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シリーズ小説の受難 💧

トップ画像は、つい先日、8月29日に訪れた馬見丘陵公園のリコリス・スプレンゲリーという花(彼岸花のなかま)です。これ、実は、私の手持ちの新作(小説)の一つに関係する、取材対象の花だったんです🌼 昨年は、自然災害の影響もあってタイミングを逃し、この一種だけとうとう取材できずに終わってしまいました。一年に一度、ほんの一週間程度しか咲かないものを取材するとなると、チャンスを逃せば 次は一年後まで待たねばならず、今年のこの時期、ようやく最後のピースが揃ったわけです、ハイ (;^_^A

こんな具合に、取材で手こずって延び延びになる小説もあれば、調べものや検証の類いに多大な時間と労力を費やす小説もあり、どこでどんな困難があるかは、作品ごと様々なのですが、今回の記事は、作品を書き上げて世に出した後で直面する思わぬ障壁についての話題です。ほぼ作家のくだらないボヤキの類いですが、シリーズものが好きな人、興味があるけど尻込みしている人、あるいはシリーズものを手掛けている人などにとっては、他人事ではない話題だと思います(^_-)-☆

私は無料公開の詩作品を別にすると、これまでに4冊の書籍を出版してきました。デビュー作はロシア人のサッカー少年二人の友情物語、クルイロ~翼~という大河小説で、元原稿では3倍近くの長さの超大作だったものを、出版社側の要求により現在の薄さ(299ページ)にまでボリュームダウンした本でした。この作品では、最大の障壁は本の長さであり、当時駆け出しの新人だった無名作家の本でも手に取ってもらえるようにと、いかに読みやすくスリム化するかが最大の課題でした。でもこの作品はすでに絶版本。何しろ12年前に出した本ですからね (^^;)

私の作品で今も出回っている本と言えば、PHASEシリーズ三部作PHASE(フェーズ)JADE~表象のかなたに~翡翠の神話(ミュートス)です。これらが、とうに刊行して販売中の今になって、私を悩ませているのです 💧 そう。今更です。

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今だから言えることですが、執筆真っ最中は、けっこう気楽な作品たちでした ♬ シリーズ第一作『PHASE』などは、読み手によっては「難解」と見なされることもあるので、読者の皆さんにはビックリされがちなのですが、実はこのPHASEシリーズ、はじめは、出版社の評価や商業上の要求を一切気にせず、初心にかえって我が道を行く元の自分らしい書き方を取り戻したい、という思いから、あえて世には出さず一部の知人友人だけに読んでもらうつもりで書いた趣味の作品だったんです!(*_*)

そんなわけで、「どんでん返しに騙された!」とか「伏線がうまい!」とかいう感想をもらいがちなミステリー小説だった割に、執筆に際しては、あれこれ狙って構成に頭を悩ましたとか、初めて自分の作品を手に取る人たちが尻込みしないよう極力短くまとめた、とかいう困難は一切なく、ひたすら楽しく書きたいように書いたのです。その後、手渡しで読んでくれた知人友人たちに「これを不世出の趣味の作品で終わらせるなんて、あまりに勿体ない!」と激しく背中を押されて、迷い迷い出版社の人に見せてみたら、思いがけずとんとん拍子に事が運んで、正式に書籍として出版するに至った、という次第です。

よく「あれこれ狙わず素直に楽しみながら書く方が、読む側も楽しめるし気に入られる」という話があるように、確かに、実際に読んでくれた人たちには好評で、お世話になっている出版社の中にも、半分ファン目線で気に入ってくれた人たちがいたほどです。

ですが、問題はその後です。端的に言うと、「シリーズものであること」自体が、障壁となってしまったのです!

私がデビュー前から是非書きたいと思っていたのは、「こんな個性豊かな人物たちを書いてみたい! きっとこの手の人物だけは、私にしか書けない!」と思えるような、クセの強~い魅力を持つ登場人物たちを中心とした続き物のストーリーでした。なので、書きたいように書いた結果、PHASEシリーズは、続けようと思えばどこまでも続けていける「彼ら彼女らの物語」と化し、これまでに同シリーズを読んだことのない人たちから見ると、「シリーズものかw もしかして、最初から読まないとダメなのか? ちょっと面倒くさそうだから手を出せないな」という印象になり、一見さんが尻込みするという事態を招いているようなのです Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン

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元はと言えば、PHASE本編☝で強烈な印象を残した登場人物たちの大大大ファン(笑)になってくれた人たちから、「この人物をもっと見たい! これだけで終わらせず是非シリーズ化してほしい!」という強い要望があったからこそ、二作目以降も本として出すことができ、結果的に三部作ということになったのに、シリーズであるがゆえに新しい読者の獲得が困難になってしまうというこの矛盾……(-_-;)

実際には、同じ登場人物たちが出てきても、物語の本筋は作品ごとに完結していて、3部作のうちどこから入門しても大丈夫なんですが、やっぱり「シリーズもの」というイメージの縛りは、大きいものなんだな、と痛感している今日この頃です、ハイ 😞

いっそシリーズ化されていると一目にはわからないよう、読み切り型の小説っぽい手放しな装いにすればいいのかもしれませんが、一つ問題があります。不世出の趣味の作品から、またもや商業出版の刊行物として出版社を通して世に送り出すことになった時点で、出版社側から、「前作を読んだことのない人たちが、読み切り型の作品としてこの一作だけでも読めるよう、前作の概要を本文中にしっかり盛り込んだ方がいい」と言われて、しぶしぶ少しずつ前作の内容がわかるような文章を差し挟んでいったのですが、「まだ足りない。もっと」「これだけでは前作における出来事が充分には伝わらない」と、何度もその部分だけを改訂させられたのです。

その結果、最終的には、シリーズ二作目『JADE~表象のかなたに~』と 三作目『翡翠の神話』の本文中で、前作・前々作のネタバレをしまくる、という破目になってしまいました 😨

確かに、前作までの概要をしっかり入れたことで、同シリーズの他の作品を読まなくても、「なんのこっちゃ? 前に一体何があって今に至ったんだ??」というストレスなく、どれか一冊だけで読み切れる仕上がりにはなりました。でも、PHASEシリーズの一番の売りは、登場人物たちの魅力です。二作目、三作目から入門した読み手が、あとから「この登場人物を見られる物語が他にもあったなんて! それは是非読んでみたい!」と思ってくれて、前の作品に戻ろうとしたとき、ミステリー小説だというのに、前もって凡その結末や謎の人物の正体、本当は誰が敵で誰が味方か、などを知っていることになってしまい、面白さが半減するのです (-_-;)

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と、まあ、そんな理由から、自分のHPなどで「本シリーズが初めての方でも問題なくご覧いただけるよう仕上げてありますが、本文中に 一作目と二作目のネタバレに当たる描写をいくらか含んでいますので、『PHASE』⇒『JADE~表象のかなたに~』⇒ 『翡翠の神話』と、一作目から順にお読みいただくのがベストです」といった注意書きを添えていたのですが、最近ふと気づいたことがあります。

相方の影響もあって、このところTVでアニメを観る機会が増えているのですが、10年以上続いている長~いシリーズ作品や、何シーズンも続いている人気シリーズを、訳も分からないまま途中から見始めても、それなりに入り込めるし、そのうち再放送で、今更という頃にやっと初回やシーズン1を見る機会があったとしても、それはそれで結構楽しめるということです。

私の場合、シリーズものでハマるのは、やっぱり登場人物たちに魅力を感じたり、愛着を覚えた結果、というのが多いです。その場合、途中から見始めることで、本来そこはミステリー要素ではないはずだった一部の登場人物たちの素性や関係性といったものが、いい意味でミステリーとなり、「そこを掘り下げて知りたい💦 こんなキャラの人が、一体全体なんで今こんなことに?」「なんか過去にひと悶着あったような微妙な距離感。この二人の間柄や馴れ初めが気になる💦」と、ますます興味が深まってきて、シーズン1の再放送を切望するようになるのです。

── で、いざ待望の再放送で、最初から順を追って見直したとき、「えっ!? 今では関係良好なあの人たちが、元はこんなにも反目し合っていたのか!?Σ(゚Д゚)」とか、「ええ!? この登場人物、かつてはこんなに尖った感じだったのか!?」とか、「まさか! 出だしはこんな登場の仕方だったのか!」等々、後から知って意外性に仰天する、という楽しみがあります。これは逆に、初回から順番に見てきた人たちには得られないサプライズで、なかなかに興奮させてくれるものです (^▽^;) そしてますます対象の人物に愛着がわき、その存在に奥行きを感じるようになる。

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そんなわけで、シリーズものであるということを理由に、「ああ、二作目あたりが僕の気に入りそうな舞台設定だと思ったのに、シリーズものの真ん中なんだw 残念……」なんて思っている人たちに、この場で改めて一言お伝えしておきます。

「心配無用です! 順路のない水族館みたいに、もう好きなところから自由に入門してください!」と。

実際、完全な続き物の三部作で、一作目や二作目が尻切れトンボで終わっているような作品とは違いますしね。続けて出てくる登場人物たちにとっては、連続性のある物語でも、小説としては一冊一冊ちゃんと完結しているので、読んで尚 不完全燃焼、ということにはなり得ないのです。

逆順に読むことで、ストーリー展開に関して多少のネタバレがあったとしても、本当のミステリーはそこからです! マトリョーシカのように何重にも内側に秘めたるものを持つ多面的な登場人物たちが、次から次へと思いがけない側面を発揮しては、作者の意図など及ばぬところで、皆々様を驚かせ、楽しく翻弄してくれることでしょう(笑) どこから読み始めるかによって、見え方や楽しみ方がそれぞれ違ってくるであろうシリーズ作品の世界を、どうぞ自由にお楽しみください (^_-)-☆

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