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極私的分析/Al Jarreau『Breakin’ Away』

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(画像引用:Amazon.co.jp

来年2021年でリリースから丸40年を迎える名盤『Breakin’ Away』の発売日記念、一端のドラム経験者こと主宰が字数の都合上2つの観点から紐解いてまいります。2つとはすなわち参加メンバーである2名のドラマーにスポットを当てるということに他なりません。Steve GaddそしてJeff Porcaro。ドラマーなら誰もが憧れるまさに音楽界の至宝です。

表題曲を除くすべての楽曲を手掛けるのがSteve Gadd。アッパーからミディアム、そしてアルバムを鮮やかに締め括るハチロクバラードまで。もうこの1枚に彼の音楽人生が詰まっていると言っても過言ではありません。リズムの宝庫。実用的フレーズの応酬。そもそもグルーヴとは何か。まさしくドラマーの教科書です。

大変心苦しいですが字数の問題で「Easy」のみを取り上げます。ズバリ「一発録り」。1番Aメロで見せるクローズドハイハットのフレーズが、2番以降はオープンハイハットに変わっているという点に着目することで明らかになります。マイクチェックを兼ねた仮テイクとして録音されたファーストタッチが、思いのほか曲のニュアンスにマッチしていたか。

あるいはバジェット的要因。スタジオミュージシャンあるあるですが、曲単位ではなくテイク数単位でギャランティを計上するという場面は度々見受けられるところ。前述の通り1曲を除きすべての楽曲を氏が担当していますから、スピード感を持ってレコーディングが行われた可能性は非常に高い。結果、有意に働いた。まさに必殺仕事人。

卑近な例で言えば、Buddy Richトリビュートアルバムでのレコーディングは映像としても記録が残されています。氏の貴重な姿を垣間見ることができる。OKテイクの録音中にも、モニターのツマミを神経質にいじる様子。しきりに譜面に目をやる様子から、おそらくこれもワンテイクなのだろうなという予感がある。今作にも通ずるイズムと言えそうです。

視点を変えればSteve Gaddの牙城を崩しアルバム中たった1曲、表題曲の切符を勝ち取ったのがJeff Porcaro。しかも彼の代名詞、シャッフルビートを見せつけた傑作テイク。この点に関しては主宰目線、2通りの推理があります。つまり①あらかじめ複数名のドラマーをブッキングしており、実際にはSteve Gadd版のテイクも残されていた説。

②この曲のみ意図的にJeff Porcaroを起用した説、主宰は後者寄りの立場です。Steve Gaddのシャッフルビートが劣るとは到底思えませんがしかし「Jeff Porcaroといえばシャッフルビート」といった全幅の信頼感も確かにないではない。前年のSteely DanGaucho』での名演の勢いそのままに見事主役の座を射止めた、という推理は些か妄想が過ぎるでしょうか。

例えばこのアルバムと同時期にリリースされた山下達郎For You』では、いわゆるA面が海外勢、B面が国内勢のメンバーで構成されたある種のオムニバス形式を採用している。このアルバムも2名のドラマーが参加している点ではオムニバスとも言えそうですが、しかし比率はあまりに偏っている。それでいて絶妙なバランス。1曲とはいえ圧倒的存在感。

残念ながら結びの段落とあいなりました。分析と呼ぶにはあまりにも浅瀬の議論に終始しました。ドラムだけでなく、それぞれの楽器単位を切り口にしても一朝一夕では済まされない音の世界が広がっているアルバムです。プロデューサーJay Graydonの功績も非常に大きいところ。正直まだまだ語り尽くせていません。この続きは来年、40周年の記念日に。


2020年6月30日

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