Alinea Ep.0
次元の違う世界...
「世界で1番きつく、厳しい店はどこですか?」
インターンも終わり、The NoMadで毎週末働いていた頃、ふと、シェフに尋ねてみた。
NoMadのシェフ4人が口をそろえて
「Alinea(アリネア)だろう」
そう呟いた。
当時
ミシュラン3星
Worlds 50 Best Restaurant 6位
Elite traveler 世界1位
そんな事を当時は何も知らなかった。
オーナーシェフのGrant Achatz(グラント・アケッツ)がCIA出身なのも、どんな料理を出しているのかも知らなかった。
それでも、直ぐ様メールを送ってみた...
何も返事が返ってこない、数回送ってみたが返信がない。
埒があかない。
面倒くさくなった僕は、予約確認の番号へ直接電話をかけた。
電話を英語でするのは、かなり大変だ。
相手の表情が見えないから雰囲気で話を理解したりする事ができないから。
そう感じた僕は、自分の想いを伝えるだけ伝えてやろうと。
ただただ、研修させてくれと伝えた。
分かったと、「OK」の一言を聞き取れた事に安心し、夏休みを利用して1週間シカゴへ降り立った。
初めてのシカゴ。
バットマンが好きな僕には堪らない、ゴッサムシティのモデルの街。
着いた初日、住所を調べレストランへと向かう。
看板も何もない。示すのは黒い存在感ある建物と「1723」の数字のみ...
翌日、朝8時ごろ店の裏へと向かい扉をノックし開けて入った。
目の前を走る息の荒い料理人が通り過ぎようしていた、捕まえて研修しに来たと伝えると、切羽詰まった様子のままシェフを呼んできてくれた。
連れてこられた副料理長に話すと、今日研修生が来ると聞いていないと門前払い...
いやいやいや、聞いてようが聞いてまいが、準備万端で今目の前に来てるんだっと、(なんて自己中なやつだっと思われた事だろう)。
すると当時料理長のサイモンが出てきて、
「What’s your name? Ok, come on」
とロッカーへ案内され、コックコートに着替えキッチンへ入った。
「ガチャンッ!」(ドアが閉まる音)
「Don’t make any noise at all!」
先程のサイモンにいきなり静かに注意された。
この1週間の研修の間に知ることになる
アリネアのルール
・いかなる音も立ててはならない
・キッチンを歩いてはいけない
・何もしていない時間があってはならない
・私語厳禁 etc...
当時、総料理長のMike Bagale(ベーグル)と握手を交わし、研修中はLamb/Duck 86という料理の86個の付け合わせの持ち場に入ることとなった。
シェフ ベーグルは、アリネアのスペシャリテの1つでもある
「Edible Baloon(食べる風船)」の発明者だ。
キッチンへ入ると、20人ほどの料理人が全員血相を変えたように全力で走り、周りを押しのけるように働いていた。
なんて、殺気立った厨房だ...
営業中はもちろん、仕込み中、掃除中と一日中キッチンにいる間は全力で走り続けることとなる。
互いが互いを押しやり、チームワークとは真逆の現場だった。
研修中のアリネアの1日の流れ
AM7:00 キッチン➡︎仕込み
PM14:30 掃除
PM15:30 まかない
PM16:00 掃除
PM17:00 テイスティング
PM17:30 営業開始
AM24:00〜01:30 営業終了
AM01:00〜03:30 掃除
研修中は座ってまかないを食べることもできたが、あまりのキツさに研修中泊まっていたドミトリーへ戻ると死んだように眠りに落ちていった。
To be continued...
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