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アジア伝統衣装を米国ウェディング業界に持ち込んで月商2万5千ドル-海外スモールビジネスの具体例

おはようございます。スモールビジネスの人として認知されたいプロコンです。

海外から見た初詣の行列は日本から見たイスラム教の聖地巡礼のような宗教行事としてとらえられるように、ある場所での当たり前は違う場所では奇妙な風習として取り上げられることってよくありますよね。

今回紹介する事業は、チャイナドレス風ウェディングドレスをアメリカに導入した「East Meets Dress」です。

East Meets Dressは、ウェディング業界という大きな市場の中から「アジア風ドレス」というニッチな市場を見つけ出した事業です。今回はこのEast Meets Dressをケーススタディとしてスモールビジネスを学んでいきましょう。

East Meets Dressは超巨大市場の中に身を置く、ニッチなモダンファッション企業

共同創業者の一人であるVivianは、East Meets Dressをウェディング業界の中に身を置く、モダンファッション企業であると定義しているようです。

私たちは、現代的な文化的デザイン、質の高い職人技、そして献身的な顧客体験を組み合わせることで、伝統的なウェディング業界にアジア系アメリカ人の代表性と包括性をもたらす、初のモダンファッション企業です。

2020年からのコロナショックを除けば、日本でのブライダル市場は2兆円を超す大きな市場です。アメリカでは日本同様に、いや日本以上に大きい市場であるウェディング市場、コロナショック前の市場サイズは700億ドル(7兆円)を優に超えていました。

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日本のブライダル関連市場規模: 矢野経済研究所調べ

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米国のブライダル関連市場規模: IBISWorld調べ

主力商品は、チョンサム、チパオと呼ばれる中国風ウェディングドレスでドレスアクセサリー、引き出物、男性用衣装なども売上比率の30%を占めています。

完全未経験、融資0、週末起業から1年間で月商280万円に成長したEast Meets Dress

East Meets Dressは設立当初、アメリカのアジア系アメリカ人の花嫁をターゲットにしていました(今でもそれが中心的な顧客層です)。

その後、会社を経営していくうちに、世界中の花嫁(カナダ、オーストラリア、ヨーロッパなど)や、中国文化に嫁ぐ女性、さらにはプロムでチャイナドレスを着て自分たちの伝統を祝いたいと考えている高校生からも問い合わせが来るようになったようです。

起業資金は融資を一切ひかずに完全な自己資金でスタートしました。
それも、週末起業で100ドル以下の資金という、ガチのスモールスタートです。

共同設立者もVivianのどちらにもファッションや起業の経験はなく、多くの努力や苦労、試行錯誤を経て、わずか1年でチームと会社を6桁の年間経常収益(月2万5千ドル)まで成長させました。

初期資本1万円以下で、未経験の状態からせどり転売やアフィリエイトで1年後に月280万円稼ぐなんて言われたら質の悪い情報商材じゃないのか?と思うかもしれませんが、実業系のスモールビジネスならあり得る話です。

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共同創業者の原体験から事業アイデアを思いつく

VivianにはJennという共同創業者がおり、そのどちらもが日本で言うとキラキラな経歴を持った人物でした。

共同設立者のJennと私は、イェール大学の1年生のときに出会い、親友になりました。卒業後、JennはGoogleでキャリアをスタートした後、いくつかの小規模なスタートアップ企業で働き、その後、コーディングブートキャンプに参加しました。私は、教育と非営利団体でキャリアをスタートし、後にFacebookに買収されたアーリーステージのスタートアップに参加しました。この頃、Jennと私は、後にEast Meets Dressとなるコンセプトに取り組み始めました。

設立当初、私たちにはファッションやEコマース、起業の経験はありませんでした。ただ、消費者としての自分たちの経験があっただけでした。

VivianもJennもイェール大学卒業の才媛。そしてJennは新卒でGoogleに入社。オンラインスクール作ってバリに別荘が買える経歴。
ただ、二人ともファッション、ECサイト、起業の経験がない、極論を言うと私たちとさほど変わりのない経験しか持ち合わせていなかったんです。

「なんだよ…高学歴だったのかよ。そりゃ成功するわ。」と思ったあなた。それは違います。高学歴だったから成功したのではなく、行動したから成功の切符を得ただけです。
頭がいいから成功するかと言われるとまったくそんなことはなく、「良い学校に行けるくらい自分を律することができる」という能力が重要なのだと思います。

East Meets Dress(以下EMD)のアイデアは、Jennの個人的な苦悩から生まれました。Jennは結婚式の披露宴で両親と伝統を称えるためにチョンサムを着たいと思っていましたが、彼女の美的感覚に合うモダンなデザインを見つけることができなかったのです。

当時の彼女の選択肢は、怪しげなオンラインサイトか、サービスが悪く品揃えも少ないチャイナタウンの店に限られていました。結局、Jennは地元のテーラーでチョンサムを作ることに。

オーナーアテンダント(付添人)だったVivianはそのJennの状況を見て、アジア系アメリカ人の花嫁が、質の低い選択肢に縛られたり、質の高いチャイナドレスを一から作ってくれる仕立て屋をYelpで探しまわったりする必要はないと感じ、EMDのアイデアを思い付いたのです。

のちに、Vivianは起業当初の以下のように語っています。

最初に始めたとき、私たちはファッションやeコマース、起業の経験はありませんでした。私たちは、消費者としての自分たちの経験と、Jennの結婚式のプロセスを経験しただけでした。また、アジア系アメリカ人の花嫁でこの問題に悩んでいる人がどれくらいいるのか、どこに行けば見つけられるのかもわからない状態でした。そこで私たちは、小さな規模で始めて、自分たちのアイデアをすぐに試してみることにしました。

金曜日の夜、Unbounceで無料のランディングページを作成し、ターゲット層に興味を持ってくれる人がいるかどうかを確かめるために、50ドルのFB広告を出しました。週末には、実際の製品が掲載されていないシンプルなランディングページから、40人以上の興味を持った人が登録してくれたので、これは実際に市場があるかもしれないと最初に確信しました。私たちは、受け取ったメールすべてに個人的に連絡を取り、彼らが求めているものをよりよく理解するために、電話で話したり、いくつかの質問に答えたりしないかと尋ね始めました。その結果、次の週末には簡単なShopifyのウェブサイトを立ち上げ、最初のドレスデザインだけをサイトに掲載することができたのです。

ニッチ市場が本当に存在するのか?データではなく自分たちで素早くデータを集める

以前の記事「二日酔い対策の商品を作って月商2000万円」でもそうでしたが、スモールビジネスを成功させる人は、自分自身の仮説を素早く検証することの重要性を知っているのでしょう。

「んがー、このデザインとこのデザインどっちが良いのかわからん!」→1週間経過
「んがー、どの市場で戦っていこうか悩む!」→1か月経過
「んがー、どうやって商品作るか分からん!」→諦め
みたいなことが無いのです。

とりあえずFB広告出してレスポンスから仮置きするか!みたいな感じで素早く低リスクで検証する術を知っています。

これは私自身凄く意識していることで、例えばニッチ市場を攻めようと思った時にその商品が受け入れられるかどうかは、商品を作る前に分かります。
高額のプロトタイプ費用をかけずに、LPを作り少額のFacebook広告を出せば良いのです。

あなたが、あなた自身のために集めた仮説検証データ(YOD:Your Own Data)こそが値千金の情報になります。このあなた自身のための仮説検証データの重要性については今後もずっと伝え続けていきます。

良いYODの集め方さえ知っていて実践できれば、スモールビジネスは成功したと言っても過言ではないです。それほどまでに重要です。

スモールビジネスだからと言ってリスクが小さいわけではない

偶に勘違いをしている方がいるのですが、スモールビジネスは結果がスモールなわけでも必要資金がスモールなわけでもありません。
スタートアップと比較すると、収益の成長性が安定しているビジネスというだけです。

初期資金が0円でできるスモールビジネスもあればウン千万円必要なスモールビジネスもあります。
営業利益が1000万円までしか行かないスモールビジネスもあれば、100億円を超えるスモールビジネスもあります。

もちろん、今ここにない市場を創るようなスタートアップと比較すると、既に成功したビジネスモデルを踏襲するスモールビジネスは失敗する確率といったリスクは小さいでしょう。
ただ、資金や時間などのリスクも小さくしようと考えるなら正しい知識を身に付けておくことが重要です。

そのため、このスモールビジネスの教科書では”リスクを最小限に抑え、ビジネスを立ち上げ、収入を増やすための情報”を提供することを心がけています。そして、このYODの集め方はリスクを最小限に抑えるという点で最高の基盤となります。

最初の製品はJennが自分のためにデザインしたチャイナドレス

最初の商品はEMDの起業のきっかけにもなったJenn自身がデザインした結婚式用のチャイナドレスでした。
のちに振り返って「たった1つのドレスデザインで立ち上げることはお勧めできません」と語っているVivianでしたが、同時に「製品の市場適合性を実現するために迅速に行動したかったと考えました。」とも述べています。

ドレス作りについて知識の無かった二人は、アパートの向かいにある美術工芸品店に行っては、さまざまな生地を触ってその名前を覚えました。また、地元の仕立て屋さんと提携して、チョンサンの作り方やドレスの各パーツの組み合わせ方などを学んでいきます。

当初、製造業とのつながりは限られていましたが、不安な気持ちを抑えて、知り合いにファッション業界とのつながりがないか聞いて少しずつ人脈を広げていきます。JennもVivianもあまり外向的ではありませんでしたが、学生のような気持ちで新しい関係を築いていくことで、多くの人がヒントや推薦をしてくれることを知ったようです。

例えば、友人が中国でシルクの製造をしている遠い従兄弟を紹介してくれ、その従兄弟から2人の兄弟が経営するドレスメーカーを紹介してもらい、それ以来、彼らと一緒に仕事をするようになりました。彼らとは、私たちがデザインしたドレスを見せながら、一緒に生地を選ぶことができました。その後、仕入先を増やし、何十年にもわたってチョンサムを専門に作ってきた方々にお願いしています。

ネットで完結しない事業を避けている人に知っておいて欲しいこと

このあたりの事も知っておいて欲しいのですが、「リアルな人間関係はめちゃくちゃ大事」です。
ネットだけで完結する事業を選びたがるのは、楽して金を稼ぎたいと思っている人に良くある傾向(私もそう)です。この傾向自体が悪いとは思いませんが、起業未経験者の場合は選択肢が狭まるのでおすすめしません。

当たり前の論理ですが、ネットで完結する事業+リアルも使う事業の数はネットで完結する事業より多いです。小学生でも分かります。「人と一秒も話したくない!」などよっぽど対人関係が苦手な人以外はリアルも使う事業を選択肢に入れたほうがいいです。

私自身、ネットで完結する事業の方が好きですが、toB向けの成果報酬型コンサルティング事業の最初は良く行く店舗で軽くアドバイスをしたのが始まりでした。いくら対等な関係とはいえ、クライアント様というのはお金を払ってくれる関係者でもあるので多少気を使います。ただ、人間生きていればクライアント様に限らず、他人を気遣う必要は出てきます。ネットであれ、リアルであれ相手への気遣いは必要なので「対人関係」という点でリアルの事業を避けているのであればその思考は変えたほうがいいです

ショップの立ち上げ期は、オーダーメイド生産で在庫リスクをとらずスタート

ショップは、実店舗なしのECサイトのみでの販売なのでほとんど費用がかかりません。また、オーダーメイドで作成することにより、在庫リスク・廃棄費用などを避けた経営ができたようです。

また、契約書などもRocketLawyerというサービスを使用して100ドルほど費用を抑え税金についてもググって調べたとのこと。

このように、スモールビジネスにおいて初期リスクを大きくとらず、そして素早くスタートすることが重要です。

過剰梱包の罠を避けて、効率性を追求

起業当初は、梱包が1着あたり30分以上かかる、非効率かつ拡張性のないやり方を採用していました。

洒落たステンシルデザインを包装紙に描き、アジアのお菓子やシール、メッセージを添えて、リボンをかけていました。絵の具が乾くのに時間がかかりますし、手書きのメモを書くのにも時間がかかります。今でも梱包はすべて自分たちで行っていますが、その後、カスタムプリントされたティッシュペーパーとコンポスト可能なメーラーを使うように進化し、梱包にかかる時間は1着あたり数分にまで短縮されましたが、小さなグッズやステッカーはご褒美として残しています。

起業当初、お客様に喜んでもらおうと細かいところに気を向ける方が多いのですがビジネスとしてやっている以上、ある程度の効率性・拡張性は必要になってきます。
お客様への提供価値の本質部分を妥協するのは良くありません。ただし、本質部分以外にこだわってしまうがあまり、対応時間が減って本来喜んでもらえたお客様を減らすことになっては本末店頭です。
このあたりの塩梅は、その都度見つけていく必要がありますが一番大事なことは”お客様への提供価値の本質を見失わないこと”です。

これは梱包だけじゃなく、配送についてもいえることです。

配送に関しては、毎週前もって集荷の予約をするか、地元のUSPSに預けるようにしています。Shopifyでは、オンラインで簡単に配送ラベルを割引価格で印刷することができますし、家にはRolloのプリンターラベルがあるので、これが大活躍しています。また、USPS、DHL、UPSなど、すべての配送業者と仲良くなっています。

私たちにとって、シンプルなアイデアから最初のドレスデザインを作り、そのプロセスを終始一貫して実現するまでには、一歩一歩の積み重ねが必要でした。しかし、私たちは、小さく始めて、一度に一人のお客様を助けることができると信じていました。

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あなたがもし、リスクを小さく大きい成功がしたいと考えているなら、すぐに成功の結果が得られることはやめましょう。
雪だるまを大きくしていくように、だんだんと成功を大きくしていく必要があります。

最初から大きな成功を求めてしまうと、質の悪い情報商材屋や詐欺師などのカモになるだけです。あなたの人生は一度しかないのに、高いリスクをとって成功確率の低いことをやるべきではありません。そんなものは成功した後に投資家になってから他人の人生を掛け金にやればいいのです。

「成功した後に投資家になったら他人の人生を掛け金にできるってどういうこと?」って思った方は以前書いた「お金持ちになりたいならIPOよりもスモールビジネスオーナーを目指すべき理由」をご覧ください。

自分たち自身がカメラマンでモデル、ひっそりと始まったEDM、だがそれがイイ。

EDMの販売までのプロモーションは決して派手なものではありませんでした。
プレスリリースやインフルエンサーマーケティングはなく、本当にひっそりと発売を開始したのです。

ホームページに載せる最初のドレスの着用写真を近所の公園で撮影する。
モデルは共同創業者のJenn、カメラマンはVivianが担当した。カメラもiPhone Xで、決してすべてがそろっているとは言えません。
でもそれが良いんです!

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花の慶次より

ECサイトはshopifyで立ち上げ、在庫も実店舗もないためかかった費用は100ドル以下。仮説検証からこれまで一貫してスモールスタートを貫いています。

起業する。チャイナドレスを販売する。自分の製品を作る。ファッションブランドを立ち上げる。

このようにとらえると何か凄く大変なもの、立派なものをやっているように感じるかもしれませんが、それは勘違いです。変に気負ってお金を費やす必要はありません。
自分と同じように困ってる人がいれば喜んでもらえるかもしれない。読み終わった本をメルカリで売ろう。そのくらいの感覚でいいんです。

メルカリで靴を売るときに、モデルを用意して、ロケハンして、カメラマンを用意して完璧な宣材写真を作る必要が無いように「必要な人が欲しくなる最小限のこと」をすればいいのです。

最初のshopifyサイト(ここから有料)

ここからは、マガジンの購読者限定になっていきますが、有料部分では

・発売初期のshopifyのサイトはどのようなものだったのか?
・発売直後にとった集客方法
・初受注までの期間、2人目の受注までの期間、10人目の受注までの期間
・発売後、集客や顧客維持につながった施策はなにか?
・粗利益率、製造コスト以外で大部分を占めているコストは何か?
・月間平均訪問者数やこれまでの累計取引顧客数、販売チャネルについて
・事業を始めてから学んだ重要なこと、アド(優位性)になること
・利用しているツール・プラットフォーム
・これから起業する人に伝えたいこと

について話していこうと思う。

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