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好きな人のいない教室

 だって、わたしたちは、たまたま同じ年に、たまたま近くで生まれただけに過ぎない。たったそれだけの理由で一緒くたにされて、教室という狭い空間に閉じ込められてしまう。自分に嘘をついてまで、そんな繋がりを大事にする理由なんて、ほんとうは、どこにもないんだ。


 恋をしたことのない、それ故に、教室から浮いてしまう、女の子のお話です。

 世の中は恋のお話で満ち溢れているけれど、僕たちのリアルな青春には、そんなものなんてなかったのだ。

 小説すばるが、恋愛小説特集ということもあり、恋愛を題材にお話を書きました。けれど、前述の通り、このシリーズは学校で生きづらさを感じる子たちのお話にしようと決めていたので、方向性もタイトルも自然とこうなりました。担当さんからお題を聞かされたとき、「このシリーズの方向性で恋愛小説とか無理に決まってるじゃろー!!」と呻いたのを憶えています。「相沢さんならできますっ!!」とイケメン担当さんが後押ししてくれました。

 けれどなぁ、恋愛なんて、リア充専用の嗜好品なんですよ。カースト最下位の人々にとって、恋愛は贅沢品であるばかりか、恋愛をする資格なんてなかったように思えます。恋をしたくてもできない。したところで、馬鹿にされ、嘲笑われる。だから恋愛なんて羨ましいともなんとも思わない……。

 漫画を読んでも、小説を読んでも、ドラマを観ても、そこは、すばらしい青春や、切ない恋愛のお話で溢れています。

 けれど、僕たちの青春にはそんなものはなかった。あるのは歪で、苦しくて、じめじめとした世界と、そしてひねくれていた自分だけです。そんな生き方をしていた自分の青春は、おかしいものだったのだろうか? マイノリティな世界だったんだろうか? 好きなひとのできなかった自分って、おかしいのかな?

 そうじゃない、と僕は思います。

 君が感じている苦しさを、同じように感じている子は、きっと、君が思っているよりも、ずっとずっと、いっぱいいるんだよ。


 生きづらい子を描くといテーマと相反している点があるように思えて、プロットを作るのがいちばん難航したお話でした。作家のお友達である赤い林檎の人に相談したりもしたんですけれど、彼女から返ってきた言葉は斜め上すぎて珍しく役に立たなかったな……(笑)。

 とにかく、恋の話であっても、恋をさせないで描こうと決めました。

 作中に出てくる絵は、なんとなく、挿絵を描いて下さったゆうこさんの過去の作品群を見て想起した部分があります。感情に訴えてくるすばらしい絵を描かれる方だと思います。

 この頃から、ゆうこさんの挿絵を見て、これは『しょんぼり女子シリーズ』と名付けよう、と思ったのでした。


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