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父の日当日

父の日当日の今日、夫は大好きな釣りに出かけた。
家族がまだ爆睡中の丑三つ時には起きて、いそいそと準備をし出かけていったようだ。

最近は毎週のように釣りに行き、クーラーボックスにいっぱいの魚を抱えて帰ってくる。
おかげでここ数ヶ月、私は魚を買っていない。

・・・言い過ぎた。ごめんなさい。
買っていた、魚。ええ、買っていますとも。
同じ魚ばかりでは飽きるので、よく考えたら買っていた。
鮭を食べたい日もあるし、刺身が食べたい日もあるのだった。

まあそんなことはどうでもいい。
毎週末、夫はキスやらアジやらあらかぶやらを大量に釣って帰ってきて、さらには捌いたり刺身にしたり干物にしたりしてくれる。
非常にありがたい。

そして今日も、クーラーボックスいっぱいの魚を抱えて帰ってきた。
今日の釣果はこうだった、ああだった、と報告をしながら、いそいそと捌いている。
えらいぞ、夫。
今日のおかずのため、今週のおかずのために頑張るのだ。

その頃、息子が二階から降りてくるのが足音でわかった。
しかし、完全に降りてはこない。
階段の陰から、Tシャツとパンイチという家でのお決まりスタイルで、夫の様子をうかがっている。
チラリと私の方を見て、口パクで何か言っている。

(もう、いい?)

「どうぞー」

私のどうぞという声を聞き、息子は魚を捌く夫の元へ近寄った。
さながら歩幅10cmくらいのゼンマイ仕掛けの人形みたいな歩き方で、手には今日一緒に買いに行かされたジンの酒瓶を持っている。

「これ、父の日のプレゼント」
と息子は酒瓶を差し出した。
その様子は、中学生女子が、校舎裏に呼び出した男子に初めてバレンタインチョコをあげるかのようなもじもじっぷりだ。
下はパンツしか履いてないけども。

・・・か、かわいい。
私の時とは、えらい違いじゃないか。おい、息子よ。
なんだかんだ、好きなんじゃねーか。お父さんのこと。
弟ばっかり構うのが、寂しいんだな、おい。

夫は「やさしいなー。ありがとう」と何度も言っていた。
とても、嬉しそうだった。

よかったな、夫。
私のおかげだぞ。たぶん。


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