大序【絵本】仮名手本忠臣蔵
鎌倉に足利尊氏の弟の足利直義による鶴岡八幡宮の造営を記念して、足利直義と高師直が来ていました。
ご馳走の役人は桃井若狭之助、塩谷判官です。
さて、足利尊氏が新田義貞を討ち滅ぼしたことから、新田義貞が使っていた後醍醐天皇から賜った兜を鶴岡八幡宮に納めようということなのですが、なにせ戦場から持ち帰った兜、どれがどれか分かりません。
そのようなわけで、もともと新田義貞のもとで働いていた塩谷判官の妻の顔世御前が呼び出されたのでした。
女好きの師直は鼻の下を伸ばして顔世御前を見ています。
さて、新田義貞は自身の兜に「蘭奢待」という大変貴重なお香を焚き染めて戦にいっていました。
その蘭奢待の香りを顔世御前が選別しようというわけです。
47ある兜の数々から顔世御前はひとつを選び出し、これで間違いありませんと差し出しました。
こうして兜を鶴岡八幡宮におさめ、皆は解散となりました。
帰路につこうとした顔世御前を呼び止めた人物がいました。
師直です。
師直は、顔世御前が塩谷判官の妻だと知りながら、和歌になぞらえた恋文、つまり恋歌を顔世御前に渡したのでした。
顔世御前が困っているところへ現れたのが、桃井若狭之助でした。
若狭之助は「おやめなされ」と師直を止めました。
師直にとって若狭之助は位は高いが若輩者という微妙な立ち位置。
ネチネチと若狭之助に嫌味を言い、若狭之助は怒りを募らせたのでした。
〈二段目へ続く〉