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「ウォン・カーウァイ 4K」のその先は…Part.1【もっとウォン・カーウァイを浴びたい!】

9/16から始まった「ウォン・カーウァイ 4K」。
90年代その熱狂の中で当時映画を観た方、ウォン・カーウァイの名前を知ってはいたけど初めて劇場で観たという方、当時からの香港明星迷な方まできっと楽しんでいただけたはず!

しかしここで終わりではない…。
皆さまの映画感度が上がったこのタイミングを逃してはならない!
そこで、ウォン・カーウァイ作品を起点に是非観ていただきたい映画をご紹介します。

ウォン・カーウァイの他の作品を観る

『欲望の翼』

監督:ウォン・カーウァイ/1990年/出演:レスリー・チャン、マギー・チャン 他
まずは静岡シネ・ギャラリーで11/11(金)公開の『欲望の翼』。

ヨディはサッカー場で売り子をしていたスーに声をかけ、ふたりは恋に落ちる。しかしヨディは、自分が実の母親を知らないことに複雑な思いを抱えていた。スーと別れたヨディは、ナイトクラブでダンサーとして働くミミと一夜をともにする。部屋を出たミミはヨディの親友サブと出くわし、サブは彼女に一目ぼれする。夜間巡回中の警官タイドはスーに思いを寄せるが、スーはヨディのことを忘れられずにいた。

映画.comより

今回上映した『花様年華』『2046』の60年代三部作第一作目です。
この作品を監督のベストに上げる方も多いウォン・カーウァイ初期の傑作。
レスリー・チャン、マギー・チャン、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、カリーナ・ラウ、トニー・レオンの豪華キャスト。
じっとりとした高温多湿の雰囲気が作品全体を覆い、この奇跡的なキャストの魅力を焼き付けた伝説的な作品。こんなにも色気のある映像なかなかありません。
特にレスリー演じるヨディは超危険!目の前に現れたらきっと人生狂ってしまうな…
『恋する惑星』以降とは異なる、粗削りで危うさを感じる作品です。
夜のシーンが多く大部分が暗めの映像で、DVDでは細かいところを見逃している気がするので、今回劇場でデジタルリマスター版を鑑賞するのが今から楽しみです!

(C)1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.

チャン・チェンが足りないと思ったら

『ブエノスアイレス』で重要な役を演じ切り、ウォン・カーウァイに見つかった台湾の俳優チャン・チェン。
キャリアのスタートは映画史に残る傑作、エドワード・ヤン監督の『クーリンチェ少年殺人事件』の主演です。
『2046』を観て、正直「チャン・チェンが不足している…」と思ってしまったら、是非下記作品をご覧ください!
どちらもウォン・カーウァイ監督作です。

チャン・チェン褒め褒め記事が始まります。
  • 『愛の神、エロス』(「若き仕立て屋の恋」)

監督:ウォン・カーウァイ/2004年/出演:コン・リー、チャン・チェン

1963年年の香港。有名な高級娼婦ホアのもとへ仮縫いにやって来た新米の仕立屋チャン。緊張するチャンに対し、ホアは立派な仕立屋になるためのある心得を教え込む…。

TSUTAYA HPより

この作品短編とはいえ、完成度では『花様年華』と並ぶのではないかと個人的には思っています。
あのコン・リーと互角に渡り合える俳優は数少ないと思っているのですが、この作品のチャン・チェンは少年から青年に成長していく中、徐々にコン・リーの中で存在が濃くなっていくという会心の演技。
セリフは少なく、佇まいで存在感を表現する姿に俳優としての成長と凄みを感じました。チャン・チェン20代のキャリアの中で一番ではないかと個人的に思います。
美しくプライドの高い、しかしどこか儚いコン・リーは流石としか!
『花様年華』と『2046』で登場したような美しい旗袍(チャイナドレス)を作る仕立て屋の話ですので、旗袍の製作過程(?)が見られるのもポイント。
「WKW4K」のパンフレットでも少しふれていましたが、コン・リーが『2046』で片手に手袋をしている理由は「若き仕立て屋の恋」の様な強烈な過去があったからなのかも…と妄想してしまいます。(「若き仕立て屋の恋」の原題は「The Hand」)
絶対に別の人物なのは分かり切っているのに、繋がりがあるように感じさせるのは流石ウォン・カーウァイ。

  • 『グランド・マスター』

監督:ウォン・カーウァイ/2013年/出演:トニー・レオン、チャン・ツィイー、チャン・チェン 他

20世紀初めの中国。北の八掛拳の宗師・宝森は、流派統一を任せられる継承者として、弟子の馬三と南の詠春拳の宗師・葉問のどちらから選ぼうとする。六十四手の達人にしての宝森の娘でもある宮若梅も候補者として手を挙げる中、馬三が宝森の命を奪うという謀反を企てる。それを機に、宝森の敵を討つ復讐と後継者の座を奪い合うすさまじい戦いの火ぶたが切って落とされる。

シネマトゥデイより

ウォン・カーウァイ流のカンフー映画。武術に人生と運命をかけた者たちの物語です。アクションシーンの映像が幻想的かつ耽美で、緩急あるアクションがなんとも芸術的。
トニー・レオンとチャン・ツィイーが素晴らしいのは言わずもがな、力強く鋭い「一撃必倒」八極拳の使い手であるチャン・チェンに注目!(出番は限られますが…)
4年の訓練の末、実際に中国本土の八極拳全国大会で優勝するという斜め上のエピソード込みで必見の作品です。
《GYAO!で10/10迄無料配信中》


(C)2013 Block 2 Pictures Inc. All rights Reserved.


どちらの作品も内に秘めた想いに苦悶するチャン・チェン…
ウォン・カーウァイはまたチャン・チェンと仕事して欲しいですし、チャン・チェンに限らずこれまでの作品の本編で使われなかった大量の映像を放出して欲しい!!本編とは別物として楽しみますので!
最近は『DUNE 砂の惑星』など大作から、日本の『椿の庭』に出演するなど、本当に幅広く活躍していて今後も注目です。

ウォン・カーウァイ最新プロデュース作『プアン 友だちと呼ばせて』

監督:バズ・プーンピリヤ/2021年/出演:トー・タナポップ、アイス・ナッタラット 他

ニューヨークでバーを経営するタイ出身のボスは、バンコクで暮らす友人ウードから数年ぶりに電話を受ける。ウードは白血病で余命宣告を受けており、ボスに最後の願いを聞いて欲しいと話す。バンコクへ駆けつけたボスが頼まれたのは、ウードが元恋人たちを訪ねる旅の運転手だった。カーステレオから流れる思い出の曲が、かつて2人が親友だった頃の記憶をよみがえらせていく。そして旅が終わりに近づいた時、ウードはボスにある秘密を打ち明ける。

映画.comより

当館で9月に上映したタイ映画。
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ監督最新作であり、ウォン・カーウァイ製作総指揮の注目作です。
スタイリッシュさはそのままに、前作よりも登場人物たちの心の移ろいに焦点を当てていて、切なく爽やかな感動作。
映像や音楽の使い方などにウォン・カーウァイ的な空気があり、バズ監督のスタイルと上手く融合しているなと感じました。
ウォン・カーウァイの現在地に近いのはこの作品なのではないでしょうか。


(C)2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.


ウォン・カーウァイ監督、『グランド・マスター』以降長編監督作はありません。
最新作は中国ドラマ、フー・ゴー主演の『BLOSSOMS SHANGHAI』(製作中)。1960~90年代の激動の上海で大富豪へとのぼりつめる青年の物語とのこと。

予告編ですでにワクワクしますが、製作期間が延びることで有名なウォン・カーウァイ。完成を気長に待ちたいと思います…

定番作品をご紹介しましたが、長くなってしまったのでPart.2へ続きます!
「ウォン・カーウァイ 4K」のその先は…Part.2【ウォン・カーウァイの影響を受けた監督作品他】


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