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ねぇ、卵の殻が付いている

「あたし、大きくなんないよ。絶対、途中で死んじゃうよ」

「それでも、今は生きているじゃないの。なっちゃんは気付いていないかもしれないけれど、今もじゅうぶん、大きくなっているんだよ」


 二人の少女の、保健室登校のお話、です。

 子どもの頃、自分は絶対に大人にならない、と思っていました。

 たぶん、大人になる途中で、死んでしまうだろうなぁって、漠然と考えていました。だから、大きくなることはないんだって思い込んでいたけれど、きっと、そんなふうに浅はかな考えをしていた最中にも、自分という存在は、どんどん大きくなっていたのでしょう。

 このお話は、当時、そろそろミステリ書きたくないなぁ、他のお仕事したいなぁ、とツイートしたのを見てくれた小説すばるのイケメン担当さんが、青春小説を書きませんか、と声を掛けてくれたのをきっかけに生まれました。

 そのときは、まだ『青春小説を書こう』という大きなくくりでしかなかったのですが、丁度その頃、それとはべつにドイツに住んでいるお友達(紫色のくまさん、と僕は呼んでいる)から三題噺のお題をもらっていたので、それらが合致してテーマを決めたのです。紫色のくまさんがくれたお題は、『卵』『保健室』『百合』でした。百合……。いや、百合のつもりはあんまりなかったのだけれど、女の子二人の友情のお話にしよう、というのは決めました。そして、その友情に罅が入るところから生まれるお話がいいな、と思ったのは、きっと『卵』からの連想でしょう。あとは、舞台を『保健室』にして……と、わりと自然とお話ができあがりました。

 お話はすぐできましたが、イケメン担当さんは文章や物語のコダワリが、これまでご一緒した他のどの担当さんよりもすごくて、何度も何度も文章を直しました。これまで、原稿を直させられた経験があまりなかった自分はちょっと戸惑いつつも、イケメン担当さんの指示はすごく的確で、結果的にすごくよい作品に仕上がったと思っています。イケメンの言うことは聞いておけば間違いないです。


 挿絵を担当して下さったゆうこさんの世界観がとても素晴らしく、小説すばるに掲載された彼女のイラストを見て、今後の方向性がすべて決まりました。

 自分は、中学生のころ、理由もなく学校に行かなかった期間があります。

 いじめられているわけでもない。病気があるわけでもない。なにか特別な原因があるわけではないのに、学校では息苦しくなってしまう。

 その生きづらさを感じている子どもたちのお話を、書いていこうと思ったのでした。

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