魔法の闇鍋『空飛ぶ箒』
「あそこの箒を売ってください」
日頃の睡眠不足のせいで、気付けばカウンターに突っ伏すようにして気絶していた。暖炉の熱気にやられたのか、唇がひどく乾いている。それでも呼吸することだけは忘れずに、開いた口から涎がとろりと垂れているのだから、我ながら大したものだ。のろのろと自分のそんな惨状を自覚して、わたしは慌しく顔を上げた。
片付けるべき問題はたくさんあった。たくさんありすぎて、どこから手を付けるべきか咄嗟に判断できない。まず、ハンカチを引っ張り出して、ほっぺたにこびり付いて