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霧島はるか
2021年8月15日 23:45
こちらの作品は、清世@会いに行く画家様の企画「絵から小説」に参加しています。もう10年以上も前の話なんだけどね。私昔から色々あって、高校生の頃にはもう人とか人生に興味っていうか、愛着っていうのか、そういうのがまったくなくなってたの。生きるのが嫌で仕方なかったけど、死ぬのも嫌。そんなだから何してても中途半端で味気なくてね。ほら、手首のこの薄い傷跡。いっぱいあるでしょ?これはあの頃に自分でやっ
2021年5月10日 11:38
切りあった手首から溢れ出したのは、それまで味わったことのない優しさだった。僕は二人の傷口から溢れる優しさを見つめながら、それまで自分を取り囲んでいた張り詰めた空気が、柔らかみのあるものに変わっていくのを感じていた。それは決して僕に気を許そうとはしなかったのに、今は温かく僕を包み込んでいる。ふと彼女の顔を見ると、僕には一度も見せたことのない、とても満たされた表情をしていた。彼女はまるで、子宮の中
2022年5月15日 20:30
『罪と罰』が好きだと言った僕を、ピュアだねと彼女は笑った。ビルが崩れる三日前のことだった。子供は大人の事情に左右されると言うけれど、僕らは案外そんなこと気にしてない。そもそもあいつらのことなんて眼中にない。どうせ僕らの方が、長く生きる。僕らは、淘汰する側の人間なのだから。ミサイルを食らったビルは瞬く間に崩れてしまったけれど、その瓦礫の上では今日も子供がダンスする。正義のために勝つんじゃない。正義に