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ウォン・カーウァイ4K『恋する惑星』ピュアで無垢な青春の一篇 スタッフブログ

その時、ふたりの距離は0.1ミリ 57時間後、彼は彼女に恋をした。その時、ふたりの距離は0.1ミリ6時間後、彼女は彼に恋をした――。

ウォン・カーウァイ監督作品の『恋する惑星』。日本での公開年は1995年。
当時まだ日本の知名度は高いと言えなかったウォン・カーウァイ監督の名前を一気に知らしめた、伝説的な作品です。

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刑事223号は、別れた恋人が好きだったパイナップルの缶詰を買い続けていた。だが、彼女を忘れるため、バーの片隅で出会った金髪の女性に声をかけて一夜を過ごすことになる。その頃、刑事223号もよく立ち寄る小食店に新しい店員が入ってくる。新入りのフェイは、夜食を買いに来た警官663号に恋心を抱き、偶然手に入れた彼の家の鍵で部屋に忍び込み……。

『ウォン・カーウァイ4K』公式HPより

刑事223号を金城武が演じ、彼が出会うバーの片隅で出会った金髪の女性を、ブリジット・リンが演じています。また、刑事633号をトニー・レオンが演じて、小食店で働く女性をフェイ・ウォンが演じています。

まあとにかく、映像が素晴らしい。音楽も素晴らしい。そしてこの人以外には考えられないだろうという絶妙なキャスト。
そして観終わった後に感じる「恋する惑星」という邦題の秀逸さ。
この作品がウォン・カーウァイ作品の金字塔としてその名を轟かせているのも理解できるでしょう。

今から27年ほど前の公開当初には、作品の色使い、カメラアングル、カメラワークなどの斬新さからこんな映像は見たことがない!スタイリッシュだ!と熱狂的に迎えられたそうです。

ウォン・カーウァイ作品の多くが、どこかセンチメンタルな切なさで満ちているのに対し、「恋する惑星」は、若者たちの限りある青春の中に満ち満ちた生命力というか、ピュアで無垢なエネルギーを感じることができると思います。
それがポップでビビットな色使いの映像美として昇華され、しかも熱気のある猥雑な香港という土地に反映されることで一段と作品を魅力的なものにしているのです。


「恋する惑星」では、前半は金城武とブリジット・リンの話、後半はトニー・レオンとフェイ・ウォンの話と二部構成になっており、「その時、ふたりの距離は0.1ミリ 57時間後、彼は彼女に恋をした。 その時、ふたりの距離は0.1ミリ6時間後、彼女は彼に恋をした。」というキャッチコピーです。
キャッチコピー長いな…と思ったのですが、一つのキャッチコピーの中に二つの文章があるのは、二部構成になっていたからでした。

金城武さんは日本のドラマや映画でも活躍している俳優さんですが、香港に仕事で訪れた際にホテルのロビーで偶然ウォン・カーウァイ監督に見初められて「恋する惑星」に出演したそうです。
その後は大ブレイクし、数々の映画に出演されています。
ウォン・カーウァイ4Kの特集で上映される「天使の涙」は、もともと「恋する惑星」の一部として考えられていた作品で、最終的には別の作品で金城武さんを迎えて作られました。
ですので、まずは「恋する惑星」→「天使の涙」をご覧になるとさらに深く作品を楽しむことができると思います。

さらに「恋する惑星」では、作品を彩り、深みを与えてくれた、デニス・ブラウンの「シングス・イン・ライフ」や、ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」など、音楽がすばらしくいいのです。
↓ちょっとネタバレ

フェイ・ウォン演じるフェイと、トニー・レオンが演じる刑事633号が初めて出会うシーン。流れているのは「夢のカリフォルニア」。ごはんを提供する店で働くフェイが曲に合わせて踊っていると、刑事633号がやってきて注文をするが――。

刑事633号「うるさい音楽が好きなのか?」
フェイ「そう、うるさい方がいい。いろいろと考えなくていいから」
刑事633号「考えるのが嫌いなのか?」
フェイ「……」リズムに合わせて踊るフェイ
刑事633号「何が好きなんだ?」
フェイ「さあ。あなたは何が好き?」
刑事はフェイをすぐそばまで呼び寄せ、至近距離で、
刑事633号「……シェフ・サラダ」
と教える。

!!!!!!!!??????!!!!!!(最後の三行のシーンのところで)
私の頭の中で「トニー!!!!!トニー!!!ト、トニー……、え、すき…」という濁流のような感情が押し寄せ、やばい動悸が……となっているときに、スクリーンに映るフェイはトニーが支払ったお札を踊りながら眺めたりしています。フェイはムッとしつつもなんとなく照れているのが目線や動きでわかり、フェイのチャーミングな愛らしさが伝わってきてまたそこでキュンとなるのです……。(このシーンめちゃ好き。恋に落ちる場面がとんでもなくキュートに描かれています)このあとフェイはとんでもない行動を起こすのですが、それはご鑑賞ください。。今観ると、これは…(心配)という気持ちになります。

当館では、『恋する惑星』といえばホットドッグ・スタンド!ということで、ホットドックのキッチンカーをお招きします!
自家製ソーセージを使ったこだわりのホットドッグを提供する神出鬼没なキッチンカー「014HOTDOGSTAND」が、ウォン・カーウァイ4Kの公開に合わせてシネ・ギャラリーに出店します。

《出店日程》9/23(金・祝)、9/24(土)11:00~16:00予定
(売切れ次第販売終了)
詳しくはこちら↓にてご確認ください!
9/16スタート!「ウォン・カーウァイ 4K」館内展開の紹介|サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー|note

「シングス・イン・ライフ」や、「夢のカリフォルニア」は劇中で流れますが、エンドロールで流れる、フェイ・ウォンが歌う「夢中人」は、映画が終わって夢が覚めても耳に残り続け、「恋する惑星」という映画の余韻を深めてくれる素晴らしい楽曲です。
「恋する惑星」では、是非音楽にも注目してみてください。

さらに楽曲以外にも、映画の舞台にもなった香港の中環のエスカレーター(中環至半山自動扶梯、ヒルサイド・エスカレーター)は非常に印象深いですよね。
このエスカレーターの途中に刑事633号が住む部屋があり、フェイがエスカレーターから部屋をのぞき込むシーンがあったりと、とても重要な役目を果たすエスカレーターです。
ここは全長800mもあり、しかも高低差が135mで、23基のエスカレーターを約23分かけて乗り継ぐ、世界一の長さを誇っています。

ここと映画の舞台になった重慶大厦は、ロケ地巡りの一つとして多くの観光客を迎えている場所です。
私も1度香港を訪れたことがあるのですが、そのときはまだ「恋する惑星」は未見だったので行かず(去年一人ウォン・カーウァイ祭でようやく鑑賞)、あ~早く観て、行けたらよかった~と後悔しております。行かれた方うらやましい~!!
コロナ禍に突入し、香港の現状を考えるとなかなか気軽に訪れるというのは難しい状況となってしまいましたが、いつかはあのエスカレーターに乗って、「恋する惑星」の世界を味わいたいものです。

ということで、「恋する惑星」についてご紹介しました!(途中心が乱れて文章も乱れまして申し訳ありません…)
なかなか大きなネタバレなしでご紹介するとなると大変ですが、とにかくウォン・カーウァイ監督の作品の中でも、とびきりキュートで愛らしいこの作品を、多くの方々にお楽しみいただきたいと考えております。

ということで、このブログを書いているときに、なんと「ウォン・カーウァイ4K」の続映が決定しました!(わーい!わーい!)
2週間限定の上映でしたが、とりあえず1週間延び、10/6まで上映が決まりました。時間は未定なのでまたご連絡します。
しばらく上映しますが、日替わりでの上映で、上映がない日もありますので、一度公式HPにてご確認ください。
静岡シネ・ギャラリー  WKW4K 恋する惑星 (cine-gallery.jp)


し・か・も……しかもしかも!なななんと「欲望の翼」の上映が決定しました~!!!!!
観たいとブログで書いてみるもんですね笑 書いてよかった。。ありがたや~!!
すんばらしくセクシーなレスリーをスクリーンで観ることができるなんて感無量です……(涙出ます。。なんですかね、トニーもですがあのオールバック?7・3?の髪型がたまらなく素敵なんですよね。。くし(櫛)になりたい。。くしで髪の毛をなでつけるシーンはほかのWKW作品の様々な場面で、レスリーだけでなくトニーなど様々な俳優さんバージョンがあるような気がしたので、是非ご覧いただいて、皆さまもくしになりたい…と思っていただけると嬉しいです^^)


去年一人ウォン・カーウァイ祭で「欲望の翼」を観たあとに、アジア映画好きのスタッフと話しをしているときに、タブレットで観ました~なんて言っていたら、スタッフが、
「タブレットとかPCで欲望の翼を観ていると、画面が暗いシーンが多いからふとしたときに自分の顔が反射して画面に映ってびっくりするよね……」
と言っていて、ものすごく心当たりがあったので、めちゃくちゃ笑いました。(レスリーの美しい顔のあとに自分の顔が映って現実に引き戻されるのです。。(-_-)←膝にタブレットを乗せて観ていたので、下からのアングルなのでこういう顔が映ります)
スクリーンの場合はもちろんそんなことはありませんし、先日のブログ(2022/9/16より『ウォン・カーウァイ4K』上映開始!めまいがするほど艶やかでビビッドな世界へようこそ|サールナートホール/静岡シネ・ギャラリー|note)でも書きましたが、繊細な色遣いや景色を見ることができるので、「欲望の翼」もぜひスクリーンでご鑑賞ください!

それでは、なんだか書きたいことを書いていたら、とりとめもなく長くなってしまいまして申し訳ありませんでした。
とにかく「恋する惑星」は必見の映画だと思います。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございました!

是非『ウォン・カーウァイ4K』を劇場のスクリーンにてお楽しみください。
皆さまのお越しを心からお待ちしております。(げ)


『WKW4K ウォン・カーウァイ4K 5作品』オフィシャルサイト (unpfilm.com)