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映画『5回出会った見知らぬ2人』を観て、無条件の愛に包まれる!

人生で5回も偶然の出会いを果たした、とある2人の運命を描くショート映画『5回出会った見知らぬ2人』。

ただの”運命もの”の映画とは一線を画したこの作品の魅力について、物語の背景を読み解きながら、ほんの少し迫っていきたいと思います!


〈作品時間〉12:12
〈監督〉Marcus Markou
〈あらすじ〉ロンドンのATMで最悪な出会いをする男性2人。しかし、彼らの出会いはこれだけでなく、人生を通して奇跡的に5回も会うことになる。海外のメディアで取り上げられるなど、人々の感動を呼んだ友情の物語。

***


“アブドラ”とは

この映画の背景にある大きなテーマの一つは、偏見です。

冒頭の2回目の出会いでのシーン。

ATMの操作が遅いサミアに腹を立てたアリスターは、サミアが中東系の顔立ちをしていたために、イスラームに対する偏見を並べて侮辱します。

例えば「アブドラ」という言葉は、アラビア語由来の中東系男性名のことで、イスラーム圏では非常にポピュラーな名前となっています。

また、イスラム教徒が、過激派組織ISISのイメージによって、「暴力的」「悪い人」という誤った印象を持たれてしまうのは、現実世界でもそう珍しいことではありません。

つまりアリスターは、特定の人種(ここではアラブ系)に対する偏見や差別的な言葉を、見ず知らずの人物であったサミアに突拍子もなく押しつけたことで、彼を怒らせてしまったのです。

監督はこの映画について、「トランプ政権や英国のEU離脱後、偏見と不寛容が目に見える時代に、無条件の愛を感じてもらえる作品を届けたかった」と語っており、そうした監督の思いが、この2人の出会いにも込められているのではないかと言えます。


アリスターが突然ホームレス状態になってしまった理由

また、アリスターがホームレス状態になってしまったのも、この不安定な時代をよく表しています。

というのも、今だにホームレス問題は、映画の舞台であるイギリスでも深刻です。

だんだんとその数は減ってきているものの、特にコロナ禍においては、約5万人の人々が、失業と共に家を失ってしまったのだそうです。

サミアに採用を断られたことだけが原因であると一概には言えませんが、たった少しの出来事が、アリスターの状況を大きく一変させてしまったのは、間違いありません。

お互いの立場や状況が変わることによって、それぞれの反応や接し方が絶妙に変化していく様子をリアルに描写している点も、この映画の注目ポイントです。


あえて”語らせない”ということ

そして、この映画の大きな魅力は、登場人物たちに「あえて語らせない」ということ。

特にラストシーンでのサミーの笑顔は、観るものにいい”余白”を与えてくれます。

この映画が、「運命って素晴らしい!!」という言葉だけで語りきれないのは、こうした見事な演出と、互いの関係性にあるのではないでしょうか。

良くも悪くも、「されたこと」をお互いに覚えていたり、お互いに覚えていなかったり。

決して、会うたび会うたび、「また巡り会えたんだ!」とならない2人の関係性は、もどかしくもあり、奥ゆかしくもあり、そしてまさに美しい「無条件の愛」の連鎖なのです。


私たち人間は、いかようにも変わり続けることができる一方、変わらない大切なものを持ち続けることもできる…

映画『5回出会った見知らぬ2人』は、そんな風に思わせてくれる、温かくて優しい、素敵な映画です!

ぜひご覧ください!

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