N国党・立花孝志と衆院静岡4区補選 ③

N国党・立花孝志と衆院静岡4区補選 ②」の続編です。
2020年04月14日告示、04月26日投開票の衆院静岡4区補選の完結編です。
本記事では、衆院静岡4区補欠選挙の投開票の成り行きと結果、及び、同日投開票が行われたN国党の3つの地方選挙、N国党 関係先への家宅捜索以後の選挙も含め、今後の展望等を見ていきたい。

静岡では、自民党の望月義夫元環境相の死去に伴う衆院静岡4区補欠選挙が行われた。立候補者は下記の4人。
無所属 元会社役員 山口賢三 氏(72歳)
無所属 元東京都議 田中健(42歳)[ 野党統一候補 ]
自民党公認 元静岡県議 深沢陽一 氏(43歳)
N国党公認 元江戸川区議 田中健(54歳)

投開票の26日までに放送されたNHKや民放でのN国党 政見放送については、ちだい氏(選挙ウォッチャー)が詳しく解説されているので、そちらをご覧いただくのが良いだろう。選挙自体の考察についても、モンキーポッドよりも「ちだい氏」が専門なので、「ちだい氏」の他のレポートも合わせてご覧いただくことをお勧めする。
▼ ちだい氏(選挙ウォッチャー)のレポート N国党 政見放送関連
衆院補選2020・静岡4区事前レポート(前編)
衆院補選2020・静岡4区事前レポート(後編)

衆院静岡4区補選、同姓同名の行方

案分票の行方が懸念される中で行われた衆院静岡4区補選は、結果、自民党公認 深沢陽一 氏が勝利して幕を閉じた。各得票は下記の通り。
自民党公認 深沢陽一 氏:66,881票(当選)
無所属 田中健 氏:38,566票(内案分約3,550票)
無所属 山口賢三 氏:1,887票
N国党公認 田中健 氏:1,747票(内案分約157票)
投票率:34.10%
「田中健」の区別不能票:3,708票(上記案分票)

当初の立花氏の予想では、「案分票(区別不能票)は4,000票くらい出ると思う」としていた。その点は当たらずとも遠からずであるが、肝心の個別得票に関しては大きく予想を外れた様子だ。立花氏は、N国党 田中健氏の個別得票は約4,000票前後(プラス案分票での上積み2,000~4,000票)と予想していたようだが、蓋を開けてみると、実際には大きく下回ってしまっていた。

大手メディアの報道でもこの件は取り扱われた。「同姓同名の選挙」であったが、特に大きな混乱は無かったと報じられた。

さて、選挙自体の考察などは専門の方にお任せして、モンキーポッドでは立花氏の思惑や戦略、そしてその周りのN国党関係者の動きに注目したい。

衆院静岡4区補選の開始前、立花氏はこう言っていた。「選挙運動はしません。田中健の同姓同名が出てることも知らずに名前だけで投票する人はバカです」確かに、立花氏の言うことにも一理はある。しかし、無所属 田中健氏やその陣営スタッフ、そしてN国党のやり方に異を唱えるモラリストたちの働きにより、「無所属 田中けん」「田中けん42才」の周知は大きな規模で行われた。それは静岡4区に止まらず全国に響いたと言っても過言ではないだろう。結果として立花氏の言う「バカな人」は、投票者全体の僅か約3%(「田中健(両名)氏」に限ると約9%)に止まった。「田中健(両名)」氏の票だけを見ると、約10人中に1人いるかどうかという数字である。

これは、今後の選挙や政治全体を見るとかなり良い傾向であるように思う。
少なくとも「選挙に行く」意識のある有権者には、立候補者や支持者たちの声が概ね届いているということだ。今回の同姓同名選挙で、それがある程度立証されたと見てよいのではないだろうか。

反N国党の活動を続けるモラリストたちの中には、N国党 立花氏や党関係者への糾弾だけでなく、界隈外部の第三者への語りかけを重視する者も少なくない。今回、”それは届き得る”、と、ある程度の数字として示されたと言って良いだろう。立花氏曰く「実験」としての立花氏自身の得た成果は不明であるが、一般の有権者やモラリストたちの視点からでは、図らずもこの「実験」から得られた成果は決して悪いものではなかったように思う。
(「実験」そのものを肯定するわけではない)

だが、国全体の問題としてはまだ「選挙に行かない人々」への訴えをどう届かせるか、それはまだ未解決であるが、今は触れずおこう。

そして今回の「同姓同名の選挙」で私が気になっていたのは、”立花氏の戦略”に対するN国党 関係者の対応である。

「田中健」氏擁立当初から立花氏は、「選挙運動はしない」「目立たないことが作戦」と言っていた。しかし、N国党関係者の中には、ツイッターアカウントの名前で「N国党 田中けん 54才」とする者や、「”田中けん 54才”とお書きください」などと広報する者が多数見られた。おかしな話である。
「目立たない」という党首 立花氏の戦略を、「素晴らしい!」「さすが立花さん!」と賞賛していた者たちが目立つような行為をしていたのだ。立花氏の戦略や実験の是非はともかく、その意図を全く理解せずに賞賛し、褒め称えている様が鮮明になっていたのである。その様子を私は、苦笑いと混乱の入り混じる心境で黙って眺めていた。
その状況を察したのかどうかはわからないが、立花氏自身も、投票日前日には同様の呼びかけを行ったのである。

インターネットの中のN国党界隈では、党関係者や支持者を指して「信者」と呼ばれることが多々見受けられる。宗教の話題ではないところで使われる「信者」とは、「盲信する者」の意として使われるのが一般的だが。もし、心当たりが有り、そう呼ばれることを良く思わないのであれば、もう少し自分自身でよく考え、理解する努力をされたほうが良いように思われる。
そしてその思考がいずれ、立花氏の言動と行動、N国党のありかたの是非にまで到達してくれることを切に願う。

N国党 3つの地方選挙

2020年04月26日同日、衆院静岡4区補選投開票の裏で、N国党関係で3つの地方選挙の投開票も行われていた。結果は下記の通り。
兵庫県 丹波篠山市議会議員選挙 N国党 大久保祐太氏 落選
京都府 京丹後市議会議員選挙 N国党 尾瀬健一郎 落選
岡山県 倉敷市長選挙 N国党 越智寛之 落選

衆院静岡4区補選の投開票速報に合わせて、立花氏はライブ配信をおこなっていた。立花氏は、あまりの得票の少なさに落胆を隠せずにいた。「コ口ナの影響で投票率が低い状況では仕方ない」としながら、立花氏自身とN国党の人気低迷についても自覚はあるような発言も漏らしていたのだ。

この3つの地方選挙については、所謂”梅選挙”(N国党の売名と公金ビジネスのための選挙)とされていたようだ。そのため、最低限の選挙運動以外の表立った動きは無く、特に目立った問題も起こらなかった。
落選前提の選挙であったためか、落選そのものについては立花氏や各立候補者に落胆は見られなかったが、彼らが落胆したのは、先にも記述した得票の少なさである。兵庫県丹波篠山では供託金の回収には成功したものの、京都府京丹後・岡山県倉敷では散々な有様であった。

04月26日に投開票を控えた前日25日、ツイッターの界隈内ではちょっとした騒動が起こっていた。その件に関して詳しくは「N国党・立花孝志 vs モラリスト ⑤」をご覧いただきたい。

3つの選挙ともに落選であり、問題かと思われる点もすでに別記事で扱っているため、本記事でこの件に触れるのは上記の報告程度にしておこう。

家宅捜索以後、不戦勝1・他全敗

2020年03月14日に行われた警察によるN国党関係先への家宅捜索以後、N国党からの立候補者があった選挙は9つ。(無投票の埼玉県志木市議選を除外してモンキーポッドで把握しているものに限る)
家宅捜索以後続いていたN国党関連選挙も、2020年04月26日の投開票をもって一段落となった。過去のモンキーポッド記事の紹介と合わせて振り返ってみたい。

告示日:2020年03月29日 投開票日:2020年04月05日
広島県 福山市議会議員選挙 N国党 加陽輝実氏 落選
N国党・立花孝志 vs モラリスト ③:広島県福山市議会議員選挙」で取り上げた。「集会自粛要請の中での花見」や「予備校前演説騒動もどき」などもあり、立候補者やボランティアたちのそれまでの苦労を水泡に帰した立花氏の振る舞いは忘れられない。

告示日:2020年04月05日 投開票日:2020年04月12日
埼玉県 志木市議会議員選挙 N国党 古谷孝 無投票当選
埼玉県 坂戸市議会議員選挙 N国党 石川新一郎氏 落選
埼玉県 坂戸市長選挙 N国党 尾崎全紀氏 落選
N国党・立花孝志 vs モラリスト ④:埼玉県坂戸市の選挙と、モラリストたちの想い」で取り上げた。立花氏は「厳しい」という事前評価を下していたが、立候補者やボランティアは総戦力で望んでいた。しかし、選挙期間中に”立花氏の刑事事件での起訴”が行われたことも影響してか、脆くも惨敗となった。

告示日:2020年04月12日 投開票日:2020年04月19日
富山県 魚津市議会議員選挙 N国党 谷口隆司氏 落選
鹿児島県 鹿児島市議会議員選挙 N国党 最勝寺辰也氏 落選
N国党・立花孝志と新型コ口ナウィルス」と「N国党・立花孝志 vs モラリスト ⑤」で取り上げた。鹿児島市議選では、影武者選挙運動を実行していた。新型ウィルス感染による緊急事態宣言の中で各地からN国党関係者が集まったことに批難も多かった。予想を超える得票であったが、当選には至らなかった。

告示日:2020年04月19日 投開票日:2020年04月26日
兵庫県 丹波篠山市議会議員選挙 N国党 大久保裕太氏 落選
京都府 京丹後市議会議員選挙 N国党 尾瀬健一郎氏 落選
岡山県 倉敷市長選挙 N国党 越智寛之氏 落選
静岡県 衆院静岡4区補選 N国党 田中健氏 落選
本記事の一章、及び二章である。

こうして並べて見てみると、不思議な現象に気付く。
おそらく、立花氏的には全て当選目的の選挙ではないのであろうが、中には当選を目指して立候補者やボランティアが奮闘している選挙もあるのだが、なぜか必ず身内から水をかけられているのだ。意図せずタイミング的にそうなってしまったものや、結果的にそう見えるものもあるにせよ、頑張る者とそれを邪魔する者が同じ組織にいるという図式である。しかしそれは、特に対立している者同士だからというわけでもなく、頑張った者が結果的に足を引っ張ることになっている。というなんとも奇妙な光景なのだ。

これまで続いてきたこの奇妙な現象も、N国党副党首 地方担当という役職が新たに設けられたことにより、改善の兆しを見せるかもしれない。

2020年04月15日、N国党副党首 地方担当に就任した現千葉県柏市議会議員 大橋昌信氏は、「梅選挙(公金目的ビジネス選挙)は頑張るな」と言う。
この言葉の真意は、供託金さえ返ってくれば公金ビジネスで党は儲かるのだから、無理に頑張って立候補者や党の人間を疲弊させるな。そして問題を起こすな。ということだと思われる。上記で述べてきた点を考慮するならば、この言葉は的を得ている。しかし、直近までの選挙結果を見る限り、頑張らずして供託金変換もまた至難の業なのである。

そんな中で立花氏が示した方針は、「地方議員は増やさない」であった。
一連のN国党選挙ラッシュが終わり、その惨状がさすがに堪えたのか、自身とN国党がどう見られているかにようやく気付いたのか、それはわからないが、「インターネットでの発信で党勢拡大を計っていく」とした。

しかし、インターネットの中には多くのモラリストたちもいる。実社会では大手メディアも問題が起これば取り上げる。そして何より、モラリストたちの放った矢が届くのは、まだこれからが本番なのだが。

人心離れ、それぞれの選択

ここ約2ヶ月間に渡るN国党の選挙ラッシュを終え、落ち着いてインターネット内の界隈を見渡すと様々な変化が見られる。まず目に付くのは、やはり相当数の支持者離れだ。先の参院選以降、「党勢拡大だ!」と声を上げ応援をしていた者たち、「既得権をぶっ壊せ!」と期待を寄せていた者たち、多くの支持者たちから落胆の声が漏れていた。

一連の選挙ラッシュの中には、「絶対に落とせない選挙」と銘打って背水の陣で望んだ立候補者も数人いたという。選挙戦の最中は当事者たちは無我夢中であっただろう。そしてその姿に感銘を受けた支持者もいたはずだ。しかし結果は全敗。世論の厳しい判断を受け入れる以外に選択肢など無く、意気消沈し落胆する気持ちもわからなくはない。その落胆した者たちの持っていた期待の裏返しなのだろうか、(元)支持者たちの中から、立花氏やN国党の批判をし始めてしまう者が出てきたようだ。

支持者が支持をやめ、批判する者となったなら、発する言葉はアンチのそれと変わらない。つまり、反N国党のモラリストたちと同様の言葉を発し始めたのだ。誰が何を言おうが、度が過ぎない程度であれば気にも留めることはない。しかし、このケースは見過ごしておくことはできない。

今、立花氏やN国党の批判を始めた彼らの言葉は、以前よりモラリストたちが訴え続けてきた言葉そのものである。それを無視し続け、ときに反発し、自己肯定を繰り返してきた末の結末なのだ。まず彼らがしなければならないのは、期待に添わなかった立花氏やN国党への批判ではない。彼ら自身がなぜ今までそれに気付けなかったのかという自身の反省ではないのか。その反省無くして、(元)支持者の彼らもまた、他者から認められることは無いと知らねばないらないだろう。

立花氏や新副党首に就任した大橋氏においても、「N国党は変わらない」「これまで通り目標に向かって進んでいく」としてはいるものの、党関係者の中には「迷走している」と本音を漏らす者もいる。次期衆院選挙を見据えてとは言うが、現状の支持率低下、N国党に対する世論の定着、今後控えている立花氏の刑事裁判など、悲観材料を払拭する具体案は示されていない。
これでは、支持者が見限っていくのも当然と言える。

そもそも、いつモラリストの矢が届くかもしれぬ状況の中で、無事に次期衆院選を迎えられるかどうかも不明なのである。立花氏も、党関係者も、残った支持者たちも、今一度冷静に、立花氏(自身)とN国党のおかれた状況をきちんと精査し、これまで行ってきた違法・不法・非人道的な行為を釈明も謝罪もせぬまま通せるのかも合わせて熟考されることを望む。

立花氏とN国党関係者や支持者に至るまで、彼らの最大の過ちは、「目的で手段を正当化してきた」ことだ。その手法は有権者に周知され、世論として選挙結果で「否」が示されている。その事実を真摯に受け止めてほしい。
もうあと何度、いつ来るかもわからない、ここがターニングポイントだ。


N国党・立花孝志と衆院静岡4区補選 ③ (終)
衆院静岡4区補選シリーズ (完)


モンキーポッドとしましては、主立った出来事を中心に、世に周知する必要があると思われることについては、引き続き活動を行っていく所存です。

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