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"狂気"を手放しで楽しめるか 「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」感想

※本記事には明確なネタバレが含まれています。ご注意ください!


MCU映画としては「スパイダーマン ノーウェイ・ホーム」から4か月ぶり。待ちに待ったドクター・ストレンジの続編、「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」が公開された。
そして、私的には久々のIMAX 3D!(おそらく3Dは「ゴジラVSコング」以来だったと思う)
予告編の印象とは180度違ったストーリーの怒涛の展開。
ホラーマシマシ、外連味溢れる、良くも悪くも監督の「サム・ライミ」節全開の映画だった。

マルチバースは誰にも止められない

この機会に、前作の「ドクター・ストレンジ」を見直したのだが、「マルチバース」という言葉がこの頃から多用されていたことに驚いた。
当初から「マルチバース構想」が練られていたと思うと、マーベルスタジオの用意周到さを恐ろしく思ってしまう。(考えすぎかもしれんけど)

「マルチバース」がフェーズ4の主題になることは「スパイダーマンNWH」でも明確だったし、ディズニープラスでのドラマシリーズ「What If…」「ロキ」でも物語の主題になっていた。
(今作の予告で、ストレンジがロボットに連行されている場面があったが、てっきり「ロキ」のタイムパトロールだと勘違いして、ドラマの面々のサプライズ登場を楽しみにしていた。予想はまんまとハズレました。)

マルチバースは本当にワクワクして楽しいが、弊害もたくさんあると思う。
多世界がつながったゆえ、色々な他作品のヒーローが参入するようになり、ファンはサプライズありきで映画を見てしまっている気がする。

今作もたくさんのサプライズがあったが、毎回毎回、映画のハードルが上がっていくのは大変じゃないだろうかと、いらぬ心配をしてしまう。
それに映画を100%楽しむなら、前作やドラマシリーズも見なければいけない。初心者の人はハードルが相当高いのではないだろうか。
キャラも大渋滞しているし、とにかく風呂敷を広げすぎだと思う。
まあ、ファンからしたらそれ最高に楽しいんだけどね。
近年のMCUは、良くも悪くもファンムービー化している気がする。

その反面DCは潔い。「THE BATMAN」も「ジョーカー」も1本の完成された映画として勝負しているのがカッコいい。

全力で楽めるジェットコースター・ムービー

今作は監督が「ホラーテイスト」になると以前から公言していた。
さすが「死霊のはらわた」の監督、ホラー要素が随所随所に感じられる。
たとえば体をポキポキしながら銅鑼から這い出てくるワンダ。
監督これ絶対「リング」見てるでしょ!笑
その他、覗かなくてもいい鏡を覗くチャベスや、どこまでも追いかけてくるワンダのシーン。
ホラーのお決まりをしっかりやってくれているのが楽しい。

と言いつつも、実は私はホラー映画が大の苦手である。
それでも目まぐるしく変わっていく展開は本当に楽しかった。

好きなアクションシーンを挙げるならキリがないが、タコ型の怪物「ガルガントス」との市街地での戦いやカーマ・タージの防衛戦、別世界のストレンジとの音符バトルは本当にドキドキした。

そして、ラストのゾンビストレンジ、ダークファンタジー感満載!
中二病を発症しそうなほど「カッケェ!!!」と心の中で唸ってしまった。

振り返ってみると、ストーリーはツッコミどころ満載な気がする。
「ワンダヴィジョン」ではあんなにワンダが思い慕っていたヴィジョンの話がほとんど出てこない。あの白ヴィジョンはどこに行ったのだろう…。
まあ、そんな細かいストーリー上の食い違いは気にならないほど、魅力的なシーンが詰め込まれた作品だっった。

理不尽な殺戮を映画として楽しめるか

本作のヴィランがワンダだったことは本当に予想外だった。
ワンダはダークホールドの魔力に囚われ、子供の幻想を追い続けるあまり、マルチバースを脅かす存在になる。
暴走するワンダは、カーマ・タージの人々やイルミナティの面々を次々と惨殺していく。
特に多世界のスーパーヒーローを次々といとも簡単に倒していくシーンは、私にとって脳裏に焼き付く、プチトラウマになった。

私は正義の味方や、罪のない人々が惨殺されていくシーンが苦手だ。
007シリーズを見る時も「このボンドガール、死んじゃうのかな…」といった不安が先行してしまう、ある意味小心者である。
MCUなら「エターナルズ 」のエイジャックやギルガメッシュが死んでしまうところも辛かった。
犠牲無くして勝利無し、とはわかっているものの、やっぱりモヤモヤしてしまう。

今回のイルミナティの残虐シーンでいうと、X-MENのチャールズが無残に死んでいく様は、本当に精神的にキツかった。
チャールズの死は「ローガン」でも扱っていたが、あっちは老衰の悲しさが漂い、終末がとても丁寧に描かれていた。
だから、なおさら今作はキツかったし、チャールズの扱いについて多少の怒りを覚えた。
まあ、別世界のチャールズであり、ファンサービスといったらそれまでなんだけど。
せめて我々の世界のチャールズが、健在でいることを切に願うのみである。(案外ジェームズ・マカヴォイ版だったりして!)

レビューサイトの今作の感想で、「ヒーローがいとも簡単に殺されていくシーンが最高!」とか書いている人がちらほらいた。
感じ方は人それぞれだろうけど、友達になれそうにない…。
でもそういうシーンも含めて、サム・ライミ節なのだろうか。
いつか私も、ああいうシーンを手放しで楽しめる時が来るのかな…。

些細な選択で現実は枝分かれする

マルチバースの理論は、真面目に科学の分野でも研究されていると聞いたことがある。
私たちが生活の中で選択を行うたびに世界が枝分かれして、何千、何億通りの世界が並行して増え続けている。

例えば不運な恋人たち。
「生まれ変わったら一緒になろうね」は"今"の自分を諦めるから虚しい。
ただ、「別の世界で一緒に過ごしているだろうね」は、今この瞬間でもきっと他世界で二人は人生を共にしている。
そのほうが、まだ今の自分も救われる気がしないだろうか。
そこに我慢できなかったのがワンダなのだろうけど…。
映画館の帰りで、ふとそんなことを考えた。

何気ない人生の選択が、人生を無限に変えていく。
だから日々の選択のひとつひとつを大事にしなければいけない。

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