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戯曲 かぐや 第2幕

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第2幕 第1場 宮中(庭に面した庇の間)

第2幕 第1場 宮中(庭に面した庇の間)

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秋の午後。

舞台手前は広い庭。紅葉したる木々が左右に立つ。

奥は寝殿作りの建物。勾欄のついた簀の子縁に、貴族四人( A・B・E・F)、女房二人( C・D)が、庭に下りる中央の階段の両側に居並んでいる。( 階段をはさみ中央より右方にACE、左方にBDFの順)。彼らは、今しも庭で行われている童子達のケマリを眺めている。御簾の上がった庇の間には御椅子、今

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第2幕 第2場  闇

第2幕 第2場  闇

(PDFファイルにて縦書きでも読めます)

一条の光の中、夢円法師たたずむ。

夢円  ( 大音声でいかめしく)この世は夢。この世は幻。形あるものはすべていつわり。形と影を持ついかなるものも時の仕打ちには勝てぬ。いつしか煙と失せ塵と消えるが世のならい。一体、永遠でないものが真実と言えようか。泡のように儚いものを後生大事に抱え、失うことにおびえ、壊れたことに憤り、還らぬことを嘆く。あるいはまた、おの

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第2幕 第3場 竹取の翁の家

第2幕 第3場 竹取の翁の家

(PDFファイルにで縦書きでも読めます)

冬。雪の降り積もりたる午後。

座敷に翁、媼、石上の中納言が火桶を囲んで談笑している。中納言の傍らに朱塗りの箱が見える。

かぐやの気配が御簾を透かして窺える。(御簾の下より出し衣)

媼  さあさあ、中納言さま。もっと火のそばにお寄りくださいませ。お寒うございましょう。

中納言  いや結構。かぐや姫のお側にいるというそれだけで、この身はカッカと燃えて

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第2幕 第4場 宮中の一角

第2幕 第4場 宮中の一角

(PDFファイルにて縦書きでも読めます)

真っ暗な舞台に読経の声。

それがだんだんと嵐の音、波の音に変わっていく。

船のきしむ音、雷鳴、そして人の声。

人の声1  皇子、無茶です! お止めください! 空が怒っておりまする。海が怒っておりまする。あの龍は神の使い、逆らえば必ずや神罰が下りましょう。

人の声2  みな、早く綱を取れ! どこでも良い。おのれを船に結いつけるのだ。さあ早く! 波に

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