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労働基準法「労働者」とフリーランス法

厚生労働省労働基準局は「新しい時代の働き方に関する研究会」につづく有識者会議として「今後の労働基準関係法制について包括的かつ中長期的な検討を行うとともに、働き方改革関連法附則第12条に基づく労働基準法等の見直しについて、具体的な検討を行うこと」を目的とした「労働基準関係法制研究会」を新設。


偽装フリーランスと労働基準関係法制研究会

第1回「労働基準関係法制研究会」は2024年1月23日に開催され、議題は「労働基準関係法制について」だったが、そこでメンバー(構成員)からは「偽装フリーランス」とも呼ばれるフリーランス問題についても意見が述べられていた。

具体的には第2回「労働基準関係法制研究会」資料『労働基準法における「事業」及び「労働者」について』2頁で、第1回研究会における労働者性に関連するメンバー(構成員)の意見が紹介されている。

(1)新しい技術と労働者概念
石﨑構成員(石﨑由希子・横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授)は「新しい技術が出てきている中で、これまでの労働者概念をどう考えていくのかという問題がある。従来より強行法規の適用範囲の関係では、当事者意思を考慮すべきではないとされているが、その部分は大きく変わらないと思いつつ多様な働き方のニーズをどう考えるのか今後重要である。その際には、個人の希望が本心で自律的なものから生じているのか、置かれている状況でやむを得ないものなのか検討することも重要である」と第1回研究会で述べている。

(2)フリーランス法とグレーゾーン
山川構成員(山川隆一・明治大学法学部教授)は「労働者についてはフリーランス法ができたが、グレーゾーンをどうするかという問題がある。フリーランスかどうか分からないときに、公正取引委員会と厚生労働省のどちらの官庁で動くこととなるのか、判断できないときにどうするのか、明確にしたい。労働者かフリーランスかを判断できない場合に、どちらの規制も適用できないのはおかしい」と第1回研究会で発言。

(3)労働者か否かで生じる格差問題
島田構成員(島田裕子・京都大学大学院法学研究科教授)は「労働者性について、労働者か否かでかなりの格差が生じているところ。フリーランス法もできたがどのように格差に対処していくのか、同じように働いているのに保護が異なりすぎないようにしていくべき」と第1回研究会で意見した。

(3)グレーゾーンで働く人の法的保護
首藤構成員(首藤若菜・立教大学経済学部教授)は「意図的にグレーゾーンを広げようとする動きもあり、労働基準監督署が指導したところだけを直して、極めて雇用に類似している者についても雇用にならないようにしようとする実態が現場にはある。グレーゾーンで働く人の法的な保護の在り方を考える必要がある」と第1回研究会で述べている。

(4)労働者概念と判断方式の分かりやすさをどうするのか
水町構成員(水町勇一郎・東京大学社会科学研究所比較現代法部門教授)は「労働者概念の分かりやすさと判断方式の分かりやすさをどうするかについて、法の趣旨から検討し、法の効果との兼ね合いでどうするか検討が必要である。また、労働者に該当しない人の保護のあり方をどうするか。諸外国では推定方式の議論もあるが、プラットフォーム労働などの兼ね合いも踏まえて検討が必要である。また、AIやアルゴリズムと働き方の関係で、規制をどうするかも重要である」と第1回研究会で指摘している。

(5)規制が強まると請負労働にしようという動きにつながる
黒田構成員(黒田玲子・東京大学環境安全本部准教授)は「労働者性については、形態が異なっていても、実質的に同じことをやっている場合にどうするか。あまりにも規制が強まると請負労働にしようという動きにつながると思うので、そのバランスも考慮しながら考えないといけない」と第1回研究会で発言している。

労働基準法「労働者」に関する論点

資料『労働基準法における「事業」及び「労働者」について』3頁には、「労働基準法の労働者」に関する論点として考えられることして、まず「労働基準法の労働者の判断基準(昭和60年労働基準法研究会報告)をどのように考えるか」、次に「労働基準法、労働者災害補償保険法、労働安全衛生法等の『労働者』を同一に解釈する意義は何か」、そして「家事使用人について、時代の変化を踏まえて、労働基準法を適用することについてどのように考えるか」といった3点があげられている。

なお「労働基準法の労働者の判断基準(昭和60年労働基準法研究会報告)をどのように考えるか」といった論点に関する詳細な資料は『労働基準法における「事業」及び「労働者」について』27頁~に記載されている。

フリーランス法と労働基準法「労働者」

資料『労働基準法における「事業」及び「労働者」について』36頁には、「特定受託事業者と労働者の法令の適用関係」に関する資料があげられ、そこには「『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、『フリーランス法」という)における『特定受託事業者』は、業務委託の相手方である事業者であって、①個人であって、従業員を使用しない者又は②法人であって、一人の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しない者のいずれかに該当するものと定義している。 また、『業務委託』とは事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託することをいう。よって、『従業員を使用している方』や、『消費者からの委託』にはフリーランス法は適用されない」と記載されている。

また、「なお、形式的には業務委託契約を締結している者であっても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、労働基準関係法令が適用され、フリーランス法は適用されない。引き続き、労働者の定義、判断基準等について、わかりやすく周知し、適切な法の適用が徹底されるよう取り組むこととしている」と書かれている。

つまり、形式的には業務委託契約を締結している者でも、実質的に労働基準法上の「労働者」と判断される場合には、労働基準関係法令が適用され、フリーランス法は適用されないということ。

資料『労働基準法における「事業」及び「労働者」について』(PDF)

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