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【Insight】建築業界でプロジェクトマネジメントからプロジェクトデザインの領域が生まれた理由

こんにちは。santas代表の宮崎です。
今回の記事は、建築業界におけるプロジェクト・マネジメント領域の変化についてです。
 
建築業界のプロジェクト・マネジメントといえば、巨大ビルを作るためのコンストラクション・マネジメントが主流でしたが、近年は建設を始める前の段階からマネジメントを行うこと=プロジェクト・デザインが求められています。

この記事では、何故そのような変化が起きたのか、時系列で説明します。本記事は建築業界の方はもちろん、何かをマネジメントしている業界の方にも共感頂けると思うので、ご一読頂けると嬉しいです。

初期のマネジメント=設計・施工のマネジメント

プロジェクト・マネジメントの誕生は諸説ありますが、一般的にはアポロ計画がきっかけだといわれています。1960年代は国内外で超高層ビルが建設され始めた時期です。

冒頭でも述べた様に、建築業界のプロジェクトマネジメントは巨大な建物をいかに高品質、効率的、遅延なく作るコンストラクション・マネジメントがメインでした。建設は長期にわたるため、他のプロダクトよりPDCAを回すことが困難ですので、設計事務所は大量の図面と模型製作を繰り返しながら、模型のスケールを徐々に上げて検討するプロセスが一般化されていきました。(このプロセスはとても面白いので、別記事でご紹介します)

一方で、大規模再開発を代表に、複数の機能を持つ建物に関しては、各施設の調整を行う役割が求められ、施工するためのマネジメントだけではなく、計画するためのマネジメントも求められるようになっていきます。この頃の、プロジェクトマネージャーは、クライアントの要望を調整することに専念していました。


2000年以降のマネジメント=イノベーションのマネジメント

2000年以降より市場の多様化が進み、企業は新しい方法で新規事業や技術開発に注力していきました。新規事業を生み出すための手法として他分野との協働が注目され、多くのオフィスでは、中心に広場の協働スペースが設けられ、社内外の方々がワークショップなどを通してコラボレーションする施設が増えていきました。

この頃から、企業は「新しい製品を作る→新しい価値をつくる」ことにシフトしていきました。その背景には、デザイン・シンキングの流行があったと思います。プロジェクトマネージャーはクライアントの要望と社会のニーズをつなぐファシリテーターとして活動することが多くなっていきます。


2010年以降のマネジメント=基盤のマネジメント

2010年頃になると、イノベーションの普及と合わせて、デザイン経営、エコシステムという言葉が出てきます。両者を端的に説明すると、デザイン経営とは企業経営にデザインの視点を入れることで新しい評価基準を持った経営戦略立案につなげる、エコシステムとは一つのきっかけが次々に好循環を生み出すことが成長のキーになるとの考え方です。

この頃から、デザインの対象は製品や価値にとどまらず、企業の在り方まで広がっていきます。その流れで、現在はパーパス(存在意義)を議論する企業が増えてきました。建築業界でも、建物の設計を行う前に、なぜ建物を建てるのか、から議論を始めることが増えている気がします。この、「なぜ?」を重視する潮流は、スペキュラティブ・デザインの影響があるのかもしれません。


プロジェクトマネジメントを行うためのプロジェクトデザインの出現

これまでお話ししてきた通り、建築業界のマネジメントは、当初のコンストラクション・マネジメントから企業や建物の存在意義や付加価値を考えるプロセスが膨れ上がり、プロジェクトを始めるまでの期間が増えました。

そのため、プロジェクトをマネジメントし始める前にどの様なプロジェクトを始めるべきかを検討するプロジェクトデザインの業務が認知され始めてきています。


santasの立ち位置

santasは建築領域のプロジェクト・デザインとプロジェクトマネジメントを強みとし、そこから派生して空間に関係する製品やサービスのデザイン・コンサルティングも担当しています。プロジェクト・マネジメントからプロジェクト・デザインに関する一連の流れを理解した上で、クライアントにとって最適なサービスを提供します。


■筆者
宮﨑 敦史 / Atsushi Miyazaki
慶應義塾大学大学院修了後、Speac、日建設計、Arupを経て2022年にsantas Inc.を設立。「クリエイティブ」「マネジメント」をコアスキルとして、主に建築・都市における企画、設計、プロジェクトマネジメント業務に従事。さらに、コミュニティ・エンゲージメント活動、環境建築に関する書籍の出版など、幅広く活動中。様々な専門家と協働し、社会に新しい価値を生み出すことを信念としている。

https://santas-inc.jp/

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