしい。
デメリットといえば、そのくらいだ。
福岡で靴下から小銭を出している人を見かけたら、多分それ、私です。
最初から最後まで、またあとがきまで読んでくださった皆さん、心からお礼申し上げます。
感想をくださったり、続きを楽しみにしてくださったり、アドバイスをくださったり、スキをしてくださったり、シェアしてくださったり、非常に励まされました。嬉しかったです。本当に本当に本当に!!!!ありがとうございます。
これだけ長い創作物を、人様に読んでいただくのは初めてです。
自分では面白いと思っているのに、誰にも見向きもされなかったら自分の面白いの概念が否定された気持ちになってしまうのではないかという不安もあり、非常に緊張いたしましたが、載せてみると案外平気なもんでした。
というより、皆さんの嬉しい反応のおかげで、平気になったと感じています。
最後、駆け足になったし、詰め込みすぎたし、回想も多すぎだし、時系列ポンポン飛ぶし、ネーミングセンスはないし、ご都合主義だし、強引だし、課題は多いなと感じました。
それでも、楽しんでくださった方がいらっしゃったのが本当に嬉しかったです。
やはり、読んでくださる方あってこその創作だなと実感いたしました。
幸子と並走し完走してくださった皆様、ありがとうございました。
重ねてにはなりますが、あとがきまでお付き合いありがとうございました。
ほんとに、みんなありがとー!!!!!!
(コンサート会場で手を振るアイドルのように)
あと、グラム数について気にしてくださる方がいらっしゃったので、こちらについてネタバレしていきます。
1.0g ⇒ 1円(誤配新聞1日前)
3.75g ⇒ 5円(誤配新聞5日前)
4.5g ⇒ 10円(誤配新聞10日前)
4.0g ⇒ 50円(誤配新聞50日前)
57.6g ⇒ 100円×12枚(誤配新聞1200日前)
150.9g ⇒ 10円×5枚+50円×5枚+100円×8枚+500円×10枚(誤配新聞6100日前)
〆て、221.75g となっております。
硬貨の重さでした。
誤配された新聞の〇日前と小銭の金額をリンクさせています。
コインチョコを一枚残してバラバラにしたのは、4.0gで悟が「割れることのないようにおまじない」として入れたコインチョコを自分の意思でブラックジャックを使って割ることで、守られていた幸子が殻を破るイメージとして書きました。
ちなみに、敦彦(兄)がブラックジャックを川に捨てたことで、小銭分のタイムスリップ終了を表現したつもりです。
エピローグの2,983gは、未来の日付がキーです。
誤配の未来の日付は、幸子が出産する日です。
ということで、グラム数は幸子と悟の子どもの出生時体重になります。
(ここは、リアルっぽい数字を入れただけなので、具体的にどの数字かということではないです。もちょっとこだわればよかったかな、と今になって思うけど、ただのフィーリング)
最終回で妊娠したわけではありません。
そこの日付から予定日計算しようかなと思いましたが、幸子には悟と焼肉食べながら生ビールを飲んで欲しかったので、そこから少し後に妊娠してもらうことにしました。
幸子が天井に向かって「前に進むね」と言ったシーンは、幸子は未来の日付けを見て、妊娠の可能性に期待しているという体です。
それを踏まえて、未来に向かって歩きだすイメージになってます。
よかったな、幸子という感じで書きましたが、ぼんやり書きすぎたかな。
あとがきで書ききれなかった部分を補足するのはズルいかなと思いましたが、そのあたりは読んだ人の感じたものでいいかなと思っているので、自由に解釈いただければと思っています。
ちなみに、私のブラックジャックは、概ね250g前後の小銭が入ってるっぽいので、本当はもうちょっと小銭の量を増やしたかったけど、そこは小説的にうまく収めたかったので、リアルよりちょっと軽めです。
日付とコインの重さは、何度か計算したので合ってるはずなんですけど、間違ってたらごめんなさい。(テキトーかよ 笑)
グラムを気にして考えてくれる人がいたらいいなーという遊び心でした。
というか、正直なところ、この誤配の遡りの日付と曜日、グラム数の確認が一番頭を悩ませたところだったので、イトーダーキさんがXでグラム数について考察してくださったのを見て、報われた気持ちになりました!ありがとうございました!
いやはやホント、みなさんありがとうございます!!
色々思いを巡らせていただいたり、うれしいです!!
食事シーンへのコメントも嬉しかったです!!一番書いてて楽しかったのは食事のシーンでした。
くいしんぼうなの。
みなさん、ほんとありがとうございましたー!!!!
並走というより、伴走してくださったのりさん、ありがとうございました。
励ましとアドバイス、優しいお心遣い、心より感謝しております。
最初は書き上げた喜びで、もう直さなくていいかなと思ったりもしていましたが、のりさんからのアドバイスもあり、最後の最後まで粘って修正することができました。
はじめに公開しようとしていたものより、納得のいくものになったと思います。それものりさんがはっきりと、そして丁寧にアドバイスをくださったおかげと感じております。
見守ってくださっていると感じることができたことで、よりいいものをお届けしたいという気持ちが湧き立ったと思います。
本当に本当にありがとうございました。
そんな優しいのりさんの、素敵なお話はこちらです。
noteのお母さんへ、感謝を込めて。
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