サラリン_吃音論文

吃音当事者のサラリーマン。吃音で休職してしまったり、吃音で多くを失ってきた人生を何とか…

サラリン_吃音論文

吃音当事者のサラリーマン。吃音で休職してしまったり、吃音で多くを失ってきた人生を何とかしなければと思い、吃音や心理学研究などの文献を読み漁りながら改善を試みています。せっかくなので、自分用にまとめていた情報をここでも載せていけたらと思います。

最近の記事

【海外吃音記事】Why Go To Speech Therapy?【まとめ+感想】

アメリカの吃音団体であるTHE STUTTERING FOUNDATIONのWEBサイトにて、フロリダ大学のLisa Scott博士が為になる記事を投稿されていたので、それを和訳、要約していきます。 記事内容の和訳・要約はじめに 吃音のある10代の人や成人の多くは、少なくとも一度は言語療法を受けたことがあり、何年も治療を受けている人もいます。過去に吃音の治療を受けたことがあるからといって、再度治療を考えるべきではないということではありません。 吃音は時間の経過とともに変化

    • 認知行動療法と吃音改善①~ABC理論とABCDE理論~

      はじめに吃音は言語面の問題だけでなく、心理的な問題も複合的に絡んだ問題であることを過去の記事でもまとめてきました。 ↓ このあたりの記事で少し触れています。 本記事では、吃音の心理的問題の対処および改善への重要なアプローチ方法である認知行動療法についてまとめていきます。 なお、認知行動療法についてはかなりのボリュームになると思うので、複数記事に分けてまとめます。 認知行動療法(CBT)とは認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)

      • Camperdown program(吃音改善トレーニング⑥)

        はじめにCamperdown programは、Australian Stuttering Research Center(オーストラリア吃音症研究センター)で開発された、12歳以上の学齢期や成人の吃音を治療するためのプログラムです。 このプログラムでは、ビデオなどの訓練モデルを使用して、吃りにくいゆっくりとした話し方が指導され、日常会話での吃音を減少させることを目的としています。 詳細に説明していくとかなりのボリュームになってしまうので、本記事では概略(なるべく詳しく)をま

        • The regulated-breathing method(吃音改善トレーニング⑤)

          はじめにこれまで発話訓練として、Prolonged speechに関連した記事を4本投稿してきました。 この記事はそれとはまた別のThe regulated-breathing method(RB)についてまとめました。個人的にもかなり重宝し、助けられた方法ですので参考になりましたら幸いです。 The regulated-breathing method(RB)とはThe regulated-breathing method(RB) は、吃⾳発生時と逆の呼吸パターン(気流

        【海外吃音記事】Why Go To Speech Therapy?【まとめ+感想】

          吃音関係で役立つリンク集(随時更新)

          はじめに吃音関連の情報について、ネットでいくつか見かけますが、情報が少なかったり、個人の感想(バイアス)が入っているものも見かけます。 そこで、私が今まで色々調べた中で、分かりやすく、かつ非常に参考になるサイト等のリンクをまとめていこうと思います。 ※あくまで私個人の主観になりますが、できるかぎり客観的またはエビデンスのあるものを選んでいます。 私が選ぶ以上、多少バイアスが入ってしまうと思いますがお許しください。 また、幼児期の対応や発話訓練、認知行動療法などは別の機会にま

          吃音関係で役立つリンク集(随時更新)

          Soft contacts (吃音改善トレーニング④)

          Soft contactsとは吃音は、舌や唇の筋肉の緊張が強すぎるときによく起こります。 吃音者は、無理やり発音しようとして余計な力を使っていることがあります。 例えば、"p "の音を出そうとするとき、唇を力いっぱい入れているかもしれません。 Soft contactsは、light articulatory contactsとも呼ばれ、発声時に舌や唇を軽く動かすテクニックです。舌や唇の緊張を和らげることで、音から音への流れをスムーズにすることができます。練習を重ねるうちに

          Soft contacts (吃音改善トレーニング④)

          Easy onsets (吃音改善トレーニング③)

          吃音改善において、言語・認知等、さまざまな方向からのアプローチが必要になります。こちらについては下記記事にて解説しております。 また、先日Prolonged SpeechとContinuous Phonationについて解説しました。 今回は、上記と併せて行うとより効果的な訓練法について紹介します。 Easy onsets (gentle voice onsets)Easy onsets (gentle voice onsets)は、単語の最初に来る母音を出すためのテク

          Easy onsets (吃音改善トレーニング③)

          Continuous Phonation(吃音改善トレーニング②)

          吃音改善において、言語・認知等、さまざまな方向からのアプローチが必要になります。こちらについては下記記事にて解説しております。 また、先日Prolonged Speechについて解説しました。 今回は、Prolonged Speechと併せて行うとより効果的な訓練法について紹介します。 Continuous Phonation音声は有声音と無声音の組み合わせで構成されています。 声帯を振動させることで有声音(例えば "z"、"d"、"g"、母音)を出します。 声を出すと

          Continuous Phonation(吃音改善トレーニング②)

          Prolonged Speech(吃音改善トレーニング①)

          吃音改善において、言語・認知等、さまざまな方向からのアプローチが必要になります。こちらについては下記記事にて解説しております。 この記事では、言語面に当たる流暢性トレーニングであるProlonged Speechについて、イギリスの言語聴覚士さんのウェブサイトや論文等から得られた情報をまとめていきます。 Prolonged SpeechProlonged Speechは、各音声を通常よりも少し長めに伸ばす流暢性テクニックです。 力みのない発話パターンを身に付けることがメイ

          Prolonged Speech(吃音改善トレーニング①)

          合理的配慮のリスクと注意点(吃音)

          吃音当事者において、合理的配慮を受けることはとても重要です。合理的配慮は吃音の進展を防いだり、個人が自身の能力を発揮する上で非常に重要である一方、やり方を間違えると長期的なリスクや機会損失を招く可能性があります。 合理的配慮とは合理的配慮は、障害がある人々が教育、職場、社会活動等において他の人々と同等の機会を享受できるようにするための支援や調整を指します。文部科学省が発表している定義は下記のとおりです。 障害者の権利に関する条約「第二十四条 教育」においては、教育について

          合理的配慮のリスクと注意点(吃音)

          つらい緊張や不安に効く!科学的対処法

          不安や緊張に悩まされる人は多いかと思います。特に苦手な場面や大勢の前などは、緊張で正気ではいられない方もいるかもしれません。 この記事では、不安や緊張を抑えることができる科学的な方法を挙げ、私が日常の場面でも利用しやすいようにカスタマイズした方法をまとめます。 やり方早速ですが、私がカスタマイズした不安・緊張解消法は以下の通りです。 ①背筋を伸ばす →頭のてっぺんから糸で吊られている感覚 ②漸進的筋弛緩法(簡易版) →全身で5秒ほどグッと力んで、一気に力を抜く ③ボックス

          つらい緊張や不安に効く!科学的対処法

          吃音の情報とバイアスの罠

          はじめに吃音に対する理解を深めるため、多くの人々はインターネットや誰かの話を情報源として利用します。これらは吃音者自身やその家族、関心を持つ人々にとって重要な情報源となっています。 しかし、その情報の質は大きく異なることがあり、正確さや科学的根拠に基づいていない情報も少なくありません。また、情報選択におけるバイアスの発生にも注意が必要です。今回はこれらについてまとめます。 バイアスとその影響バイアスとは、特定の方向へと偏った考えや判断の傾向を指します。 情報を得る際、人々は

          吃音の情報とバイアスの罠

          吃音改善の考え方についての考察

          先日までに、吃音の神経メカニズムや改善訓練による変化をまとめました。これらより、適切な訓練を行うことで、吃音は十分に改善し得ると考えられます。 そこで今回は、今までの内容をざっくりまとめつつ、改善の考え方について私なりに考察します。 はじめに吃音者には特有の脳構造や神経パターンがあることを解説しました。 また、人間の脳には可塑性という性質があり、特定のトレーニングを繰り返し行うことで脳の構造や神経パターンに変化が生じ、吃音の頻度や社交不安が改善したという研究もまとめました

          吃音改善の考え方についての考察

          吃音改善訓練の神経学的エビデンス

          今回は、吃音改善を目的とした介入により、脳や神経ではどのような変化がみられるのかをまとめます。 吃音改善の様々な訓練について、SNSなどを見ると「一時的で意味がない」や、むしろ「そんなもの意味ない」「逆に悪化する」といった否定的な意見を目にします。 実際のところどうなのかを、神経学のエビデンスベースでまとめます。 はじめに以前、吃音者は特有の脳の構造および活動パターンを有することを解説しました。大事なポイントは下記のとおりです。 吃音者と非吃音者は、脳の活動や構造、パター

          吃音改善訓練の神経学的エビデンス

          脳の可塑性~脳の驚くべき機能~

          脳の可塑性は、人間の学習、記憶、回復、そして適応能力の基礎を形成する重要な概念です。この記事では、脳の可塑性の基礎、メカニズム、具体例をまとめます。 脳の可塑性とは脳の可塑性、または神経可塑性とは、脳が経験や学習に応じてその構造や機能を変化させる能力を指します。 これは、私たちが新しい情報を習得したり、新しい技能を身につけたり、さらには脳損傷から回復したりする際に、脳がどのようにして自己を適応させ再編成するかを示すものです。 この過程は、幼少期から老年期に至るまで続き、私た

          脳の可塑性~脳の驚くべき機能~

          吃音の脳神経学的メカニズムの解明

          この記事では、吃音に関するfMRIやPETなどによる脳および神経学的基盤に関する研究をまとめます。 県立広島大学の城本修教授が様々な研究をまとめてくださっており、そこから紹介します。 かなり難しい内容ですが、ここを理解しておくと、のちに解説する吃音改善の理論とその臨床結果について、理解度が大きく異なります。 今まで「そんなの意味ないでしょ」と思ってきた吃音改善法が、実は脳神経学的にも効果を確認できたりします(長くなるのでここはまた別の記事でまとめます)。 難しい方は、まとめ

          吃音の脳神経学的メカニズムの解明