詩 『悪 夢』

作:悠冴紀

昨日 悪夢を見た
これまで味わったこともない恐怖の味

そこには親友がいない

私には “ 今 ” しかなかったのに
親友が “ 今 ” のすべてだったのに

“ 過去 ” の亡骸
“ 未来 ” の虚無

私には “ 今 ” しかなかったのに
親友がいるから生き延びてきたのに

生きるか否か 迷っていた

そこには親友がいない

永久に相容れない大勢と
家族という名の他人に囲まれて
私は呆然と立ち尽くしている

まるで糸の切れた操り人形

生き甲斐そのものを失って
生きるか否か 迷っている

魂の唯一の拠り所を失って
生きるか死ぬか 考えている

詩をつくる意味がない
小説を書く意味がない
言葉を話す意味がない
解読者なき言語は ただの雑音

親友のいないこの世界に
生きる価値があるのかどうか・・・・・・

私は途方に暮れて
立ち尽くしている
この胸の内側で
時間はすでに止まっている

踏みしだかれた “ 過去 ”
宙ぶらりんな “ 今 ”
途切れた “ 未来 ”

自分のすべてが終わったことに気付く
私はすでに 死んでいた

── 朝の訪れ
悪夢の終わり
恐怖の余韻が生々しい

私は何とか立ち上がる
やっとのことで歩き出す

私は再び詩を始める
書きかけの小説の続きを書く

親友のいるこの世界で
生き甲斐のあるこの世界で
儚い “ 今 ” を生き延びる

悪夢と現実が重なるとき
「否」の結論を用意して
どうにか “ 今 ” を繋いでいる

* * * * * * * * *


※1997年(当時20歳)のときの作品。

まさに「To be, or not to be」の世界ですね A^_^;)

最近はインプットに割く時間の方が増えていますが、重度のアウトプット中毒(執筆中毒)だった当時の私は、よく人から「あなたは “ No writing, no life ” だね」と言われていました。でも私自身に言わせると、更にそこに “ No best-friends, no writing ” という一文が加わるのが実態でした。

かつての私は、選びに選んだ三人の親友だけを愛読者として物を書いていて、その親友たちの評価に、自分の作品価値を全面的に委ねてしまっていました。たとえ世界中のすべての人間に酷評されたとしても、その親友たちにさえ気に入ってもらえれば、自信を持っていられたのです。(← 友達びいきなどせず、決して甘くはない評価を率直にくれる友人たちだからこそ、こちらもその鑑定眼に全幅の信頼を寄せることができた。)

でも、それはすなわち、親友たちの存在が、当時の私にとって命綱であることをも意味していた。


この詩を書いたのは、ここに書いた通りの悪夢を実際に見た翌日でした。あまりに不吉なので口に出しては語らないようにしていましたが、親友の一人が棺桶に入れられる夢(← 火葬場で見送る夢)を見て、その夢の中で自分が「よし、決めた。あんたを失うなら、私もこの世におさらばだ!」と決心したところで目が覚めたのです 😥

ちなみに、 そのときの悪夢に出てきた私の『親友』は、今も元気に生きているので、ご安心ください A^_^;) ショッキングな死別体験も過去に何度か経験がありますが、私がこうして今も生きさらばえているのは、あのときの悪夢の内容が現実にはならなかったからと言えるでしょう💦  (← 実は、先日投稿した「おうち活け花」の記事の前半で、チラと話題に出した滋賀県の友人が、まさにこの作品の親友です。そう、一緒に見舞いに行こうと誘ってきたあの人です。)

この詩の『親友』とは異なる別の親友(← 三人のうち一人で、私が長きにわたって最も依存・執着していた人物)との間で、関係が壊れてドロドロの末路に至った、なんていうこともありましたが、それでも何だかんだ言って私が耐え抜けた(立ち直れた)のは、どんなになっても相手がちゃんと生きていて、今もこの世のどこかには存在しているからだと思います。もし万一相手が自死という選択をしていたら、私に今のような心穏やかな日常は訪れなかったでしょう。ある時期私に心中を迫りまくっていた姉も、私がたまりかねて置き去りにした後、そういう選択をしないでくれて本当に良かったと思います。(← 去り際に、私の乗った車を後から泣きながら追いかけてきた姿は、今も瞼の裏に焼き付いていますが💦)

注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『悪夢』悠冴紀作より」と明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります。

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