2021.9.2 タリバンを支配したい中国の思惑
ニュースを見ていると、国内では『新型コロナ』と『パラリンピック』。
海外ニュースは、相変わらず『アフガニスタン問題』が多いです。
アメリカのアフガン撤退は、メディアでも
「失敗だ!」
と言います。
しかし、アフガン撤退はアメリカの中東撤退の一環であって、10年前から決まっていたこと。
理由は、『シェール革命』による中東の重要度が低下したことと『米中覇権戦争』が始まり、中国に戦力をシフトする必要があるからです。
そして、なぜか一般的には、
「アフガン問題、勝ち組は中国だ」
とか言われています。
なぜか?
それは、『一帯一路』の通り道ができるからです。
『一帯』は、中国と欧州を結ぶ陸路
『一路』は、中国と欧州を結ぶ海路
です。
ところが、欧州や中東と中国を結ぶ「海路」は、米軍が支配しています。
陸路を見ると、中国の西隣にあるアフガニスタンをアメリカが支配していた。
しかし、米軍が去って傀儡アフガニスタン政府が崩壊し、20年ぶりにタリバンの時代がやってきた。
だから、
「中国は勝ち組だ!」
というのです。
ですが、中国とタリバンの間には大問題があります。
そう、中国がタリバンと同じイスラム教徒のウイグル人100万人を強制収容していること。
ウイグル女性に不妊手術を強制し、事実上の民族絶滅政策をしていること。
タリバンはこれを許すでしょうか?
中国は、
「金でなんとかなる」
と考えているようです。
「三大動機」
たしかに、『お金』は非常に強力な動機づけになります。
なぜ、ユニクロの柳井氏は、
「ウイグル問題は、人権問題というよりは政治問題だ!」
と言ったのか?
それは、
「中国は、ウイグルにおけるジェノサイドを即刻やめろ!」
と言ってしまえば、中国政府に邪魔されてビジネスが難しくなります。
そうなると、「入ってくるお金」が減ります。
私は、柳井氏に対して公人のような批判はしたくありません。
社会人、特に民間人であれば、誰だって「お金の大切さ」を知っています。
では、「お金を超える動機」はあるのでしょうか?
その答えは、
・
・
・
あります。
『命』です。
銀行員も
「命の次に大切なお金を預からせてもらっています」
などと言いますね。
皆さんもご自身で想像してみてください。
誰かに誘拐されて、
「銀行預金を全部引き出して渡せば、命は助けてやる」
と確約された。
きっと、
「じゃあ、そうしましょう」
となるでしょう。
なぜか?
それは、いくらお金があってもあの世には持っていけませんし、命さえあればまた稼ごうと思えば稼げます。
命があればこそ、お金を使っていろいろなことができます。
明らかに、
命 > お金
です。
これをマクロな話に拡大すると、
『安全保障(命)』は、『経済(お金)』よりも大事ということになります。
では、「命を超える動機」は存在するのでしょうか?
ここで少し立ち止まって、答えを考えてみてください。
答えは
・
・
・
あります。
それは、『理想』です。
『理想』の形は様々ですが、「宗教」だったり「思想」だったりします。
皆さんは、『理想』のために命を捨てることができますか?
例えば、江戸時代の『踏み絵』のことを思い出してみてください。
「キリストの絵を踏めば無罪放免。キリストの絵を踏まなければ死罪。」
当時は、実際に踏むことを拒否して殺された人がたくさんいました。
彼らにとっては明らかに、
理想(=キリスト) > 命
でした。
ちなみに、宗教だけが命を超える『理想』とは限りません。
例えば、日本では馴染みが薄くなったスパイ。
旧ソ連のスパイと中国のスパイでは、全然質が違います。
旧ソ連のスパイは、
「共産主義の理想を実現するために」
という動機であることがとても多く、彼らは、「万民平等の共産世界を創るためなら死んでもいい」
と考えていた者が多くいました。
もちろん、今になれば、
「共産主義はインチキ宗教の類」
ということが分かります。
しかし、当時の彼らは理解できませんでした。
それで、
「共産主義の理想のために死んでいった人」
がたくさんいたのです。
例に出すと、日本の戦時中に首相であった近衛文麿の軍師的存在だった尾崎秀実(おざきほつみ)などが当てはまります。
では、中国のスパイはどうか?
中国人スパイに理想はありません。
中国の外国人スパイの主な動機は『お金』です。
ここまで、人を動かす三つの動機は、
『お金』『命』『理想』
順番でいえば、
理想 > 命 > お金
でした。
タリバンの動機
では、タリバンはどうなのでしょうか?
中国は、
「タリバンを買収できる」
と考えているようです。
しかし、タリバンが、“金に転ぶ”人たちであれば、彼らの行動は理解できません。
考えてみてください。
タリバンは、アメリカ傀儡アフガニスタン政府を打倒して、政権に返り咲きました。
もし彼らが、
「女性が学校で学ぶ権利、女性が仕事をする権利を与える」
と言えば?
欧米諸国は、
「タリバンは変わった。復興支援をしてやろう!」
となったでしょう。
ところが、タリバンは、
「イスラム法に沿って、女性の権利を与える」
と宣言しました。
これは要するに、
「昔と変わらない」
ということです。
つまり、彼らはあっさりと大金を逃しています。
そして、タリバンが2001年にアフガン戦争が始まってから、20年間も米軍と戦い続けてきたこと。
これは、全く理性的ではありません。
彼らが、『命』を大切に思うなら、世界最強のアメリカ軍と“死ぬまで戦う”とは考えないでしょう。
つまり、彼らは、『お金』も『命』も超越していることが分かります。
私たちには、彼らの『理想』は全然理解できません。
ですが、彼らのこれまでの行動を見ると、彼らは彼らなりの『理想』を動機として動いていることが分かります。
そうなると、彼らはどう動くのでしょうか?
中国から貰えるお金は、もちろん貰うでしょう。
ですが、タリバンは中国が行なっている
・イスラム教徒であるウイグル人100万人を強制収容していること
・ウイグル人女性に不妊手術を強制していること
・ウイグル人に対しジェノサイドを行っていること
他にもモスクの破壊や男性が髭を伸ばすことの禁止など、全てを許すとは思えません。
アフガニスタンの東の国境は、新疆ウイグル自治区とつながっています。
タリバン政権は、金を貰うために表向きは中国と仲良くするかもしれません。
しかし、別動隊を組織して、ウイグル人を解放するための戦いを始める可能性も十分にあるでしょう。
アメリカ政府にずる賢い軍師がいれば、タリバンの支配者に、
「中国は、あなた方の同胞をジェノサイドしている。もしあなた方が新疆ウイグル自治区をアフガニスタンに併合したければアメリカは邪魔しない」
などと言って煽ることでしょう。
果たして、本当に中国は、
「アフガニスタン問題の勝ち組」
だと言えるのでしょうか?
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