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鹿島槍天狗尾根遭難の報告書から学び取ったこと(原文)⑭

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫


(中略)
舟橋 これね。(写真を見ながら)暴風雪がずっと4日間続いているんだね。
(中略)
舟橋 捜索は毎日、毎日、一つずつ安心できるパーテーを派遣して、可能性のあるところを毎日少しずつ、全部つぶしていった。 6日たったら探すとこがなくなってしまった。 そこに結局晴れ間があって、雪庇の断層があった。 あれ以外にもう原因はない、結果はみんな一緒に下に落ちたなと、それが大体の経過ですよ。
小谷 いったい積雪の多い日本の山で、いつころからいつころに最大どのくらいの雪が降るのだろうかとか、それはこうだと大井さんが書いてくれていても実感としてないんだよ。 その場にいたものでなきゃ。
舟橋 小谷、君は5日間くらいもう暴風雪の中で過ごしたでしょ。 あそこの4人が樹林の中の斜面を登ってゆく写真があるが、入山時にはほとんど雪がないよね。 あれがどのくらい積もったのかね。
小谷 入山時はこういう写真のような状態の山ですが、3日後にはこの樹木が、枝先だけになってしまったほどです。 おおよそ3メートルほどだった。
舟橋 おそらくカクネ里の向こう側から風が吹いているわけだ。 卓越風はこっちからきているわけだ。 だからここに雪庇が垂れ下がるというのは判かるんだけれど、これじゃあまだ雪庇はまだできない。 これがどのくらい。 この尾根ならこうなるよな。 この地形からいったら確実に。
小谷 こっちはカクネ里側でこちらが曲がり沢側です。 こっちから吹きあげられていて、こっちからはこう来るから。
舟橋 曲がり沢はどっちだ。 こっちでしょ。
舟橋 テントはだいぶ上なんでしょ。
小谷 はい、ここからだいぶ上ですよ。
舟橋 ここまで降りてくる前にやられているんだな。
贄田 天狗の鼻の直下でしょう。
舟橋 直下だよ。 直下じゃなくては曲がり沢に落ちないよ。
(中略)
檜山 若い人の意見を聞きましょう。
永田 前の日に専修大学山岳部が降りて行ったじゃないですか。 それを見ていましたか。
小谷 僕は見ていたよ。 これくらいのラッセルだよ。(胸を指して)
(中略)
雪の降る量というものに、(デポまで行って帰ってくるのに)4時間もみれば大丈夫という安易な気持ちはあったかもしれない。 それが遭難の原因かどうかは分からない。 少なくとも私が降りてきたんだから。 非常に危険だったら降りてこられない。
芳賀 トレースあったんですか。
小谷 ありません。 ラッセルですよ。 尾根の形が変わるくらいの積雪ですから。

鹿島槍ヶ岳遭難究明座談会(2010年7月25日)議事録より抜粋②

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