私のキャリアデザイン -建築業界で複数転職し、起業するまでに至った経緯-

santas代表の宮崎です。

今回はsantasのことを少しでも理解いただければと思い、
私がどのようなキャリアを経て、独立するに至ったかをお話しします。
建築系のキャリアで悩んでいる若手の皆さんにとっても
何かしら参考になれば嬉しいです。


学生時代に学んだこと

学生時代は建築デザインを専攻していました。当時は設計課題に没頭し、ひたすら本を読み漁り、建築を見て回る毎日でした。デザイン以外にも興味を持ち、プロジェクトマネジメント、デザインシンキング、デジタルデザイン、社会学など幅広く学んでいて、この頃に自分のコアスキルである「クリエイティブ&マネジメント」の基礎が出来たと思います。

ただ、あくまでメインは建築デザインと考えていて、建築が社会課題にどう貢献できるのかを本気で考えていました。

キャリアを考え直す転機

キャリアを考え直すきっかけになったのは東日本大震災(311)でした。当時は無事修士論文を提出し、憧れの建築家の元へ試用期間として働きつつ、現地の復興活動にも関わっていました。学生時代から、建築は社会に求められているものだと信じていたのですが、様々な建築家の提案や活動が現地のニーズと大きくかけ離れており、唖然としたのを覚えています。建築が社会の役に立つためには、社会の裏側にある仕組みを理解した上で考えなければいけないことを心から実感しました。
この頃から、将来は建築家ではなく、空間に関わることをすべて解決できるプロデューサー的な役割になりたいと思うようになりました。

ベンチャーで経験したこと

アトリエ事務所での試用期間を終え、改めて自分の生き方を考えた際に、昔から好きだった自然を取り入れた空間を増やしたいという思いが芽生えました。当時は右も左も分からない小童だったので、この後お世話になるベンチャーが掲載していた不動産の図面に自ら環境シミュレーションを行い、新しい価値を一緒に提案できないか直談判しに行きました。企画書を一通り説明し終わり、面談して頂いた方が「発想は良いが、実現するには修業が必要。」と仰っていわれ、気付いたらそのままお世話になっていました。
当時は月1回食事に誘っていただき、当時の会社の仕組み、成長戦略、社長としての姿勢などを話してくれ、徐々に自身のキャリアを再考する様になりました。当時の業務内容は不動産企画から、仲介、設計、商品企画、運営など様々な経験を積ませて頂いたおかげで、業界を俯瞰して見る基礎能力がついたおかげで、改めてプロデューサーとしてのキャリアを模索したいと考えるようになります。ほどなくして、ベンチャーでの経験だけではなく大きなお金を動かしている大企業に籍を置いてみるのも経験だと話して頂き、転職を決意します。

大手組織設計事務所で経験したこと

転職を考えていた頃、先輩から「社内で新しいチームが出来るけど興味ないか?」と声をかけてくださり、ちょうど良いタイミングだったのでお受けしました。そのチームは、組織設計事務所の中で、領域横断でハードだけではなくソフトも提案する部署でした。
その中で、私はデザインコンサルタントとして活動していました。例えば、オフィスの設計依頼が来た時は、空間イメージや席数などから考えるのではなく、理想の働き方から考え、最終的に設計者と協働して空間デザイン、利用ルールなどに落とし込んでいくイメージです。
誰もが知っている大企業や公共団体との業務はやりがいもありましたが、関係者も多く自分の手や頭で考えたことがどんどん溶けて無くなる印象があり、気付けば次第に調整役へと回っていました。
ただ、この時に出会った同僚で今でも仲良くして頂いている方々は尊敬できる方が多く、私の宝だと思っています。

外資系企業で経験したこと

業務内容がデザインコンサルティング:プロジェクトマネジメント=1:1になった頃、デザインコンサルティングの経験は一通り積んだので、プロジェクトマネジメントの経験を増やしたいと考えるようになりました。ちょうど登録していた転職サイトから、次にお世話になる外資系企業がプロジェクトマネージャ(PM)を募集していると連絡があり、応募してオファーを頂いたのでお世話になることにしました。
PMとして活動を開始してほどなく驚いたのは、関係者の方々がそこまで楽しそうにしていなかったことです。プロジェクトマネジメントにはPMBOKという知識が体系化された教本みたいなものがあるのですが、設計段階から始まる案件は兎も角、企画段階から始まる案件に関しては通用しない。つまり、プロジェクトの成功とプロジェクトマネジメントの成功が乖離していることに気付きました。建設プロジェクトが減少していく中でこれはまずいと思い、企画段階からのプロジェクトを積極的に取りに行き、成果をあげることで、クライアントからは一定の評価は頂いていましたが、会社として体制を変えないことに不満を持っていました。そのような状況を当時のクライアントに相談したところ、「あなたがいなくなることがプロジェクトにとって一番のリスクだから、もし転職したとしても、あなたと契約したい。」と仰って頂いたことをきっかけに、独立することを決意しました。

自身のキャリアを振り返って

振り返れば、学生時代に理想のキャリアを思い描いた時期をベースに、大きな社会変化によって修正した時期、組織で微修正した時期という、3つのフェーズを経てキャリアを形成してきました。日本でもかなり少数のキャリアだと思いますが、必ずしも最初から思い描いていた訳ではありません。どの組織に所属したとしても、以下のことは全体実行していたと思います。

  • クライアントが本当に望んでいることを、深く深く理解する。

  • 必要に応じて、新しい組織を組成する。

  • クライアントの先にある、社会課題解決とのつながりを常に意識する。

santasでは上記のことを肝に銘じながら、プロジェクトに取り組んでいきたいと考えています。
今回の記事で、少しでもsantasのことを知っていただけたら嬉しいです。

■筆者
宮﨑 敦史 / Atsushi Miyazaki

慶應義塾大学大学院修了後、Speac、日建設計、Arupを経て2022年にsantas Inc.を設立。「クリエイティブ」「マネジメント」をコアスキルとして、主に建築・都市における企画、設計、プロジェクトマネジメント業務に従事。様々な専門家と協働し、社会に新しい価値を生み出すことを信念としている。また、学生時代から社会課題解決に関心を持っており、被災地での集会所計画、仮設食糧庫計画などのコミュニティ・エンゲージメント活動、環境建築に関する書籍の出版など、活動は多岐にわたっている。
https://santas-inc.jp/

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