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本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲編

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多作であるハイドンの曲を一日一曲ずつ聴いていきましょう。
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2024年5月の記事一覧

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第66番 ありきたり (Sinfonia No.66, 1779)

交響曲第66番・交響曲第67番・交響曲第68番の3曲は、1779年にフンメル社から「作品15」として出版されました。そこで、作曲はそれより前の時期と考えられています。この第66番は、「ありきたりでインスピレーションがほとんどないものとして説明されることがあります」(ドイツ語版Wikipedia)などと言われています😅 交響曲第66番変ロ長調(Sinfonia No.66 B Dur, Hob.I:66) 第1楽章 Allegro con brio 1拍目のアタックと忙しめの

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第65番 風変わり (Sinfonia No.65, 1768)

交響曲第65番は、自筆譜がないのでしょう、1778年の楽譜出版社の目録に登場するのですが、1771~1773年ころの作曲、1772年~1774年ころの作曲など諸説ありますが、「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」時代のもので1768年ころの作曲だと思われます(ドイツ語版Wikipedia)。 交響曲第65番イ長調(Sinfonia No.65 A Dur, Hob.I:65) 第1楽章 Vivace e con spirit 3つのトゥッティで始まるイ長調の楽章です

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第64番 時の移ろい (Sinfonia No.64 "Tempora mutantur", 1773)

交響曲第64番は自筆譜は残っていませんが、残されているパート譜の紙の研究から1773年ころの作曲だと考えられているそうです。1773年というと、ハイドンさんの「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」時代ですね。 また、愛称の「時の移ろい」は、ハイドンさん自身がつけたもので、1960年代に発見された楽譜に「Tempora mutantur, et.」と記載されたラベルが貼ってあったそうです。 この「時の移ろい」(Tempora mutantur)とは、16世紀後半から

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第63番 ラ・ロクスラーヌ (Sinfonia No.63 "La Roxelane", 1777)

交響曲第63番の第1楽章は歌劇「月の世界」(Hob.XXVIII : 7)の序曲から転用されています。クラウディオ・アバド(Claudio Abbado)さん指揮ヨーロッパ室内管弦楽団(Chamber Orchestra of Europe)の演奏です。 また、第2楽章はこの交響曲の愛称「ラ・ロクスラーヌ」の由来となった楽章だと言われています。「ラ・ロクスラーヌ」とは、16世紀のオスマン帝国スレイマン1世の皇后ロクセラーナことヒュッレム・ハセキ・スルタンのことです。 そし

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第62番 パスティッチョ (Sinfonia No.62, 1780)

ハイドンさんの交響曲第62番は、1780年12月のハイドンさんの手紙に「2つの交響曲」と書かれていて、それがこの第62番と第74番のことだそうで、1780年の作品だと分かるそうです。 第1楽章は、1777年作曲のニ長調序曲(Hob.Ia:7)の転用ということです。これはもともと交響曲第53番「帝国」の第4楽章に用いられていたらしいのですが、差替えられたために、こちらの第62番に転用になったということです。そのような経緯もあり、この交響曲は「パスティッチョ」と呼ばれることがあ

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第61番 タランテラ (Sinfonia No.61, 1776)

交響曲第61番は自筆譜が残され、1776年の作曲であることが分かるそうです。このころは、ハイドンさんのエステルハーザ劇場音楽監督時代ですが、このころの曲は、明るく楽しいものが多い気がします。それこそ、オペラの音楽です、と言われても納得できます。 交響曲第61番ニ長調(Sinfonia No.61 D Dur, Hob.I:61) 第1楽章 Vivace 冒頭のハンマーアタック1発が印象的であり、その後も何度かアタックがあります。颯爽とした楽章です。 第2楽章 Adagio

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第60番「うすのろ」 (Sinfonia No.60 "Il distratto", 1774)

交響曲第69番は、ハイドンさんがエステルハーザ劇場の音楽監督をしていた時代である1774年ころの作曲のもので、日本語での愛称が、「うかつ者」「迂闊者」「愚か者」「うつけ者」「迂闊な男」「うっかり者」「ぼんやり者」「うすのろ」などいろいろあります。 日本語版ウィキペディアによると「本作は、フランスの劇作家ジャン=フランソワ・ルニャールが1697年に書いた喜劇『ぼんやり者』(Le Distrait)をドイツ語に翻案した『うかつ者』(Der Zerstreute, 全5幕)のため

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第59番 火事 (Sinfonia No.59 "Feuer", 1968)

交響曲第59番は、自筆譜がなく、筆写譜の記載などから1968年ころの作曲だと考えられています。ハイドンさんの「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」時代の曲ですが、軽めの交響曲だとされています。 「火事」という愛称についても、ハイドンさん自身がつけたものではなく、その由来については「火事」という劇音楽やエステルハーザ劇場の火事との関連性が言われてきましたが、時期的に符合しないそうです。また、曲調が燃えるようだから、という由来も言われてきましたが、これについても、それほ

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第58番 バリトン (Sinfonia No.58, 1767)

交響曲第58番は自筆譜が残っておらず、この曲の第3楽章が「バリトン三重奏曲第52番」と同じで、この第52番が次の1767年に作曲されたバリトン三重奏曲の第53番(Hob.XI:53)と同じ頃の作曲だろうからこの交響曲第58番も同じ頃の作曲だろうと考えられているそうです。ハイドンさんの「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」時代の曲になります。 ところで、このバリトンとは、声楽の「バリトン(Bariton、テノールとバスの中間)」ではなくて、昔の弦楽器のバリトン(Bar

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第57番 雌鳥と雄鶏 (Sinfonia No.57, 1774)

交響曲第57番も残された自筆譜から1774年の作品であることが分かるそうです。第4楽章にバロック時代の作曲家アレッサンドロ・ポリエッティ(Alessandro Poglietti)さんが作曲した「騒いでいる雌鳥と雄鶏のカンツォーナとカプリッチョ(Canzona and Capriccio on the Racket of Hen and Rooster)」のメロディーが使われているとのことです。 イーゴリ・キプニス(Igor Kipnis)さんのチェンバロ演奏で、ポリエッテ

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第56番 パリ (Sinfonia No.56, 1774)

交響曲第56番も自筆譜が残っており、そこから1774年の作曲だということがわかるそうです。この曲はパリで人気があったそうで、後のパリ交響曲(第82番~第87番)作曲の布石になりました。 交響曲第56番ハ長調(Sinfonia No.56 C Dur, Hob.I:56) 第1楽章 Allegro di molto これまでのハイドンさんの祝祭的なハ長調交響曲の第1楽章とは異なり、アレグロながら落ち着きを感じさせる楽章です。 第2楽章 Adagio こちらも落ち着いた味わいの

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第55番 校長先生 (Sinfonia No.55 "Der Schulmeister", 1774)

交響曲第55番も残された自筆譜から1774年の作曲であることが分かっているそうです。「校長先生」という愛称も、ハイドンさん自身がつけたわけではなく、第2楽章の折り目正しいリズムから、その名前がついたと言われています。この愛称のおかげで、第55番が有名なったとも言われています。 後世の変ホ長調の交響曲というと、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」が有名ですが、あちらは英雄、こちらは校長先生で、たまたまですがハイドンさんらしい気がします。ちなみに、他の変ホ長調の交響曲には、モー

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第54番 ト長調 (Sinfonia No.54, 1774)

交響曲第54番から第57番までは自筆譜が残されていて、1774年の作曲であることがわかるそうです。これらはハイドンさんのエステルハーザ劇場時代の曲ですが、第54番は、第3版まで版を重ね、第3版ではフルート、トランペット、ティンパニが加えられてロンドン交響曲(第93番~第104番)以前では最大規模な編成になっているようです。曲の内容も、ベートーヴェンの登場を予感させる立派なものになっています。 また、第54番の調性はト長調ですが、ハイドンさんは、ト長調の交響曲を得意にしており

本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第53番 帝国 (Sinfonia No.53 "L'impériale", 1779)

ハイドンさんの「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)」時代の次は、オペラやマリオネットの劇場であったエステルハーザ劇場の音楽監督の時代になります。この時代の交響曲は、オペラチックな傾向が強くなります。本日ご紹介する第53番「帝国」も例のごとく、自筆譜が存在しませんが、この劇場時代に作曲されたものと考えられています。 ところで、これまで「自筆譜がない」という話がたびたび出てきていますが、それは1779年にこのエステルハーザ劇場が火事で燃えてしまい、楽譜も一緒に燃えてしま