見出し画像

詩 『涙』

作:悠冴紀

泣いている

毎日毎日
泣いている

扉の向こう側に
すべての人間を閉め出して
一人という安全に身を置くと
私は毎日欠かさず
泣いている

涙は余計な感情を洗い流す道具
考えることにさえ疲れてしまったから
ただひたすら涙を流す

他人に何かを求めることが
どれだけバカらしいか覚ったから
独りで泣く

この人生には
邪魔なものが付着しすぎている
うっとうしい感情が多すぎる

だから 大粒の涙を搾り出して
さっさと汚物を流し出す

それでも毎日泣いている

流しても流しても尽きない汚物

私はやっぱり泣いている

他に手が無く
気力も無く
虚脱の底で泣いている

痛みを感じる余裕も無く
いちいち傷つくのも面倒で
とりあえず 泣く

同情も勘違いも
うっとうしくて
誰にも見られないように 泣く
汚物が溜まっては 泣く

麻痺した心で
どうでもよくなった命の垢を落とすため
私はまた泣く

毎日泣いて暮らしている

**********

※ 1997年~2000年頃?(20~23歳頃?)に書いた詩だったと思います。

タイトルから想像されがちな、思わず手を差し伸べてあげたくなる繊細でしんみりとした涙の詩、ではなく、本作はいかにも私らしい荒っぽくて醒め醒めとした自己完結型の泣き方を表現した可愛げのない詩です💧

当時の私は、良くも悪くも今以上に個人主義的で、誰の助けも憐れみも期待せず、さっさと振っ切るためにこそ思い切りよく涙を流し、灰汁あく抜きというかデトックスというか、ストレス発散の目的で敢えて存分に泣いていました。(← 扉を閉め切り、一人になったときだけ、の話ですが。)

そして、そうやって人知れずせいぜい泣き倒した後には、むしろすっきりした気分になって、独りで勝手に立ち直っている。そういう人間だったのです f ^_^;

ですが、そんな発散方法でさえ流し切れないほど、次から次へと厄介事が降りかかってきて、身の周りの状況が手に負えないほど怪物化してしまうことは、やはりある。この詩はちょうどそういう時期に書いたものでした。


── そう言えば、最近は久しく泣いていないなぁ。少なくとも、自分自身のために泣くことはなくなった。今はもう、身近な日常がかつてほど酷い状況にはないためか、あるいは単に、自分が乾ききってしまったためか……。

たぶん、どこかの時点で、未来を完全に諦めて放棄し、「どう足掻いたって、もうなるようにしかならん。どうでもいいや」と諦観してしまったからだろうと思いますが (^_^;) 自分のような人間には、将来なんて最初から無いに等しい幻だったのだ、と覚って受け入れたときから、不安も恐れも不遇感もなくなって、いっそせいせいしてしまった。

傍から見れば一見いきいきとして見える、その後の自由気ままでリア充な日々の実態も、腐った過去や未来を伴わない目の前の今を、余すところなく最大限に味わい尽くすことで、いつなりと清々しい気分で幕引きできるよう、「閉じていく準備」だけに専念しているがゆえ、というのが本当のところだったりします。

何やら絶望的な話に聞こえるかもしれませんが、抗うのをやめてよろいを捨てると、身の回りの色んな兆しや物事の流れが、不思議と自然に読み取れるようになってくるので、以前ほど大きな失敗や過ちを犯すことがなくなり、余計なトラブルの類いも、ある程度スルスルと回避できるようになるものです。私自身、ここ最近は、生きるのが極めて楽になりました。

多くは望まない。

屋根裏部屋に毎日長時間監禁されてボコられたり、自分の書いた作品や手持ちの本を自らの手で焼却処分させられたり、ストーカー紛いの付きまとい&破壊行為で職や住居を転々とするハメになったり、訳あり人間と知れる度、ただそこに存在するというだけで周りから迷惑がられて白眼視されたり、この世で唯一同じ地獄を見てきた証人である姉に心中を迫られたりしていない『今』があるだけで、充分です。一瞬たりとも、自分にこんなまともな日常が訪れるとは、想像もしていなかったのだから。

長くは続かないだろうとかそういうことは、考えたところでどうにもならんので、とにかく束の間の今を一瞬たりとも無駄にしないよう、味わい尽くすのみです。時代の変化で すでに失われた少し前までの一瞬一瞬に対しては、ただただ感謝。「なんと! 私にも腐っていない過去、いい思い出と呼べるものができた! ラッキー🎵😁」ってなもんです(笑)

私がここ最近このnote上に続々と記事を投稿している「記憶の風景」とか「◎◎年に出会えた景色」とかいうマガジンは、まさにそんな刹那の『今』を切り取った断片(👈前向きな就活みたいなもの)です。前も後ろも気にせず『今』に全力投球しているからこその目一杯の楽しさ、美しさ、面白さを、皆さんにも味わえてもらえると幸いです。ささやかなお裾分けですね (^_-) 🎁

注)シェア・拡散は歓迎します。ただし、この作品を一部でも引用・転載する場合は、必ず「詩『涙』悠冴紀作より」と明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります!

※ 私の詩作品をご覧いただける無料マガジンはこちら ▼ (私自身の変化・成長にともなって、作風も大きく変化してきているので、製作年代ごとに、大まかに三期に分けてまとめています。)

※ 作家 悠冴紀の公式HPはこちら▼


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?