ソルティはかた

ヒト年齢50歳超えたオス猫。ブログ「ソルティはかた、かく語りき」で、映画・本・音楽・落…

ソルティはかた

ヒト年齢50歳超えたオス猫。ブログ「ソルティはかた、かく語りき」で、映画・本・音楽・落語・芝居・能・登山・仏道修行・介護・福祉・ボランティア・デモ行動・家庭菜園・性などを勝手気ままに論じている。http://blog.livedoor.jp/saltyhakata/

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最近の記事

第4幕 第3場 竹取の翁の家

(PDFファイルにより縦書きでも読めます) 暗転の間、読経が続く。ゆっくりと天へと向かう月。 中天に達すると、青白い光が舞台に満ちる。 庭の侍達、家の中の帝、翁、媼、静寂のうちに眠り込んでいる。 フクロウの声。 中臣、登場。 中臣   ( 舞台を見回して)面白い芝居が見られるというのでこうして来てみれば、何のことはない。役者どもがアホ面並べて居眠りときている。これじゃ月の奴らにすすんで協力しているも同じ。てんで物語(ハナシ)になりゃしない。 どら、ここは一つ。

    • 第4幕 第1場 宮中の某所

      (PDFファイルにより縦書きでも読めます) 夕暮れ。背景の空が朱い。 帝、武装した高野の大将より報告を受けている。 大将  仰せのとおり、左右の近衛(このえ)、左右の衛門(えもん)、左右の兵衛(ひょうえ)の六衛府より、併せて二千の兵を集めましたほか、都中の検非違使(けびいし)より剛(ごう)の者五百を選びより、竹取の邸(やかた)に遣わしております。 この二千と五百の兵を五つに分けまして、邸の東西南北をそれぞれ五百ずつで固め、残る五百を廷内にくまなく配置し、十全に警戒させ

      • 第3幕 第2場 竹取の翁の家

        (PDFファイルにより縦書きでも読めます) 三日月。虫の声。 後ろ姿のかぐや、縁で泣き伏している。 翁、媼、奥より登場。媼、盆を手にしている。二人戸口からそっとかぐやの様子を窺い、顔を見合わせる。媼、自分に任せてくれと翁に仕草で示し、座敷に入ってくる。 かぐや、二人に気づいて身を起こし、居ずまいを正す。 媼  ( 盆を下に置き、座って)かぐや。こっちへ来て一緒にウリでもお食(あが)り。残暑続きとはいえ、やはりもう秋。夜気は体に障りますよ。 かぐや  ( 振り向かず

        • 第3幕 第1場  竹林

          (PDFファイルにより縦書きでも読めます) 夜。 竹林を照らす望月。フクロウの声。 中臣  ( 舞台外から)おーい、おーい。大君さーん。聞こえますかあ? 聞こえたらご返事を。おーい、おーい。 ( 辺りを見回しながら登場)ダンナあ、どちらですかあ? もしもーし。 ( 舞台中央へ)チェッ。はぐれてしまった。言わんこっちゃない。とっとと馬に乗っけて連れて帰れば良かった。 だいたい時の帝が先払いも護衛もなしに、女のところに通うっつーだけでも前代未聞のことだのに、「今宵は月

        第4幕 第3場 竹取の翁の家

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        • 戯曲 かぐや 第4幕
          3本
        • 戯曲 かぐや 第1幕
          2本
        • 戯曲 かぐや 第2幕
          4本
        • 戯曲 かぐや 第3幕
          2本

        記事

          第2幕 第4場 宮中の一角

          (PDFファイルにて縦書きでも読めます) 真っ暗な舞台に読経の声。 それがだんだんと嵐の音、波の音に変わっていく。 船のきしむ音、雷鳴、そして人の声。 人の声1  皇子、無茶です! お止めください! 空が怒っておりまする。海が怒っておりまする。あの龍は神の使い、逆らえば必ずや神罰が下りましょう。 人の声2  みな、早く綱を取れ! どこでも良い。おのれを船に結いつけるのだ。さあ早く! 波に呑まれるぞ! 皇子、早くこちらへ。帆柱におつかまりください。 人の声3  おお

          第2幕 第4場 宮中の一角

          第2幕 第3場 竹取の翁の家

          (PDFファイルにで縦書きでも読めます) 冬。雪の降り積もりたる午後。 座敷に翁、媼、石上の中納言が火桶を囲んで談笑している。中納言の傍らに朱塗りの箱が見える。 かぐやの気配が御簾を透かして窺える。(御簾の下より出し衣) 媼  さあさあ、中納言さま。もっと火のそばにお寄りくださいませ。お寒うございましょう。 中納言  いや結構。かぐや姫のお側にいるというそれだけで、この身はカッカと燃えておりますからな。( 扇であおぐ) しかも私め、火の山から戻ったばかり。全身に浴び

          第2幕 第3場 竹取の翁の家

          第2幕 第2場  闇

          (PDFファイルにて縦書きでも読めます) 一条の光の中、夢円法師たたずむ。 夢円  ( 大音声でいかめしく)この世は夢。この世は幻。形あるものはすべていつわり。形と影を持ついかなるものも時の仕打ちには勝てぬ。いつしか煙と失せ塵と消えるが世のならい。一体、永遠でないものが真実と言えようか。泡のように儚いものを後生大事に抱え、失うことにおびえ、壊れたことに憤り、還らぬことを嘆く。あるいはまた、おのれが依然所有せざることを悶々と恨む。形に頼れば心は形に支配される。影を追えば人は

          第2幕 第2場  闇

          第1幕 第2場 竹取の翁の家

          (PDFファイルにより縦書きでも読めます) 同夜。月、天頂に達す。 座敷に竹取の翁、媼(おうな)、五人の求婚者、酒や料理を前に談笑している。 侍女たちが給仕している。 座敷の一隅は、客席からは御簾で、求婚者たちからは屏風で隠されている。(後にここにかぐやが入る) 家の外には透垣(すいがい)がめぐらされ、裏手 に築地(ついじ)、その向こうに竹林が見える。 媼  それでは大伴の大納言さまが優勝されたのでございますか? 大納言  ええ。今日は運がついておりました。(双

          第1幕 第2場 竹取の翁の家

          第4幕 第2場 竹取の翁の家

          (PDFファイルにより縦書きでも読めます) 宵の口。 上手に一間、奥へと続いている。中央と下手は庭。前栽、置き石などが見える。舞台後方に築地(ついじ)、その向こうは竹林。 庭の部分にスポットが当たっている。庭では、翁、高野の大将はじめ侍達が数名、ものを食いながら談笑している。築地(ついじ)の上にも侍の姿。侍女たち、給仕している。 犬の鳴き声。 竹林にかかる――望月。 侍A  おおい、こっちにも茶をくれないか。 翁  はい。ただいま。( 侍女を指図する) 侍B 

          第4幕 第2場 竹取の翁の家

          第2幕 第1場 宮中(庭に面した庇の間)

          (PDFファイルにより縦書きでも読めます) 秋の午後。 舞台手前は広い庭。紅葉したる木々が左右に立つ。 奥は寝殿作りの建物。勾欄のついた簀の子縁に、貴族四人( A・B・E・F)、女房二人( C・D)が、庭に下りる中央の階段の両側に居並んでいる。( 階段をはさみ中央より右方にACE、左方にBDFの順)。彼らは、今しも庭で行われている童子達のケマリを眺めている。御簾の上がった庇の間には御椅子、今は空いている。一通りケマリがなされ、見物人の拍手喝采のあと、童子達は一礼して退場

          第2幕 第1場 宮中(庭に面した庇の間)

          第1幕 第1場 宮中の一角

          (PDFファイルにより縦書きでも読めます) 心にもあらでこの世にながらへば  恋しかるべき夜半の月かな 春の宵。満月。 舞台奥に帝。客席に背を向け縁に座り、月を眺めている。縁の先に、満開の桜、ときおり散っている。舞台下手より続いている板塀が、桜の幹を客席よりさえぎっている。 舞台外より中臣の唄が近づいてくる。  中臣  ひさァかたのォー、ひかァりのどォけき、春の日に(下手より登場)、アア春の日に、しづゥごころォーなくゥ、花の(桜を見上げ、手にしている扇で下から扇ぐ

          第1幕 第1場 宮中の一角