見出し画像

アーティストとは誰なのか?

この世界というものは常に移り変わってゆきます。これまでもそうだったし、これからもそうです。

しかし私たちは、日常の雑事に追われて、或いは日常が平々凡々とし過ぎる (と思い込んでいる) ために、世界が変化している事になかなか気づきませんが、本当は、この瞬間も移ろっていく最中なのです。
そして後になって、過ぎ去ってみてからようやく振り返って、「時代」という概念を尺度にしたりしながら、この世界が既に変わっていた、という事実を知ったりします。

アーティストと呼ばれる人たちは、その、今まさに移ろいゆく「世界」というもの、まだ定まっていないその曖昧な、常に変化の過程にある「世界」というものを、誰よりも見ている人達ではないでしょうか。
目で見ているのか、皮膚感覚なのか、ハートで見ているのか……とにかく、彼らの鋭敏で、時に激動のような、またある時は何処までも安らかな眼差しで見たこの世界──私たちには物質として計れない世界というものを、物質現象として再構築し、私たちの眼前に (或いは耳に) 表出してくれているのではないでしょうか。

では、それを見る (聞く) 私たちとは誰なのでしょう?

この世界とは、私たちの営み全て、そのものです。世界を常に移ろわせているものは、まさに私たちである、という事にほかなりません。

つまり、アーティストと呼ばれる人たちが、いつの時代にも全身全霊で見つめているものは、私たちなのです。

彼らは私たちを見、私たちは、彼らの目を通して私たちを見、そしてまた彼らは、私たちを見……。
それが未来永劫、循環しているのです。

そういったわけで、アーティストと私たちは、一心同体、運命共同体なのであって、作品とは、私たち同士の、この永遠の眼差しのあわいに誕生する、新しい私たち自身なのです。


初めの日から今もいつもそうであったように、私たちは永遠に幸福に、見つめあっているのです。
目を逸らす事など、繋いだこの手を離す事などできるはずがないのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?