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ー4年越しに奪われた家族関係・・・そしてその代償に心を抉られるー映画『アウトサイド』

生きていく上で欠かすことができない人間関係。しかし、全ての人間関係が決してうまくいくとは限らないもの。むしろ、うまくいかないことが多いかもしれません。

私たちは、たくさんのコミュニティーの中で日々生きています。家族や仕事関係、趣味の輪や社会人サークル、大学や高校のクラスなどコミュニティーに属さない人はいないでしょう。

その中でも、必ず起こる人間関係の複雑化。関係の深さに偏りが生じたり、時には恋心が生まれたり。年月が経つにつれて、コミュニティー内の人間関係は複雑になっていくものです。

今回ご紹介する映画『アウトサイド』では、そんな家族のコミュニティーで生まれた複雑な人間関係を描いた物語。

4年間の服役を経て帰ってきた主人公・イーサン。久しぶりに家族の元へ帰るも、受け止めきれない事実がイーサンを襲う・・・。
修復困難となってしまった家族関係を描きます。

映画『アウトサイド』の魅力を深堀りです。
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<作品時間> 23分26秒
<監督> Brad Tucker
<あらすじ>
4年間の服役を経て出所したイーサン。最初に向かった場所は、父親が経営する車の整備屋。弟のダレンとの再会に目を光らせるのだった。

そんな新たな生活が始まろうとしていたイーサンに、衝撃の事実が降りかかる。それはイーサンの恋人がダレンと婚約をしていたこと。その事実をダレンから聞かされたイーサンは驚きを隠せずにいた。

それでも、4年で大きく変わってしまった現実を受け入れようとするイーサン。弟や元恋人とも変わらずに接するのだった。

しかし、3人の関係はもっと暗闇へと進んでいく。弟と約束したバーに向かうイーサンの元にやってきたのは、服役の原因となった裏社会の男たち。これ以上関わらまいと男たちを突き放すのだが、ダレンも男たちと関わっているという驚きの事実を耳にする。

やがてダレンを守るため、男たちと対面することになったイーサン。
そこで、最悪の決断を迫られる・・・。

◎4年越しに生まれた人間関係を描く

4年越しの再会に期待をしていたイーサン。しかし、その期待は大きく裏切られることになります。この映画のテーマともなる『人間関係』。

それは自然と複雑になってしまうものです。イーサン、ダレン、レイチェル、そしてイーサンの家族にどんな思いが隠されているのでしょうか。

4年越しの家族と会って感じるイーサンの気持ちは?
兄を裏切ってまで恋人と婚約をする弟の真意は?
ダレンへ婚約を求めたレイチェルの思いとは?
服役から帰ってきたイーサンを見た父親の気持ちは?

それぞれの思いが交差して生まれる複雑な感情。それぞれのキャラクターの裏側に隠された思いに注目です。

そして、複雑な人間関係が原因で起こってしまった衝撃の結末。なぜイーサンはダレンの肩代わりをすることにしたのでしょうか?


◎イーサンの心情

4年越しの日常生活を送るはずが、真逆の結末をむかえてしまったイーサン。彼は一体どのような人物なのでしょうか?

イーサンの性格を象徴するのが『思いやり』です。

麻薬の売人に手を染めたとはいえ、悪に手を染めることは決して望んでいなかったと考えられます。その理由の一つに家族の生活状況があります。

4年後に帰ってきた時も、家族の生活はやっと生きていけるほど。経営する車の整備屋も、ダレンが業績は右肩下がりと言っていました。さらに、イーサンは保護観察官との会話で「犯罪は生活のためだった。」と打ち明けています。

おそらく犯罪に手を染めざるおえなかったのは、自分のためだけでなく、レイチェルや家族の為でもあったはず。

その思いやりは別のシーンにも表れていました。象徴していたのは、刑務所に出る時に返してもらった写真。少なくとも、イーサンは4年間レイチェルのことを思い続けていた事がわかります。

そんな良心深い人間・イーサンに待ち受けていたこと。
それが『疎外感』です。

刑務所から出てきた時、イーサンは家族こそが自分にとっての居場所だと思っていたでしょう。

しかし、待っていた2つの出来事。
一つは、弟のダレンが恋人のレイチェルと婚約をし、妊娠までしていたこと。
もう一つは、父親のイーサンに対する態度。
ダレンとレイチェルを慕い、イーサンには冷たい態度をとっていたこと。

もうすでにイーサンにとっての居場所がなくなっていたのです。
この事実こそ、ダレンの肩代わりをした行動につながってくるのがわかります。


◎なぜイーサンは弟・ダレン肩代わりをしたのか?

最後のシーンはとても印象的でした。
レイチェルをダレンに奪われたはずのイーサンが、ダレンの罪を肩代わりする結末でしたね。

この行動の理由には、イーサンの感じている『疎外感』が大きな鍵を握っています。言い換えれば、この家族に自分の居場所がないと悟っていたのでしょう。

仮に、ダレンがそのまま刑務所に入ると考えてみましょう。
果たして、イーサンはこの状況で家族と幸せに暮らせるでしょうか?

会社の経営をダレンに任そうとしていた父親。
さらには、家族も喜んでいたダレンとレイチェルの婚約。
そして2人の間に生まれてくる子ども。

イーサンがこの家族に残って安心できる要素はなさそうです。

もちろん、前半に述べた『イーサンの思いやり』も肩代わりをした行動の理由になりと思います。おそらくダレンとレイチェルの幸せを願っての行動ともいえるでしょう。

しかし、真の目的は自分の求めた居場所のため。

家族(内側=インサイド)を選ぶのか、刑務所(外側=アウトサイド)にするのかの選択。

イーサンが選んだのは刑務所、つまりはタイトルにもあるアウトサイドだったということです。


◎ダレンの状況

これまではイーサンの視点でストーリーの考察をしてきましたが、ダレンや家族の心情はどうだったのでしょう?

特に気になるのは、ダレンがレイチェルと婚約をしたことです。最も気になるのは『あらかじめイーサンの恋人だとわかっていた』という部分。

その秘密は、空白の4年に隠されていると考えられます。
今回の映画では、イーサンが刑務所にいた4年間の家族の姿は全く描かれていませんでした。

しかし、様々なシーンから「家族がどんな4年間を過ごしていたのか?」を明らかにする事ができます。

ポイントになるのは家族の生活の変化です。

先ほども述べた通り、イーサンの家族は満足できていませんでした。おそらく4年前は、男3人で業績の悪い車整備屋で生計を立てていたと考えられます。

しかし、突然のイーサンの刑務所入り。さらには父親の年齢に伴う体調不良。残されたダレンはたった1人で会社を経営していたことがわかります。

その状況で、ダレンの大きな支えになっていたのがレイチェルの存在。

一方で「本当にイーサンのことを思うならば、兄の恋人とわかった上で婚約できるのか?」と考える人もいるかもしれません。

しかし、この家族の現状はただの貧乏でない。両親も頼りにできず、会社を1人で支え、わざわざ犯罪に手を染めなければいけないほどの苦しさ。兄を思うほどの余裕はなかったと考えるほうが良いかもしれません。

どれだけ絆の深い人間関係を築くことができていたとしても、未来のことは誰もわからない・・・。

あなたも、今ある人との信頼関係を大切にして生きてください。

そんなことを思わせてくれる、深く切ない物語です。

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<映画ライター/ shuya>

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