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マーケティングにおける診断メーカーの無限の可能性

世界が恋した美人時計」という本を古本で見つけ、10数年前に流行ったサービスを懐かしく思ってつい読んでしまいました。

美人時計とは、2008年から始まった手書きのボードを持った360人の若い女性が時間を知らせるインターネットサービスです。サービスの名前くらいは知っているという方も多いのではないでしょうか。

美人時計のイメージ:こちらより引用

ひねくれた考え方をしがちな私は当時から、「どうせお前ら、こういうのが好きなんだろ?」とでも言わんばかりの、女性の容姿をとにかく全面に押し出した露骨なマーケティング手法には若干のアレルギー反応を示していたのですが、とはいえ、「こういうの」が好きな人というのは実際に世の中には非常に多かったわけで、広告費も特にかけない個人発のWebサービスにもかかわらず凄まじいスピードで拡散し、事実として大成功を収めたわけです。

この本はそんな美人時計がどのようにして、どのような考え方で作られたかについて時系列順に追っていく構成で、具体的かつ分かりやすく書かれた本です。10年以上前の本ではありますが、サービス設計の考え方、ユーザーインサイトへの深い洞察などなど、ビジネスの場面で今なお通じる学ぶべきことが多く書かれている本だと思います。

本の中で、美人時計が参考にしたサービスに「脳内メーカー」があったことが触れられていました。

脳内メーカーのイメージ:こちらより引用

脳内メーカーというのも説明不要の有名なサービスでしょう。自分の名前を入力すると、頭の形をしたシルエットの頭部にいろいろな単語が表示され、自分の考えていることを表現してくれるというものです。

もちろん、プログラムがある種の乱数をもとにランダム作成している架空の脳内なわけで、とどのつまり占いの一種ではありますが、友達や恋人、芸能人などの名前を当てはめて楽しむことができるお手軽でコミュニケーションの潤滑油になりうるサービスです。

同書では脳内メーカーを口コミ要素、リピート要素という短期間で普及する要素が非常に強いものであると称賛する一方で、改善点として脳の断面図という表現が画一的で早いうちに限界が来るであろうこと脳内の要素を示す単語という情報自体の更新性が乏しく、数日で飽きられてしまうであろうことなどが指摘されていました。

こうしたポイントを押さえ、表現のバリエーションや情報の更新性は多数のモデルをとっかえひっかえすることでカバーし、またインターネットで最も頻繁に更新されている情報は「日付、天気、時間」であることを指摘し、この中でも一番更新頻度が高い「時間」にフォーカスするという、極めて緻密な計算の上に美人時計は作られたと、本の中では語られていました。

本の内容をすべて書いてしまいそうなのでそれはここまでにして、この二つのサービスの成功例から、「占い」や「美人」という要素がおそらく世間において絶対的・普遍的なニーズを持っていそうだという結論が導けそうなことは概ね異論ないことでしょう。

個人的に、「表現のバリエーション」と「情報の更新性」という、脳内メーカーの二つの弱点を克服した占いサービスが「診断メーカー」なのではないかと思っています。

運営者の用意した乱数プログラムで脳内のイメージを作る脳内メーカーに対し、診断メーカーは診断内容と結果の作成部分をユーザー参加型にすることで、「表現のバリエーション」と「情報の更新性」のどちらの面でも陳腐化することがないサービスを実現できているわけです。

診断メーカーのイメージ:こちらより引用

余談ですが、匿名質問箱「Peing」の制作者であるせせり氏のブログでも診断メーカーは「初心者の作れる最高のサービス」と絶賛されていました。

実際、私自身の肌感覚でも脳内メーカーは2022年現在ほとんど見かけませんが、診断メーカーはかなりの頻度でTwitterトレンドに載る印象があります

ソーシャルゲームの固有名詞っぽいワードが複数一気にトレンド入りしているとき、よくよく見てみると診断メーカーによって生み出された診断結果のシェアによってトレンド入りしているということが多いです。

政治的な組織的なハッシュタグツイートが毎回トレンド入りを果たしているように、Twitterのトレンド自体のハードルは意外と低いもので、組織的な政治ツイートではなくとも、SNSへの投稿ハードルが非常に低い診断メーカーの結果にユニークワードが入っていたらあっという間にトレンド入りするわけです。

マーケティングの観点で考えると、このような特性を持った診断メーカーは無限の可能性があるように思います。

すなわち、多くのユーザーが診断をしてくれそうなテーマで流行りの診断を作り、その診断結果に自分の拡散したいユニークワードをいくつか紛れ込ませておくことで、ある程度意図的にTwitterトレンドを生み出すことができてしまうポテンシャルを診断メーカーは持っているということです。

診断結果に入るユニークワードを含む記事と、記事の拡散ツイートをあらかじめ用意した上で診断メーカーをバズらせることができれば、トレンド入りしたユニークワードを検索したユーザーの画面には多数の診断結果ツイートの中に自分の拡散ツイートが混じって表示されることになるわけです。

タイミングとユニークワードの選定をうまくコントロールする必要はありますが、やり方次第では一切の費用を掛けずにかなりのページビューを集めることができる無限の可能性があります。

例えばこの例などは、休載と連載再開を繰り返すことで知られ、ことあるごとにTwitterトレンドに載る人気漫画「HUNTER×HUNTER」の人気に乗っかったタピオカ屋さんの診断メーカーです。

画像引用:こちらより引用

HUNTER×HUNTERに関心がある方が自動的に自社商品の宣伝をしてくれるという格好です。

診断自体がバズるかどうかという不確実性はあるものの、無料でできるマーケティング手法としてはかなり理論性・再現性があり手堅いのではないかと夢想していた土曜日でした。

本日は以上です。
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それではまた次回。

2022.2.26 さいとうさん


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