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コングロマリット企業が今後買収したいサービスとは?子会社32社から考察

調査対象企業

リクルートホールディングス・DMMグループ・SBIホールディングス・VOYAGE GROUP・GMOインターネットグループの5社が調査対象。各社ドメインは異なるものの、1サービスをグロースさせ、そのキャッシュを元に複数ドメインに展開をしてきた点では同じと考え分類しています。

基本情報

2016年の売上・営業利益は以下の通り。リクルートの売上は2兆円に届きそうで改めて比較して大きいですね。文字が小さくて見えにくいかもしれませんが、リクルートは設立が1963年、その他企業が1991年~1999年なので、売上規模の差は当たり前かもしれません。1999年2月から2000年11月までの景気拡張期、通称「ITバブル」時代に立ち上がり、ITバブル崩壊を逃れた企業は、売上からみても、各業界を牽引する存在になっているのもわかります。

※DMMグループは、非上場企業のためHPに記載のあった売上のみ

子会社化件数

2013年~2017年で各社が子会社化した件数は以下の通り。5社の合計は32件で、企業規模と比較して、件数もある程度比例しています。


企業別調査

1.リクルートホールディングス

皆さんご存知だと思いますが、リクルートは、買収の記憶も新しいindeedがセグメントとして入る「HRテクノロジー」リクナビ、suumo等の販促メディアを中心とする「メディア&ソリューション」「人材派遣」の3つを事業体として持っています。

子会社化の企業を見てみるとリクルートが日本国内でシェアNo1を獲得しているサービスを海外メインで子会社化していることが分かります。また2016年に世界一の人材系企業を目指すと公表、2020年に人材領域(人材メディア事業、人材派遣事業)グローバルNo.1を目指していることから、人材派遣サービスの子会社化が目立ちます。

上記、2017年3月期 通期決算説明会からの抜粋です。リクルートの場合社内の新規事業立案の仕組みも整っていることから、国内スタートアップを買収をするとはあまり思えませんが、今リクルートが抑えられていない業界のBtoBoCサービス(例えば、塾・医療・小売)、また金融サービスでかつ、リクルートが持つサービスとの親和性が高いサービスの場合可能性はあるでしょう。

個人的には、Edtech・Retech・HRtechが業界としては、可能性が高いのではないかと踏んでいます。

2.DMMグループ

DMMグループは現在、様々な領域にサービスを展開しています。

DMMグループは周知の通りアダルトビデオ通販、動画配信サイトが最初です。アダルト業界ということもあり、現在上場はしていません。ただしアダルト業界では圧倒的No1の地位を築いており、利益率は相当高いと思われます。

よって、今後もアダルトサービスで稼いだキャッシュを、新規事業への投資に回していくと思われます。

サービス数に対して、子会社化の数は少なく感じます。ただし注目していただきたいのは、件数が2017年に集中しているということです。今までは、稼いだキャッシュを社内の新規事業に回し、サービスを増やしていたと思われます。ただし2016年にピクシブの片桐孝憲氏がDMMの社長に就任し、サービス展開の考え方が変わったと考えられます。

[参考] http://toyokeizai.net/articles/-/148194

子会社化するジャンルもまちまちなので、この領域・このサービスと決めにくい部分はありますが、片桐氏が気にいるという点では、コミュニティを形成するようなサービスがいいのではないでしょうか。

また次のアダルト業界を牽引するために、VR。企業としてクリーンなイメージを付けるため、教育・エネルギー・環境などは引き続き伸ばしていくのではないかと考察出来ます。

3.SBIホールディングス

SBIホールディングスは、金融サービス事業、投資/資産運用などを行うアセットマネジメント事業、医薬品/健康食品といったバイオ関連事業を3つの柱としています。

今までも、金融系のサービスをメインに買収を行っているようです。2015年~2016年において、連結子会社となっている投資先企業のEXIT等によって、「選択と集中」を進めていた甲斐もあり、金融サービス事業において、2017年には新設から2年以内の子会社を除く全ての子会社・事業部門が黒字化がされたと発表されていました。

今後3年間の基本戦略は以下の4点に集約されています。

(1)金融サービス事業においてはFinTech 1.0から技術革新を起こすFinTech 1.5~2.0時代へのパラダイムシフトを実現
(2)SBIグループ自らがFinTech技術によって変身し、地方経済の
柱の1つである地域金融機関にそれを伝搬することで、『地方
創生』に向けた変革の大きな渦を巻き起こす
(3)バイオ関連事業は、医薬品分野のライセンスアウトの推進や
健康食品分野での新商品の発売により収益の極大化と、主要
各社の新規株式公開を目指すことで事業として自立した体制
を構築
(4)子会社の新規株式公開等により、潜在的な企業価値の顕在化
を推進し、時価総額の拡大と株主還元の一層の充実を図る

(1)、(2)の成長戦略を達成するために、AI、ビッグデータ、IoT、ロボティクス等々新技術導入を進めており、投資先FinTechベンチャー企業はますます増えていくと考えられます。

4.VOYAGE GROUP

1.アドプラットホーム事業

広告主様向けにプロモーションの最適化をはかるDSP(デマンドサイドプラットフォーム)、媒体社様向けに広告配信の最適化をはかるSSP(サプライサイドプラットフォーム)やアドエクスチェンジ、スマートフォンに特化したアドネットワークを提供

2.ポイントメディア事業

「ECナビ」「PeX」「リサーチパネル」と3つのポイントメディアを運営

3.インキュベーション事業

大きく3つの事業セグメントを持っており、インキュベーション事業は第三の柱として投資を積極的に行っていくとしています。

子会社化は、かなり少なく、今まで資本参加という立場が多かったようです。
2014年以降スマートフォン分野への投資を行っていたことから、スマートフォンと親和性の高い動画コンテンツを配信するサービスの子会社化が見られます。

方針としては、大規模なM&Aを当面は控え、自社内での事業拡大、事業開発を重視していき、主要事業での営業利益の20%を目安に、第3の柱となるインキュベーション事業へ積極的に先行投資を進めていくとのことです。

強化領域としても、「HR領域」「EC領域」「Fintech領域」としており、メディア事業と親和性の高い「EC領域」「Fintech領域」は特に投資が集まると思われます。

5.GMOインターネットグループ

インターネットインフラ事業が好調。全インフラ商材で「ナンバーワン」を獲得しています。その他、インターネット金融事業、インターネット広告・メディア事業、モバイルエンターテイメント事業は、好調とは言えないようです。今後の改善が急務となっています。

子会社化は、各領域に1,2サービス程度。資本参加の件数はなく、積極的な動きは見られません。

今後、各事業において、シナジーを効かせながらシェアを拡大させることに注力します。ただし直近の戦略としては、業績が芳しくないこともあってか、「強いところはより強く」をキーワードに、「.shop」ドメインの海外展開強化、金融・決済領域の資本業務提携強化、日本でのNo.1インフラ商材を海外に水平展開を進めています。

今後の事業領域の拡大を視野に、FY17より改称があるという内容が、直近の決算説明会で共有されました。4つのセグメントを全てインターネット金融事業に集約。このことからFintech領域の事業展開・投資を強めていくと考えられます。

今後買収したいサービスは?

DMMグループは少し異なるかもしれませんが、各社複数業界で事業を展開していることから、それらサービスをまとめ上げ、シナジーを生み出すことが今後の成長を左右すると考えられます。よって、以下2つの方向で買収が加速すると考えられます。

a.事業シナジーを加速させるFintech領域

そもそも現状、業態として金融領域を抑えていることもありますが、各社Fintech領域への投資を進めると宣言しています。

リクルートホールディングスでは、BtoBtoCサービスであることから、クラアント向けのローン・融資サービス、ユーザー向けの決済サービスが展開されていくと予想されます。

SBIホールディングスは、ブロックチェーン技術・ビットコイン等金融のあり方を根本的に変える可能性がある分野への投資が積極的になると思われます。

VOYAGE GROUPは、ポイントサービスを展開していることから、現在運営しているような、デジタルギフトやビットコインといった貨幣・モノのデジダル化を進めるようです。またアジアへの展開もしており、ソーシャルレンディングサービスも強化していくと思われます。

GMOインターネットグループは、証券FXが強いことから、SBIホールディングスと同様、ネット銀行・決済といった金融サービス全体に展開していくことが考えられます。

b.AI・ビックデータといった最新テクノロジー領域

事業シナジーを生み出すためにも、「最適化」はキーワードになりそうです。複数ドメインで獲得したデータをどう分析、統合、新しいサービスに活かしていくかは今後注目する必要があると思います。

今回取り上げた5社は、比較的テクノロジードリブンの企業によるバイアウトが狙いやすい企業ではないでしょうか。今後の5社の買収動向に要注目です!







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