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人も食も“熟成発酵”してより良い未来へ

こんにちは!SAKE Spring フード担当さっこです!

シリーズ 「発酵」の魅力を"伝える"人々②

知れば知るほど奥が深い「発酵」の世界。
発酵の道を極め、ワークショップや講座を開催するなど"発酵の伝道師"としてご自身で活動を始められた方にスポットを当てます。
第二回は京都で発酵ブームをじわじわと熟成させている「発酵食堂カモシカ」さんをご紹介します!

発酵食堂カモシカ

2014年、京都・嵯峨嵐山に設立。一軒家が並ぶ住宅街に食堂をオープンしました。
「命は命で元気になる。」を理念に掲げ、発酵調味料の販売や発酵食品を使用したお料理の提供、ワークショップなどの発酵関連のイベントを開催し、発酵食を身近に感じてもらい、日常に取り入れてもらう為の活動をされている食堂です。

“カモシカ”とは?
<醸し家>という造語から誕生。(醸す=「発酵させる」)
お店の名前・コンセプトを考えていた時にこの言葉が降りてきたそう。
理念でもある「命は命で元気になる。」は、発酵に欠かせない“微生物”の働きによって、私たち人間が元気になる。そして人間が手を添えることで“微生物”が元気に発酵をしていく。という意味が込められています。

発酵食の入口として

発酵食堂カモシカの発酵調味料は、普段の食生活にプラスして使いやすく、気軽に購入できるのが魅力的。
京都産の納豆と生麹を発酵させた「麹納豆」はご飯のお供にするだけでなく、トーストやサラダに乗せたり、マルチに活用できる調味料として人気を集めています。

カモシカの麹納豆
お徳用 1,400円
ごはんやトーストにかけても◎!

発酵食を身近に感じてもらう入口として『発酵食堂カモシカ』があります。
食堂店内に足を踏み入れると、取材時はコチュジャンの仕込みをしていたようで、にんにくの香ばしい香りが漂い、食欲をそそられました!

入って正面の『醸し棚』と呼ばれている棚には仕込み中の発酵食品がびっしりと並び、
微生物が活き活きと命を紡いでいるように感じます。

食堂では発酵食品を使用した定食を楽しむことも!

発酵8種定食 1,400円(税込)

ご近所の方から、発酵マニアの方まで様々な方が訪れ、一つ一つ手をかけて仕込まれたお料理やスイーツが人気を集めています。
食堂に訪れた人が発酵食を仕込むワークショップ等に参加し、家庭で発酵食を取り入れるようになってほしいという思いから、発酵初心者の方も楽しみやすいメニューを提供しています。
定食だけでなく、日本酒と発酵食品を使用したおつまみのセットも揃い、お酒好きの方も楽しめる場所となっています。
(日本酒が大好きな代表の関さんご夫妻が選ばれた日本酒は変わりものが揃い、こだわりがみられます!)

本質を求めて“発酵”の道へ

代表の関 恵さん。和やかな雰囲気の中に強い芯を感じるまっすぐな瞳が印象的でした。
前職では医療系のコンサルティングを行っていたとのこと。発酵食を伝えるようになった現在の道へと至るまでの思いを伺いました。

「発酵食堂カモシカ」代表 関恵さん

ーどうして発酵の道に進もうと思ったのでしょうか?

二つの出来事がきっかけでした。
一つ目は『出産』です。
愛知県岡崎市にある自然分娩で出産ができる『吉村医院』という病院で子どもを産みました。
そこでの生活は、薪割りや散歩をしたり、発酵食品などの自然な食事をいただいたりと、古くから日本人が行ってきた生活を送りながら出産の準備をするという施設でした。
その中で発酵食品を自らの手で仕込んでいただく、という暮らしを体験し、台所で作ったものが身体を作ると実感しました。
それまでアトピーにも悩み、身体にいい食事には興味はありましたが、ここでの『発酵食』の出会いが自分の中で大きな変化となり、家庭でも発酵食品を取り入れるようになりました。

二つ目は『東日本大震災(2011年)』です。
当時は千葉県に住んでいましたが、震災後すぐに家族で実家のある京都へ移動しました。
全てが白紙になった時に「本質的なテーマで自分が本当にやりたいことをやろう。」と考えるように。
そこで『発酵』を伝えていきたい、命をつなぐ発酵食を台所に取り戻してもらえる活動をしようと決心し、2014年「発酵食堂カモシカ」を設立しました。

ー当初から発酵食の伝え方(ワークショップやカフェ等)は決まっていたのですか?

『発酵』を軸に事業をすることは決まっていましたが、最初はクラフトビールやお漬物などを手作り市で販売するなどの方法を考えていました。
しかし本業として伝えていくのであれば、お店を構えてリアルに伝えていく方が広がりも生まれるのではないかと思い「発酵食堂カモシカ」としてスタートしました。
手づくりの発酵文化を受け継ぎ、広めていきたいという思いがあったので、「発酵食を台所に取り戻す♪」というコンセプトは最初から決まっていました。
あくまでも食堂は入口で、来た方に美味しいなと感じていただき、お家でも作ってみたいと思った方に作り方を教えるサポートをするために『食堂』にしました。出口は『台所』にしたいです。
発酵食手づくりキットを使ったり、発酵ワークショップに参加してもらい、もっと自分で発酵食品を来年も作りたい、誰かにあげたい、と思ってもらえることがゴールですね。

ー最近は「発酵ブーム」になりつつありますが、創業された当時(2014年)はあまり発酵文化は広まっていなかったと思います。どのように広がったのでしょうか?

たしかにそうですね。私たちの周りでは発酵に着目する人が多かったですが、お店を開いてみるとそこまで広まっていないことを感じました。
それでも、SNSを中心に発酵食品の情報発信を毎日行い、イベントやメディア取材に応えているうちに少しずつ全国からお客さんか来てくださるようになりました。

ー京都・嵯峨嵐山に設立を決めた理由は何でしょうか?

最初は、ビジネスをしようと思って移り住んだのではなく、当時1才と5才の子どもにとって住みやすい場所を京都で探していました。
自然がたくさんあり、学区としての環境も良さそうで、地域のコミュニティに安心感があり、ワークライフバランスを考えた時、子どもが「カモシカに帰って来ることができる」場所で仕事場を構えたいと思い、ここで物件を探しました。
また嵐山は海外の観光客も多く、ゆくゆくは海外の方にも日本の発酵食を知ってもらえたらと考えました。コミュニティ意識が強い地域でありながら海外の人も訪れるグローバルさもある。「*グローカル」な場所に惹かれました。

*グローカル=(global:地球規模の)+(local:地域的な)を組み合わせた造語。地域性を考慮しながら、地球規模の視点で考え、行動すること。

工事前の食堂

ー子育てとお店の営業を両立しながら取り組むお母さんの背中を見て育ったお子さん。小さな頃から発酵の手仕事を一緒にやっていたのですか?

そうですね。子どもが小さい時はお店の休憩ルームで寝ていたり、親の仕事を間近に感じていたと思います。
家庭では一緒に味噌を仕込んだりしていました。

味噌を仕込むお子さん


ーご家庭ではどのように発酵食を取り入れていますか?

いつも食卓には試作段階の発酵食を含めていろいろ並びます。
味噌や梅干しはたくさん仕込んでおり、実践しながら事業に取り組んでいます。
私自身も手作りをすることで励まされてきました。作っておいしいだけでなく、手間をかけて仕込み、待つ。それがおいしくできた時は自信にも繋がり、友人や両親にプレゼントしたりできるので励みになりますね。家庭で仕込んでいると、ぶくぶくと音を立てて発酵していくものもあり微生物の生命を感じられて元気になります。

“熟成発酵”する関係性

ー毎月ワークショップを開催されていますが、いつも大切にしていることはありますか?

参加した後も困ったことがあったらお電話やメールで疑問解消をして、暮らしにしっかりと根付いていくサポートを心がけています。
例えば「ぬか床クリニック」という取組を数年前に始めました。
初心者の方からぬか床はハードルが高いし、はじめたけれど手間がかかり失敗しやすいという声を多く聞きました。
そこで様子が心配になった方に店舗もしくはオンラインで検診を受けてもらい、診察するという制度を考えました。危険な状態であれば店舗で入院させ、回復のケアを行っていきます。
身近に相談できる場所があれば、発酵食にも取り組みやすくなると思います。そうやって徐々にお客さんの台所に根付いていったらいいなと。
お客さんは、これから発酵食文化を一緒に継承し進化させていく『同志』だと思っています。
お客さん同士でもコミュニティが生まれ、今後のワークショップにも参加してくれるような熟成した関係性を築いていきたいです。

発酵カフェ2階の「発酵マルシェ」ではオリジナルの発酵食品の販売とぬか床クリニックが併設され、創業時から発酵させている味噌などもあり、博物館のような発見が溢れる空間でした!

ー製品づくりの軸となるものは何ですか?

「命は命で元気になる」という言葉が軸になっています。
例えば『生味噌玉』という商品は、微生物の発酵を止めないよう、過度な火入れをせずに味噌を丸めています。
普通は乾燥させたフリーズドライのものなど、火入れをし、発酵を止めたものが流通していますが、発酵を「止める」ことは微生物の命を「犠牲」にしていることになるので、出来る限り行わないようにしています。
製品づくりにおいては、どの商品が売れるのか分からずブレそうになった時もありましたが、この言葉を思い出し、必ず軸に帰ってきます。
ずっと大切にしたい想いを言語化しておくことで、言葉も熟成発酵していて、時を経てより自分達の心にも入ってきて、いい味を出してくれます。

カモシカの生味噌玉:350円(税込)

ー最近では京都市内のさまざまな所で商品を見かけますね!発酵食品は台所で着実に根付いていると感じますか?

ありがたいことに関西を中心に一部は東京・東北まで、さまざまな所でお取り扱いいただいております。
たくさんの場所でカモシカの商品が広まることを目指していますが、ワークショップを通じて商品の良さを実際に知っていただき、店舗様との関係性も“熟成発酵”させて築いていきたいですね。
一緒にタッグを組んでお客様に向き合い、本当にいいと思った商品を置いていただけることが嬉しいです。

ー徐々に海外のお客様も増えてきているかと思いますが、発酵食への関心は強いですか?

中国・台湾の方は日本の発酵文化に関心が高く、日本の文化遺産にもなっている和食を家庭でも取り入れられるように教えてほしいという声がありワークショップを開催しました。
基本的なご飯の炊き方やお漬物、味噌汁など、日本の伝統食を伝えると、一つ一つに感動してくれ、東アジアの発酵ネットワークは強くなっていくと実感しました。
来年からは台湾の方が一緒に働いてくれることになり、日本以外にも文化が広がっていくことが嬉しいですね。創業時に描いていた未来が“熟成発酵”してきました!

ー発酵食を伝えていく中で嬉しいことは何ですか?

ワークショップに参加してくださったお客さんが、「味噌を仕込みました!」「ぬか床はこんな感じで大丈夫かな?」とお店に来てくれることです。
私たちが行っていることに共感し、一緒に発酵食を作る“仲間”になっている時、お客さんの『台所』が見えた時に喜びを感じます。

ーさいごに、来年の5月に10周年を迎えられるとのことですが、今後の目標はありますか?

「*プロシューマー」という世界観が広まってほしいと思います。
情報過多でモノが溢れる現代で、自分で手づくりしたものを自分でいただくというある意味では原始的な営みが一番豊かなのではという考えです。
発酵食は手間と時間がかかりますが、みんなが造り手になることでもっとその手前の生産者に思いを馳せることができ、また目の前の食べ物を大切にできると思います。
古くから親しまれていた『発酵食』を台所に取り戻したい。みんなが気軽に作ることを楽しめるようになってほしいですね。

*プロシューマー=生産者(Producer)と消費者(Consumer)からなる造語で、生産と消費を両方行う生活者のこと。

公式キャラクター カモシカ氏

飾らない言葉でありのままの思いを伝えてくださった関さん。
食べること・作ることの大切さに改めて気づくことができ、発酵食を取り入れることは自分を大切にすることにも繋がると感じました。
身体と心は繋がっている、食べるもので自分はできている。“発酵食”があなたの1日をすこしだけ、豊かにしてくれるカモ♪

12月の「SAKE Spring 2023 大感謝祭」では“はじめての“キムチ仕込みワークショップ”で発酵食堂の店長・吉田あすかさんが簡単本格キムチの作り方を伝授してくださいます!
毎回人気のキムチ仕込みワークショップ、自家製のレシピもついており、発酵食を台所に取り入れるチャンス!ぜひご参加してみてください〜!


▼「SAKE Spring 2023 大感謝祭」公式サイト

▼「サケスプラボ “はじめての“キムチ仕込みワークショップ”」購入サイト

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『発酵食堂カモシカ』
HP:https://kamoshika.kyoto.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/kamoshika_kyoto/
↑広報担当のカモシカ氏が更新するSNSは発酵の豆知識も知ることができ、クスッとしてしまう一言に癒されます😆
ECサイト:https://store.kamoshika.kyoto.jp/

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written by さっこ

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