心中宵庚申[現代語版]4・近松門左衛門原作
4.
半兵衛は頭の中で直接半鐘を鳴らされたかの如くの衝撃を受けた。寝耳に水とはこのことである。自身はただ浜松へ実父の弔いに向かっていただけであった。むろん、養母が千代を快く思っていないことは知っていた。だからといって息子が遠出をしているうちに息子の妻を追い出すとは。門火を焚く木片のように胸が燻って燃えてしまう。それは養母への怒りよりも、自身がそれを止めることのできなかった無力感と悔しさの炭火だった。この家に辿り着いてからの千代の様子や家族たちの違和感に全て合点がいった。千代