- 運営しているクリエイター
記事一覧
【小説】 深淵に咲く花の名は [第壱話]
第壱話 : 三種の蕾「ぐすん…ぐすん…どうして…どうしてみんな…」
──夕暮れ時の大宮。
路地裏で一人の少女が泣いていた。
「ひっく…ひっく…寂しいよぅ…怖いよぅ…」
頭に小さな角の生えた少女が、膝を抱えて震えながら泣いていた。
突然、少女の上に二つの影が重なる。少女は驚いて顔を上げる。
──そこには獣人の少女と左目を抑えた少女が立っていた。
「…どうしたの?あなたのお名前は?」
獣人
【小説】 深淵に咲く花の名は [第弐話]
前回のお話はこちら
第弐話 : 深淵に落ちた恋の種
鳥居をくぐった瞬間、世界が一変した。
サクラ、カエデ、ツバキの三人を取り囲むのは、まるで別世界のような光景だった。
深淵の迷宮「初心者の竹林」。青々とした竹が頭上高く伸び、遠くで鈴の音が響いていた。
「これが...迷宮...?」
サクラの声が、緊張で少し裏返る。
カエデの耳がピクリと動く。
「なんだか...生きてる感じがする…」
「警
【小説】 深淵に咲く花の名は [第参話]
前回のお話はこちら
第参話 : 花開く神籤「ぎゃあああああっ!」
大宮の貧民街、夜明け前。サクラの悲鳴が静寂を破った。
「な!なに!?サクラ!どうしたの!?」
カエデが飛び起きる。
「どうした!?いかなる災厄が!」
ツバキも慌てて立ち上がる。
二人が駆けつけると、そこには右足を抱えながらのたうち回るサクラの姿があった。
「いたい!いたい!いたいよぉおおおおお」
「何があったの?」
カエデ
【小説】 深淵に咲く花の名は [第四話]
前回のお話はこちら
第四話:芽吹き始める花深淵の迷宮、壱界「初心者の竹林」。
青々とした竹が生い茂る中、サクラが突然立ち止まった。
「よし、この辺で良いかな。神籤の怪力全開ー!えっさっ!ほいさっ!」
サクラはキョロキョロしたかと思うと、おもむろに地面を掘り始めた。
「サクラ?何してるの?砂遊びかな?懐かしい!私もやるー!えっさっ!ほいさっ!砂遊びなんて久しぶりだねーwww」
カエデは嬉しそ
【小説】 深淵に咲く花の名は [第五話]
前回のお話はこちら
第五話:蕾の試練月日は流れ、あの河童王との激闘から一週間が経過した。
深淵の迷宮、壱界「初心者の竹林」は、今や『百花繚乱』の活躍の舞台と化している。
今日も河童たちの悲鳴と、三人の少女たちの元気な声が響いていた。
「かぱぁッ!?」
「まーた落とし穴に引っかかりやがったぜー?げはははー!」
「「頼むから女の子らしく笑おう!?」」
「ちぇりゃあああああ!」
「かっぱっぱー!
【小説】 深淵に咲く花の名は [第六話]
前回のお話はこちら
第六話:蕾たち、深みへ『百花繚乱』の三人が 弐界「妖怪の奇岩谷」に足を踏み入れてから、すでに数時間が経過していた。
周囲には奇怪な形をした岩々が立ち並び、時折不気味な風が吹き抜けていく。
その風は、まるで誰かのため息のようにも聞こえた。
カエデが不安そうに尋ねる。
「ね、ねえ...私たち、迷子になってない?」
サクラは強がりながらも、少し焦りの色を見せていた。
「だ、大
【小説】 深淵に咲く花の名は [第七話]
前回のお話はこちら
第七話 : 希望という名の種川の対岸には百々目鬼がウロウロしている。
「よ、よし!」
カエデは震える手で石を握りしめると、深呼吸をして集中する。
そして、渾身の力で石を投げた。
「えいっ!」
コツン!
石は見事に百々目鬼の顔面に命中した。
「ぐ?ぐおおおおっ!」
百々目鬼がカエデの姿を捉えると、凄い勢いで川を渡ってくる。
「ひぃいいいいい!」
カエデが全力で逃げ出
【小説】 深淵に咲く花の名は [第八話]
前回までのお話
第八話:深淵で芽吹く深淵の迷宮、三十界。
サクラ、カエデ、ツバキの三人が落ちてきてから、既に数日が経過していた。
50個あったサクラの目潰しの数もかなり減っていた。
…
薄暗い洞窟の中、三人は疲れた様子で休んでいた。
『ぐぅー...きゅるるる...』
カエデのお腹から大きな音が鳴る。
「うぅ...」
ツバキが心配そうに尋ねる。
「カエデ、大丈夫か?」
カエデは弱々しく答