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みんなのフォトギャラリー画像をご使用いただいたクリエイター様方の記事集。 ✱ 度々写真をご使用くださっているフォロワーの皆様方には、心より感謝しておりますm(_ _)m ※最新記…
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#小説

ショートショート『筆触分割』

ショートショート『筆触分割』

 雨粒がハーバーランドを走る僕の腕を濡らしたのは、折り返し地点と決めていた塔のオブジェの手前あたりにさしかかったころだった。
 澄んだ闇の中を遊覧船が優雅に進んでいる。夜の街は光るネオンの引き立て役に徹していた。
 はぐれたような雨粒はやがて神戸の空と同じ幅の束になった。カラーボックスの奥から引っ張り出してきたサイズの合わない運動用のTシャツは雨を吸って上半身のラインをなぞった。水滴を拭うためにメ

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何かあったのか劇場!(リターンズ)

何かあったのか劇場!(リターンズ)

この物語りはフィクションです。

でも、もしかしたら実話かも(どっちでもええわ、興味あらへんわ)

序章

ヒマです。

お仕事中、椅子とお尻が仲良しになって2ヶ月余りが経ちました。

お風呂に入った時に尾骨の辺りがヒリヒリするのは、きっと椅子に座り過ぎてできた床ずれの初期症状と思われます。

症状が悪化しないうちにお仕事増やしてもらって椅子とはできるだけ早いうちにお別れしたいです。

わたしは、

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名前のない書物(第十三回)

名前のない書物(第十三回)

図書館5、
 

 ぼくが行く場所は、図書館しかなかった。
 

 エントランス・ホールのベンチに座っていると、〈図書館警察〉がやってきた。前回と同じ、ブルーの制服を着たロシア系の警官だ。
「通報がありましてね」
 赤ペンの声は、例によって事務的な響きがした。
「あなたが、その、またもやここで粘っていると言われまして」
 ぼくは、貸出カウンターの図書館員たちをふりかえった。心なしか目をそらされ

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ヤスハラチヂミのお仕事日記(創作)

ヤスハラチヂミのお仕事日記(創作)

こんにちは。ヤスハラチヂミでございます。
1か月ぶりにウェブログを更新致します。

昨年、食の総合誌『月刊・ヴィミ』編集長の席を降りましたが、その後も様々なお仕事を賜っております。心より感謝申し上げます。

くつろぎの切り株に腰掛けつつ、雌の子ヤギを撫でる時間が増えたのは確かですが、それでも社会が私を手招きします。有難いことでございます。
最近の取り組みを以下紹介致します。

フードライターとして

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引越物語⑫うさぎと懸賞マニア

引越物語⑫うさぎと懸賞マニア

「今朝の8時に届いてたみたい。」
noteからキャンペーン当選通知が来て、わたしは朝からご機嫌だった。

スマホの画面を義妹の菜摘に見せる。
「なんぷーん?」
いつもの不思議な質問攻めが始まる。内容ではなく、正確な時間や場所を知りたがるのだ。そして、聞いた途端に興味を失ってしまう。

「凪ちゃん、ほんまよく当たるよねぇ。」
何故か呆れたような表情のまま、犬のたけしと床に寝転がり始めた。

かれこれ

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小説『引越物語』⑩山がないから流れない

小説『引越物語』⑩山がないから流れない

人と話していると、同じ匂いがするというか、同じ川から来たのかもなと感じる瞬間がある。

それは40歳を越えてから訪れるようになった「生」への感覚。

心身の不調こそ天の恵だ。

今できることをせよと身体がキェーッッと軋みながら教えてくれる。

わたしは家族という檻から逸出しようと、二年間ただひたすらに憧れの本の海で泳ぎ続けた。

わたしの小さな冒険にはルールがある。

故郷の川から海へ出たら、

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ゴルゴンゾーラは装備できません

ゴルゴンゾーラは装備できません

虹猫学園高校ラクロス部のマネージャー、ミヤノクルミは図書館である本を手に取り、気になるところに目を走らせていた。

持つ、という言葉に意識が及んだ。フィンランド人留学生へルミの言葉を思い出す。

所有の概念そのものが日本人と違うのかなあ。

それにしても【黄色いユニコーン】って何だろう? そういう料理のメニュー名?
主人公のお兄さん、亡くなったみたいだけど、何があったんだろう?

それにこの『ゴル

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詩:春が出血し、カサブタができている

詩:春が出血し、カサブタができている

春が出血し、カサブタができている

とあなたは言う

その表現があまりにチセツだったから鼻で笑う

ことしもサクラが咲いたのだ

キレイダネ

わたしは感情を込めずに発声する

私はそうは思わない

あなたは、ただそう言う

わたしは何も答えずクウソウする

サクラが血を流し、ヒトビトがうれしそうに群がるのを

,,,,,,,,,,,,,,,,

街の交差点で

信号を待っている たくさんの花をみ

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小説:普通日記

小説:普通日記

 先日の日記を転記しておくことにします。

 新宿東口のご存じ、シアターバゲットにて、映画『アボカドの決意』を観覧してきました。
 天気予報では、夕方からチゴイネルワイゼンになるとのことなので、僕はミジンコに変身するのと同じ要領で、ブルドッグになれるよう調整しておきました。
 朝食はもちろん春巻きです。遅刻しないように中身だけを食べました。しかしながら、モナド論的には御法度らしいのです。何せ窓がな

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不思議なことは1つだけ

不思議なことは1つだけ

言うまでもないけど、小説はフィクションです。実際にあった話ではありません。
フィクションを大きく分けると、現実世界の法則に則ったものか、SFやファンタジーのように現実世界にはないものを扱うかに分類できると思います。

僕の過去作品のうち、半分ぐらいはSFやファンタジー要素が含まれています。
僕は現実か非現実の作品を交互に書くようにしています。現実世界の物語を書いたら、次は非現実の物語を書くことが多

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【SS】パの活用 〜剛の将来〜

【SS】パの活用 〜剛の将来〜

「剛、トイレのドア、また開きっパじゃん!」
蝶芽子は大きな声で剛を睨む。

「ごめん、次から気をつけるよ」
剛はそそくさと台所に移動する。

 剛の後をつける蝶芽子はまた大声を出した。
「お茶の容器、また出しっパじゃん!
 ちゃんと冷蔵庫に戻しておいてよね」

「ごめん、悩みごとをしてて、気が付かなかったわ」と剛は項垂れる。

「また、何か悩んでるの?」

「うん、決して日和ってる訳じゃないんだ。

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人生変革計画

人生変革計画

私は今21歳の大学4年生だ。来年は就職と言いたいとこだが、1年の頃のオンライン授業で単位を全然取れなかったことが響いて、留年してしまった。留年するくらい遊んでいたかというとそうではなく、apexというps4のゲームを朝方までしては昼の2時頃に起きる生活を繰り返していたのだ。大学4年になって自分が何を成したのか振り返ってみると特になく唯一あるとすればapexのバッジくらいのものだ(笑)。リアルが充実

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【掌編】ある閉ざされたトイレの個室で

【掌編】ある閉ざされたトイレの個室で

 剛がトイレの個室に閉じこもって、もう3時間になる。
 蝶芽子はトイレのドアの前で問いかける。

「剛、今度は一体、何があったの?」

「最近、ある悩みがあって、全く前に進めないんだ。身体が一歩も前に動かない。俺はもうこのトイレの中で一生過ごすよ」

「何を言ってるの?
 悩みがあるなら言ってみなさいよ。悩みは人に話すだけで50%は解消されるわ」

 剛が重い口を開く。
「俺はこの極東の片隅で、毎

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【大喜利小説】剛と蝶芽子

【大喜利小説】剛と蝶芽子

 カランカラン♪

 活草海 剛が勢いよく喫茶店のドアを開ける。

 奥のテーブルには丘高 蝶芽子が待っていた。

「剛、久しぶり!元気にしてた?」

「ああ、俺は元気だよ。蝶芽子も元気そうで何よりだ。
 実は最近、VIOにハマっていてね」

「えっ……?」
と、真剣に直視する剛とは対照的に、蝶芽子は俯きポッと頬を赤く染める。

「いや、それが楽しいんだよ。
 この前の日曜なんか朝から夜までかかっ

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