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魔法の闇鍋『空飛ぶ箒』
「あそこの箒を売ってください」
日頃の睡眠不足のせいで、気付けばカウンターに突っ伏すようにして気絶していた。暖炉の熱気にやられたのか、唇がひどく乾いている。それでも呼吸することだけは忘れずに、開いた口から涎がとろりと垂れているのだから、我ながら大したものだ。のろのろと自分のそんな惨状を自覚して、わたしは慌しく顔を上げた。
片付けるべき問題はたくさんあった。たくさんありすぎて、どこから手を付ける
『あなたを読む物語』のあとがき
「続編を書きましょう」
担当編集である河北さんから、そう言われたのはいつだったろう。
『小説の神様』を刊行してしばらく、僕の本にしては思いのほか好調で重版を重ねることができたものだから、それは編集者からすれば当然の流れだったのかもしれない。
しかし、僕は渋っていた。確かに、そもそも講談社タイガはレーベルの立ち上がり当初は、全点シリーズモノの刊行を謳っていたと思うのだけれど、『小説の神様』に関
好きな人のいない教室
だって、わたしたちは、たまたま同じ年に、たまたま近くで生まれただけに過ぎない。たったそれだけの理由で一緒くたにされて、教室という狭い空間に閉じ込められてしまう。自分に嘘をついてまで、そんな繋がりを大事にする理由なんて、ほんとうは、どこにもないんだ。
恋をしたことのない、それ故に、教室から浮いてしまう、女の子のお話です。
世の中は恋のお話で満ち溢れているけれど、僕たちのリアルな青春には、そ
ねぇ、卵の殻が付いている
「あたし、大きくなんないよ。絶対、途中で死んじゃうよ」
「それでも、今は生きているじゃないの。なっちゃんは気付いていないかもしれないけれど、今もじゅうぶん、大きくなっているんだよ」
二人の少女の、保健室登校のお話、です。
子どもの頃、自分は絶対に大人にならない、と思っていました。
たぶん、大人になる途中で、死んでしまうだろうなぁって、漠然と考えていました。だから、大きくなることはない