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The regulated-breathing method(吃音改善トレーニング⑤)

はじめに

これまで発話訓練として、Prolonged speechに関連した記事を4本投稿してきました。

この記事はそれとはまた別のThe regulated-breathing method(RB)についてまとめました。個人的にもかなり重宝し、助けられた方法ですので参考になりましたら幸いです。


The regulated-breathing method(RB)とは

The regulated-breathing method(RB) は、吃⾳発生時と逆の呼吸パターン(気流:空気の流れ)を用いることにより、呼吸の流れの不規則性に対処するように設計された吃⾳の行動療法です(Azrin & Nunn, 1973)。
分かりやすく言うと、吃音が出るときの状態をよく観察して、その真逆となる状態を意図的に作り出していこうという方法です。

吃⾳は、さまざまな呼吸パターンの不規則性が確認されています。
Healey (1991) は、吃⾳は主に喉の喉頭筋の緊張に関連しており、その結果、空気の流れと発話が中断されることを⽰しており、Bloodstein (1995) は、場合によっては呼吸が完全に停⽌したり、声の不規則性が⽣じたりすることを指摘しています。

また、吃⾳のある⼈は、喉頭筋の調整が関与する発話困難時に気流が少なくなる傾向があり、その結果、発話開始前の肺の空気量が減少します (Stager、Denmanおよび Ludlow、1997)。

吃⾳における気流の不規則性の問題に対処するために、発話関連の呼吸行動の修正が障害の治療に役立つと考えられています。

The regulated-breathing methodのやり方

RB は、次の5つの要素で構成されています。

Ⅰ.Awareness training
Ⅱ.Relaxation
Ⅲ.Competing response training
Ⅳ.Motivation training
Ⅴ.Generalization training

これらの要素について、1つずつ詳しく見ていきます。

Ⅰ.Awareness training

Awareness trainingは4つの技法から構成されています。

① Response description

意図的に吃りを再現し、吃音の発生に関連する身体的な動き、音、感覚(緊張)を詳細に言葉で表現します。

やり方
自分の家などで、普段吃るときの状態を再現してみます。
吃りやすい場面を想像すると、再現しやすくなるかもしれません。


・のどぼとけの辺りに力が入り、吐く息をせき止めている
・胸から上の筋肉にグッと力が入り、全体が硬直している
・眉間にシワを寄せて一点を見つめている
・前かがみの姿勢になっている
・時間が止まっている感覚がある
など

このときに、自分を動画に撮って確認するのも良い方法です。
なお、人によっては苦しい記憶を思い出したりして辛くなることもあるかと思いますので、辛くなったら一旦休憩したりして、体調を気にしながら行うことが良いと思います。

② Response detection

吃音が発生したときに、それを正しく認識できるようにします。
実際の場面でも、①のようにどこがどのようになっているか観察できるようになることがベターです。

私の話ですが、これはかなり難しかったです。
私の場合は、吃るときは頭が真っ白になっていて、声を出すのに必死だったため、体の状態を観察する余裕がありませんでした。
それでも、吃ったあとに振り返ることを意識し続けた結果、3~6ヶ月くらいで段々と意識できるようになってきました(それでも全吃り中の5%程度でしたが…)。

日常的に行っていない思考習慣などは、習得にかなり時間がかかります。短期間で効果が出ることには期待せず、長期になることを覚悟して粘り強く取り組むことが大切になります。

ちなみに、上記のように自分を観察し、言語化するということは、「自分の体や思考から一定の距離を取る」ということであり、認知行動療法やACTなどでもかなり重要となるスキルになります。
これらができるようになるだけでも、心理的ストレスが軽減されると期待されます。

③ Situation awareness training

吃音を誘発する言葉、状況、人物を特定します。
観察を続けていると、吃音の発声には特定のパターンがあることが分かってきます。それを特定していきます。


・おはようございます、お疲れ様です、お先に失礼します などの挨拶
・周りが仕事に集中していて静かな環境
・発表をするとき
・怖い上司の前
など

④ Anticipation awareness (early warning)

吃音の発生を予測できる身体的手がかりを認識します。


・呼吸が浅くなっていて、人の目を気にしている
・緊張して体が力んでいる
など

これらの工程を通して、自分の状態を客観的に見ることができます。
自分が吃るときの身体の状態、心理的な状態、特定のパターンなどを見つけることができれば、それを打開する行動が見えてきます。

Ⅱ.Relaxation

次に、緊張に対抗するための3つのリラクゼーション法を学びます。
以前解説したProlonged speechもそうですが、これらの方法は日常生活で使用していくことが最も難しいとされています。これは般化と呼ばれ、日常生活だと緊張などでいつもの思考及び行動パターンに入りやすく、これらのテクニックをしようする余裕がなくなります。
また、緊張により体や思考がうまくコントロールできなくなります。

そこで大切になるのがリラックス技術の習得です。
スポーツでも勉強でも、緊張していたりテンパっていたら、練習や勉強の成果を発揮できないのと同じように、効果的な方法を知っていても、それを冷静に行うことができる状態でなければ意味がありません。

RB法で行われるリラックス技術について解説していきます。

① リラックスした姿勢

胸や腹部の筋⾁をリラックスさせる快適な姿勢を学びます。
さくらづか治療院さんのブログで分かりやすい画像がありましたので載せておきます。

さくらづか治療院

姿勢が悪いと、余計な場所に力が入ってしまったり、呼吸がスムーズにできなくなってしまいます。
また、姿勢は感情にも大きく影響します。
それらの研究も紹介します。

研究① Physical posture: Could it have regulatory or feedback effects on motivation and emotion?

参加者を2つのグループに分け、一方には背筋を伸ばして座る姿勢をとらせ、もう一方には猫背の姿勢をとらせました。両グループの参加者にストレスの高いタスクを行わせ、その間の心理的な反応や生理的な変化を観察したところ、猫背の姿勢を取ったグループは、無力感やストレスを感じやすくなることが分かりました。

研究② Body posture effects on self-evaluation: A self-validation approach. 

71名の参加者に、背筋を伸ばして胸を張って座っている状態(自信のある姿勢)と、背中を曲げて前のめりになっている状態(自信のない姿勢)で、自分の良いところと悪いところを考え、書き出してもらった。
その結果、背筋を伸ばして胸を張って座っている状態の方が、ポジティブな自己評価や思考を持つことができました。

研究③ The Benefit of Power Posing Before a High-Stakes Social Evaluation.

堂々とした姿勢をとらせた被験者と、縮こまった姿勢をとらせた被験者では、前者の方がテストステロンという「生きる活力」「生気」「気持ちの張り」といった、バイタリティを高める作用のあるホルモンが増加し、コルチゾールというストレスホルモンの低下が確認されました。

人間には心身相関という性質があり、心と体の状態は常にリンクしています。心の状態が悪いと、体に不調が出たり、その逆も然り。
そのため、良い姿勢=良い心理状態ということにもリンクするのです。

② 腹式呼吸の習得

リラックスできる呼吸を学び、習得します。
腹式呼吸はよく聞く話だと思いますが、よく聞くほど重要ということです。

腹式呼吸の効果

腹式呼吸をすると副交感神経が優位になり、リラックス効果をもたらしてくれます。ストレスがかかると交感神経が優位になり続け、心身に不調をきたす恐れもあります。そこで腹式呼吸を行い、副交感神経を優位にすることで、リラックスにつながります。副交感神経は心拍数を下げて消化器への血液供給量を増やし、身体を休息モードへと導いてくれます。

腹式呼吸のやり方

背筋を伸ばして、鼻からゆっくり息を吸い込みます。
このとき、丹田(おへその下)に空気を溜めていくイメージでお腹をふくらませます。
つぎに、口からゆっくり息を吐き出します。
お腹をへこましながら、からだの中の悪いものをすべて出しきるように、そして、吸うときの倍くらいの時間をかけるつもりで吐くのがポイントです。
回数は1日5回くらいから始め、慣れたら10~20回が基本ですが、その日の体調に合わせて、無理なく楽しみながらやりましょう。

日本医師会
日本医師会

ポイント

  1. 吸うときは鼻からゆっくり、おへその下に空気を溜めていくイメージで

  2. 吐くときは口からゆっくり、からだの中の悪いものをすべて出し切るイメージで

  3. 吸うときの倍くらいの時間をかけるつもりで吐く

  4. 1日10~20回を目安に、無理なく続ける

また、腹式呼吸などの深呼吸を継続することで、下に示すようにメンタル・思考・心身状態が改善されることが報告されています。

深呼吸の健康心理学的考察
深呼吸の健康心理学的考察

Ⅲ.Self-directed relaxation

ここでは、日常生活で簡単にできるリラックスルーティンを習得します。

やり方

各筋肉に集中し、その筋肉を弛緩させていきます。
訓練することで筋肉をリラックスさせる時間は徐々に短くなり、数秒で終わるようになります。
これにより、緊張する場面などで簡単にリラックスすることが可能になります。
近い方法で近年注目されているボディスキャン瞑想というものがありますが、これの具体的なやり方を紹介します。

ボディスキャン瞑想のやり方

(1)肩幅程度に足を広げてゆったりと立つか、背筋を伸ばして椅子に座ります。

(2)心地よく自然な呼吸を行い、軽く目を閉じます。

(3)朝や昼であれば、明るい窓辺で行うのもお勧めです。太陽の光が自分の頭のてっぺんから体の中に入ってくる感じをイメージします。夜であれば体の各部位を懐中電灯で照らしながらチェックしていくようなイメージを持ってもよいでしょう。普段は無視している微細な体の感覚をじっくりとチェックしながら感じていきます。

(4)まず自分の頭部をスキャンしましょう。光で頭の表面や頭の内部をくまなく照らしていくイメージを持つと、普段は意識していない頭の皮膚感覚や脳の状態をチェックしやすくなります。もしかしたら頭の皮膚の一部がかゆく感じるとか、髪の毛がかすかに風で揺れている感覚に気づくかもしれません。感覚をキャッチしたら、「あ、かゆみがある」とか、「あ、髪が揺れている」と気づいてください。

(5)過緊張や睡眠不足の人は、頭の中に重い不快な塊のような感覚があることもよくあります。そうした不快な感覚をキャッチしたら、呼吸に合わせて新鮮な空気をその塊に送り、不快な感覚を呼気とともに吐き出すイメージを何回か行ってみてください。多少でも不快感が和らいだら、次の体のパーツにスキャンを移動させましょう。

体や頭の中に「不快な感覚」を発見したら、その感覚や塊に対して新鮮な空気を送り込み、吐き出しましょう。

(6)同じように光で照らしていくイメージを続けながら、両目、鼻、口周り、ほほ、顎などそれぞれのパーツの感覚を入念に意識して感じ取ってみてください。

(7)知らず知らずに緊張していると、目の周り、ほほ周りの筋肉が固まっていたり、歯を食いしばっていたり、顎に力を入れていることがよくあります。力が入っているな、固まっているなと感じたら、その箇所に呼吸とともに新鮮な空気を送りながら、意識的に力を緩めてあげてください。

(8)続いて同じように光の流れとともに、首→両肩→胸→背中→腹→お尻→左右の太ももからふくらはぎ→両足底といった感じで、次々とそれぞれの部位を意識しながら、様々な感覚をスキャンしていってください。全身をスキャンする時間がないときは、「頭部と首筋だけ」「肩と背中だけ」などと部位を決めて行ってもかまいません。

これを繰り返し実践し、トレーニングすることが重要です。

Ⅳ.Competing Response Training

認知行動療法の1手法で、出来事への反応の仕方を変えるものです。
ついやってしまう反応が役に立たないか、不適切な場合に役立ちます。
ここでは、吃⾳および吃⾳の環境的・⾝体的前兆に気づいたら、吃⾳発生時と相反する行動をとるようにトレーニングします。

RBでは主に、呼吸パターンの調整に焦点が当てられています。
吃ったとき、または吃ることが予想される場合、一旦話すのをやめて、意識的に胸と喉の筋⾁をリラックスさせながら腹式呼吸を行い、少しずつ息を吐き出して話し始めるようにします。
練習の際は、話す⽂の冒頭でも呼吸法を行い、短い文章から始めて段々と長い文章を練習します。

Response descriptionの項目で、吃音発生時の状態を観察しましたが、この反応を意識的に変えていきます。

例えば、
・喉で息をせき止めている→止まらないように息を流しながら発声してみる
・上半身全体に力が入っている→力を抜いて声を出すようにしてみる

など

最初は、Response descriptionの章で説明したように、イメージしながら練習します。いきなり実践で使うことはほぼ無理なので、練習をして段々と難易度を上げていくと成功しやすくなります。

ちなみに私の場合、修正すべき行動がたくさんあったのですが、すべてを同時並行で考えることは無理でした。特に実際に人と話すとはそんな余裕がありませんでした。私の体験談としては、見つけ出した方法の中から実践しやすく成功する可能性が高い行動を1〜2個選び、それが体に馴染むまで他のことは意識しないのがおすすめです。

Ⅴ.Motivation training

トレーニングのモチベーションを向上させるため、3つの方法が使用されます。

①過去の吃音に関する不便さや経験を振り返ります。ここでは、自身が吃音によって経験した過去の苦労や挫折について考えます。過去の吃音に関する不便さを振り返る理由は、自己認識と動機づけを高めるためです。このプロセスによって、自分の吃音が日常生活にどのような影響を及ぼしているかを具体的に理解し、その改善に向けて積極的に取り組む動機を得ることができます。過去の困難な経験を振り返ることで、治療へのコミットメントを強化し、治療の目標達成に向けたモチベーションを高める効果が期待されます。

※辛い経験を思い出すと、メンタル的にキツイ方もいらっしゃるかと思います。そのような方で、これをしなくても諦めずに行動できる方は、無理にこれを行う必要はないと思います。一方で、練習をサボってしまったり継続できない人にとっては、悔しい出来事を思い出すことはツラい反面、練習を継続するモチベーションになるかもしれません。

②RBを正しく使用することができたときに、家族や友人が褒めるように指導したり、RBを使用すべきタイミングを指摘するようにします。家族や友人が確認する理由は、患者に対する社会的サポートを提供し、治療の効果を強化するためです。家族や友人が治療プロセスに関与することで、患者自身の努力が認識され、支持されていると感じることができます。また、正しいRB法の使用を褒めることで、新たなスキルを習得し、吃音に対処する際の自信を高めることができます。このような社会的サポートは、新しい話し方のパターンを学習し、日常生活に適用する上で重要な役割を果たします。

※一人で行う場合はできませんが、話す機会があった後に、その時の自分の話し方や、RBがきちんとできていたかを振り返ることで代わりになるかと思います。

③最後に、吃音が発生しやすい状況に自らを置き、これらを効果的に使用します。日常生活においても、RBが実践できるようトレーニングします。

Ⅵ.Generalization training

治療で得られた成果が病院の外の実際の状況にも適用できるようにするためのプロセスです。このトレーニングの目的は、治療セッション中に習得した技術や行動が、日常生活の様々な状況で自然に発揮されるようにすることです。以下のような技術が含まれます。

  1. Symbolic Rehearsal:吃音が発生しやすい状況を想像しながら、正しい反応(RB)を行うようにします。これは、実際の状況に直面した際に適切な反応を行うことができるようにするためのものです。

  2. Positive Practice: 患者は一度に一文ずつ治療者に読み上げ、各単語の間にRBを行います。その後、二単語ごと、三単語ごとと徐々に間隔を広げ、流暢な話し方ができるまで練習を続けます。

これらの技術を電話での会話や家族との会話など、様々な設定で使用するよう指導されます。進歩するにつれて、話す速度は徐々に上げられ、流暢に話すことができるようになります。このトレーニングを通じて、病院外での状況においても、習得した技術を効果的に適用することができるようになります。

研究事例

ここで、RBの研究及びエビデンスを紹介します。

① Azrin & Nunn (1974)

この研究は、RBが吃音にどの程度効果的であるかを評価することを目的とし、特に従来の治療法で改善が見られなかった吃音者に対するRBの効果を検証しました。研究には14人の吃音者が参加し、2時間の単一セッションで行われました。治療の翌日に行われた自己報告によると、吃音の頻度が94%減少したと報告されました。この効果は、全ての患者において少なくとも1か月間維持されました。この短期間での大幅な改善は、RB治療の有効性を示すものとして注目されました。これらの自己報告は、参加者の友人や家族の報告、および治療者とクライアント間の電話によるフォローアップによって裏付けられています。

② Azrin, Nunn & Frantz (1979)

この研究は、RBと別の治療法である体系的脱感作とを比較して評価することを目的としています。体系的脱感作は、リラクゼーション技術を用いて不安や恐怖を減少させる方法で、RBが吃音に対して他の治療法よりも優れた効果を持つかどうかを明らかにすることを意図していました。3ヶ月のフォローアップ調査で、RB治療群では平均して吃音頻度が約95%減少したのに対し、体系的脱感作を受けたコントロール群では約7%の減少に留まりました。この結果は、RB治療が体系的脱感作と比較して、吃音の大幅な減少をもたらすことを示しています。

③ Williamson, Epstein & Coburn (1981)

この研究は、RBが吃音者の話速、流暢さ、および顔の筋肉の緊張に与える影響を、より客観的な方法で評価することを目的としています。特に、直接観察や客観的測定を用いてRB治療の効果を検証することで、自己報告に頼った以前の研究の限界を克服しようとしました。この研究では、話速、流暢さ、および顔の筋肉の緊張を測定するために、直接観察および客観的測定法(例:顔の筋肉のEMG測定)が用いられました。これらのデータは、読み上げ、インタビュー、役割演技、電話会話など、複数の異なる状況で収集されました。RB治療後、参加者の話速が向上したことが観察されました。 吃音の流暢さが改善され、よりスムーズな話し方が可能になったことが報告されています。 顔や顎の筋肉(特に咬筋)の電気筋肉活動(EMG)を測定した結果、治療後に緊張が減少したことが示されました。

④ Ladouceur & Saint-Laurent (1986)

この研究は、RB治療後の吃音の頻度と流暢さにおける改善を、非吃音者と比較して検討することを目的としています。吃音者のグループと非吃音者のグループが設けられました。治療前から治療後にかけて、吃音の頻度が有意に減少しました。この治療効果は、1ヶ月および6ヶ月のフォローアップでも維持されました。6ヶ月のフォローアップ時点で、吃音者グループと非吃音者グループとの間に有意な差はなく、これはRB治療が吃音者を非吃音者と同等の流暢さレベルにまで改善できることを示唆しています。

⑤ Waterloo & Gotestam (1988)

この研究では、RB治療を受けるグループとコントロールグループとの間で吃音の頻度と話速の変化を比較しています。研究には32人の吃音者が参加し、無作為にRB治療グループとコントロールグループに割り当てられました。RB治療グループの参加者は、2~3時間の単一セッションでRB治療を受けました。治療後2、3、8ヶ月のフォローアップ調査で、RB治療グループは吃音の頻度と話速において有意な改善が見られました。これに対してコントロールグループでは顕著な改善は見られませんでした。RB治療グループでは、特に8ヶ月のフォローアップ時点で、話速の改善が顕著でした。

まとめと考察

RBは50年ほど前に海外で開発された方法ですが、有効性は多数報告されています。
日本の臨床現場で使用されているかは分からないのですが、日本語での情報はあまりなさそうです…
Prolonged speechのような発話練習になりますが、ストレスや緊張への対策なども組み込まれていて、不安が強い人にも効果があるのではないかと思います。本質は「力まず過度に緊張せず話す」というところかと思いますので、Prolonged speechなどと目指すところは同じかなと思います。
そのあたりは併用したり、状況によって使い分ければよいと思います。
また、本人が自身の吃音をよく確認し、その特徴を見つけてアプローチしていくので、その人に合ったトレーニングを行うことができるとも言えます。吃音は人によって症状が異なりますが、この方法では、自身に合った改善法を見出すことができるかもしれません。

参考
1)Christine A. Conelea, B.A. Kevin A. Rice Douglas W. Woods, Ph.D. Regulated Breathing as a Treatment for Stuttering: A Review of the Empirical Evidence
2)K K Waterloo, K G Götestam The regulated-breathing method for stuttering: an experimental evaluation
3)さくらづか治療院 オフィシャルブログ
4)Riskind, J. H., & Gotay, C. C. (1982). Physical posture: Could it have regulatory or feedback effects on motivation and emotion? Motivation and Emotion, 6(3), 273–298.
5)Briñol, P., Petty, R. E., & Wagner, B. (2009). Body posture effects on self-evaluation: A self-validation approach. European Journal of Social Psychology, 39(6), 1053–1064.
6)Cuddy, Amy J.C., Caroline A. Wilmuth, and Dana R. Carney. "The Benefit of Power Posing Before a High-Stakes Social Evaluation." Harvard Business School Working Paper, No. 13-027, September 2012.
7)益谷 真、益谷 望 深呼吸の健康心理学的考察
8)セゾンの暮らし大研究
9)頭から足へボディスキャン瞑想 隠れた不調を早く察知 こちら「メンタル産業医」相談室(16)


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