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ウォン・カーウァイ4K『ブエノスアイレス』 「会いたい」の魔法 スタッフブログ 

みなさん、こんにちは。

先月レスリー・チャン出演の『花の影』を鑑賞して、改めてレスリーの存在は【永遠】だなと実感しました。『さらば、わが愛 覇王別姫』がとてつもなく好きな私にとって、チェン・カイコ―監督、コン・リー、レスリーの組み合わせで幸せな時間でした。幼い頃のトラウマを引きづりながら、もがき苦しむレスリー。抱きしめたかった。

今回シネギャラリーでレスリーに会える日が来るとは。。。
11月には『欲望の翼』でまた再会できます。
幸せですね。

本日は、『ブエノスアイレス』をご紹介します。

本編の内容に触れています。鑑賞前で気になる方はスルーしてください。
それでもいいよという方は、良かったらゆるーく読んでくださいね。

香港から南米アルゼンチンへやって来たウィンとファイ。自由奔放なウィンと、そんなウィンに振り回されっぱなしのファイは何度も別れてはヨリを戻している。これも"やり直す"ための旅だったが、些細なことからまた痴話喧嘩をして別れ別れに。しばらくしてふたりは再会を果たし、怪我をしたウィンをファイが看病しながら一緒に暮らすようになるが……。

『ウォン・カーウァイ4K』公式HPより

ずっと香港を舞台にしてきたウォン・カーウァイ監督が、初めて国外を舞台にし、さらに同性愛を題材にしたことで話題となった本作。第50回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞しています。

オープニングから、心拍数急上昇。
開始2分で放心状態。
2人の愛が激しくぶつかり合う瞬間を目撃して、最後まで私の心臓もつのか。。


レスリー・チャン演じるウィンとトニー・レオン演じるファイの恋愛を中心に物語は進んでいきます。
ブエノスアイレスで再出発を決めた2人ですが、イグアスの滝への道に迷い、喧嘩別れ。
しかし惹かれあう者同士、結局は再会してしまうもの。
ウィンの「やり直そう」攻撃が始まり、それを避けられないファイ。

正直、この2人の関係が別れたりヨリを戻したりの繰り返しなので、物語の展開を想像するというより、ただその瞬間のそれぞれの人物の感情を読み取ることだけに集中する・・・・そんな感覚。
ストーリーを追うのではなく、その人の感情を追うって感じに近い気がします。

いつまでもつかず離れずの2人。
会話はいつも喧嘩腰なのに、その言葉の裏には相手を想う気持ちを感じます。

絶対、右肩に意識集中してるでしょファイ。

ある日、血だらけのウィンがファイの部屋を訪ねます。
ファイがそんなウィンを抱き寄せた瞬間から、何度目かのやり直しが再開して、画面がモノクロからカラーへと変わっていきます。
きっとウィンとファイの間には「なぜ」は必要なく、「そうだから」しかない。
だから心は簡単に相手を呼び寄せてしまうのでないでしょうか。
体の繋がりはなくても、心は繋がっていたい。自分は誰かの代わりではないのだから。

タイルの青と天井からの光が重なってキレイな画です。

ファイの部屋でダンスの練習をする2人。
上手に踊れないことをウィンに怒られ、一人練習するファイが健気。
その後、アパートの共同キッチンで抱き合うように踊るシーンはあまりにも有名で説明不要。
あの時、あの瞬間は2人にとって【永遠】なのでは。

これまで多くの映画でダンスシーンは出てきていますが、印象深いシーンの一つですよね。
穏やかな時間が流れています。

ウィンの看病をしている間、文句を言われながらも幸せなファイ。
この幸せがずっと続くようにと精一杯踏ん張る様子。
その中でいつも一方的なウィンに、ファイが独占欲を見せる「パスポート隠し」。
それが2人一緒にいられる唯一の方法だったから。
でも、ウィンにとってはそれを不自由に感じてしまうものなのか。
相手を好きになりすぎるって、しんどいな。。


同じ空間、同じ時間の中で、お互いを気にかけながら過ごすウィンとファイですが、チャン・チェン演じるチャンの登場でその関係に少しずつズレが生じてきます。
穏やかだった関係に波が立ち始めます。
せきをきったかのように相手に尋問をし、責め立てる会話。
2人の視線が交わらない、緊張感あふれるシーンが続きます。


そんな中、ファイとチャンは同じ時間を過ごすようになります。
飲みに行ったり、サッカーをしたり、旅の目的地の話をしたり。
チャンが資金を貯めて目指すは、世界の果てのウスワイヤという町。
ファイの悩みを捨ててきてあげるから声を吹き込むようにとカセットテープレコーダーを渡すチャン。
ファイはそのテープレコーダーに何を吹き込むのか。。
ファイの想いが溢れます。

トニーがインタビューの中でこのシーンについて、「監督から指示があった訳ではない。自分自身でもその演技をするかわからなかった。でも突然そうしたくなった。」というようなことを語っています。 (パンフレットより抜粋)
時にその行動に理由はなく、そうすべきことだったということなんですね、きっと。

チャンの旅立ちを見送るファイの優しい表情に、新しい何かを感じます。

「耳は心の中まで察知できるんだ」その通り



またしてもすれ違ってしまったウィンとファイ。2人の愛はどんな結末を迎えるのか?
そしてイグアスの滝を目指したファイは何を思うのか?


ウォン・カーウァイ監督は「ストーリーは3つのパートから成り立っている。モノクロパートの過去、カラーパートの現在、そしてもう一つは・・・・」と語っています。
この3つ目のパートはどこからなのか。そしてそのパートが意味していることとは何か。
その答えを知ると、本作が【人】と【愛】についての物語であることに納得できるはず。
本当に興味深い。

 *答えはブログの最後に書きます。答え合わせしてみてください

青い空と雲、そしてレスリー。完璧すぎ。

オープニングの放心状態から、ラストは心踊らされました。
もう降参します。

自分を見つめ直し、人を成長させる恋愛映画だと思います。
是非、ご鑑賞ください。

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【答え合わせ】

3つ目のパート:「ファイとチャンが別れて、その時にファイの心臓が踊るのを感じる。そこからだ。」

「それまでは2人の話だったけれど、ここから後は一人ひとりの話になる。ファイは自分の心臓は独りになっても踊れるものなんだ、自分は死んだ人間じゃないんだ、と気づく。つまりファイは、ここで改めて一人の人間として生き返ったんだよ」
と監督は語っています。(パンフレットより抜粋)

納得ですよね。

(みに)