【毎週ショートショートnote】プールの紅トーナメント
お題:プールの紅(くれない)トーナメント
我が家には十二月三十一日限定のイベントがある。実家に帰省した家族全員で明日の新年に向けて、とある戦いをするのだ。
「おーい、紅プールは用意出来たか?」
「出来てるよ!早く賭け蟹決めて!」
「じゃあ俺はこっちのデカいやつ!」
庭に大きなタライを置き水を張る。そこに生きた蟹を入れて紅のプールを作り、各々が応援する賭け蟹を決めれば、いつからか親父が名付けた「紅トーナメント」が開催される。
鋏を巧みに使い生き残った蟹を新年を迎えてから食べ、その勝ち運にあやかるのだ。ちなみに優勝した蟹に賭けていた人には親父から一万円が支給される。昔は現金支給だったが、キャッシュレスの波に乗って数年前にLINEペイ支給になった。
「よし!行け!」
「負けるな!俺の一万が懸かってる!」
「やった勝ったー!一万円だー!」
だが今やそのイベントも勝ち運のかの字もない、単なるお年玉獲得合戦と成り果てた。蟹を掲げては「一万円!」と小躍りする姪の姿が、それをよく表している。
「せめて蟹を喜べよな」
クリスマスを過ぎてしまったので、初めて裏お題にしてみました。
ついでにこちらも年末年始の隙間時間に読んでいただければ幸いです。
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